ラマダン明け大型連休入りもトルコリラの下落リスクに要警戒
5/27−5/31の振り返り
今週のトルコリラ・円相場(TRYJPY)は、週初17.979円で寄り付いた後、リスク回避ムードの高まりを背景に、一時17.891円まで下げ幅を広げました。しかし、同水準で下げ渋ると、その後は、@トルコのロシア製ミサイルシステムの購入延期の可能性が報じられたことや、A通貨安防衛を目的に外貨建て預金の準備率を200bp引き上げたこと、Bトルコ財務省がトルコ年金基金の拠出金の10%をトルコ株で運用すると発表したこと、Cトルコリラと逆相関性の強い原油価格が急落したこと、Dエルドアン大統領とトランプ大統領による5/29の電話会談を経て米国とトルコの関係悪化が改善に向かうとの期待感が生まれたこと等を材料に反発し、5/30には、約1ヵ月ぶり高値となる18.717円まで上昇しました。
もっとも、トランプ米大統領による対メキシコへの関税引き上げを示唆する発言を受けて世界的にリスク回避ムードが広がると一転、トルコリラ・円は週末にかけて再び反落。トルコ・第1四半期GDP(結果▲2.6%、予想▲2.5%)やトルコ・4月貿易収支(結果▲29.8億ドル、予想▲28.3億ドル)の冴えない結果も重石となる中、結局18.540円まで押し下げられての越週となっております。
尚、今週はEU報告書より「トルコ経済は大きく後退」「トルコは市場にとって悪影響となる政策をとっている」「政治圧力は司法の独立の妨げになり、これ以上の司法独立性の後退は受け入れられない」といった辛辣なコメントが報じられましたが、相場への影響は限定的なものに留まりました。
6/3−6/7の展望
トルコリラを巡っては、潜在的にくすぶるトルコリラ売り圧力(@イスタンブール市長選やり直しに伴う民主主義への不信感、Aロシアからの武器購入を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念、B外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、C高止まりするインフレ圧力、Dトルコ経済を巡る先行き不透明感、E一般特恵関税制度の対象国からトルコが除外されたことに伴う米国・トルコ間貿易の減少懸念など)を、Fトルコ中銀によるリラ買い為替介入や資本規制、Gトルコ政府による景気対策で下支えする構図が続いております。特に資本規制では、H5/15に0.1%の外貨購入税を約11年ぶりに復活させた他、I5/20には10万ドル超の外貨購入における受渡日を1日遅らせる措置、J外貨建て預金の準備率を200bp引き上げる措置など、相次いでリラ安防衛策を講じております。
ただし、こうした政府・当局による一連の通貨安防衛策は歴史的にみて長期化しづらく、一巡後は却って下落リスクを強める副作用がある点に留意が必要でしょう。市場の関心は、ファンダメンタルズ面でのトルコリラ売り圧力を、政府・当局による為替介入や資本規制で「いつまで」封じ込むことができるのかに移っており、様々な思惑から今後も神経質な値動きが続きそうです。
一方、テクニカル的に見ると、@ボリンジャー・ミッドバンド(18.152円)の45営業日ぶり上抜け、A一目均衡表基準線(18.211円)の上抜け、B一目均衡表転換線(18.293円)の上抜け、C一目均衡表基準線と転換線のゴールデンクロスに伴う三役逆転の消失など、弱気相場から強気相場への転換の兆しが見られました。もっとも、週末にかけては、C昨年8月のトルコショック時に付けた安値15.318円と昨年11月に付けた戻り高値22.132円を起点としたフィボナッチ50%押し(18.725円)や、Dボリンジャーバンド上限(18.585円)に続伸を阻まれるなど、上値の重さも確認されました。ファンダメンタルズ面での弱さが、テクニカル面での強さを打ち消した格好となっております。
以上のように、トルコリラ・円相場はテクニカル的にみると上昇リスクが意識されますが、ファンダメンタルズ面での不安要素を考慮すれば、上値余地は限られそうです。一巡後は再び下落に転じる可能性も高く、まだまだ油断はできません。特に本邦勢を中心に高金利から得られるスワップポイントを狙ったトルコリラ・円ロングが積み増されており、ロスカットに伴う急落リスク(ロングの投げ)には常に警戒が必要でしょう。6/23のイスタンブール市長選(再選挙)や、6/28-29日のG20でのエルドアン大統領とトランプ大統領の会談を前に、上値は次第に重くなると考えられます。来週はトルコがラマダン明けで大型連休入りすることもあり、動意に欠ける展開が見込まれますが、週初に予定されているトルコ・5月消費者物価指数の結果次第では、トルコリラが再び下落に転じる可能性もあり、ダウンサイドリスクを念頭においたトレードが必要となりそうです。
来週の予想レンジ TRYJPY 18.10ー18.90
トルコリラ円 日足
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