ドル円見通し 4月24日天井からの二段下げ、5月31日は前日比▼1.36円の大陰線(週報6月第1週)

4月24日高値からの下落が二段下げとなった。日足チャート上の目安となる1月31日安値108.50円を割り込んだ。

ドル円見通し 4月24日天井からの二段下げ、5月31日は前日比▼1.36円の大陰線(週報6月第1週)

4月24日天井からの二段下げ、5月31日は前日比▼1.36円の大陰線

【概況】

4月24日高値112.39円から5月13日安値109.02円へ下落して3月25日安値109.72円を割り込んだため3月5日と4月24日の両高値をダブルトップとした下落期入りの可能性が高まったとし、5月21日の戻り高値から反落し始めたために5月27日の前週レポートでは「4月24日からの下落に対する半値戻しに届かず三羽烏」となったために「5月13日深夜安値割れからはまず1月31日安値108.50円、次いで1月3日終値(下ヒゲを除いた部分)107.51円を目指す流れとみる」と書いた。
米中対立が深まる中、5月29日午前には109.12円まで下げて5月13日深夜安値109.02円に迫ったものの安値更新をいったんは回避して30日深夜には109.92円まで戻した。しかしトランプ大統領によるメキシコへの制裁関税発動宣言をきっかけに株安ドル安となり、31日は終日の下落で6月1日未明には108.26円まで下げて安値のまま終了した。

【前日比の下落幅が1円を超える大陰線の前例】

5月13日安値を割り込んだことにより4月24日高値を当面の天井とした下落が二段下げへ発展した。5月31日の日足は前日比1.36円の円高ドル安だったが、前日比で1円を超える下落は昨年12月20日(前日比1.38円の円高ドル安)以来であり、さらに遡れば2018年1月10日の前日比1.23円の円高ドル安以来の規模となる。
昨年12月20日の下落は、10月4日天井以降の三角持ち合いから転落開始して年末年始の暴落への端緒となった。2018年1月10日の下落は、2017年11月6日天井に対する戻り高値を12月12日に付けてから小レンジの持ち合いとなり、その持ち合いから転落して2018年3月26日底へと大幅下落してゆく端緒となった。これらの前例を踏まえれば、今回の大陰線もそれらと同レベルの下落規模へと発展してゆく端緒となった可能性があると考えるところだろう。

【米中対立深刻化を背景に株安と負のスパイラルによる円高】

5月5日のトランプ大統領による中国への制裁関税拡大発動宣言。5月13日には米国が中国製品すべてへ制裁関税対象を拡大し、中国側が対抗措置を表明。米国は安全保障を根拠として中国IT大手ファーウェイを米国市場から実質的に締め出す大統領令を発動した。日本やアジア諸国もファーウェイとの取引を手控え始めて影響が拡大する中、31日に中国は中国企業の権益を損ねる外国企業等を対象とした「信頼できない企業」のリストを作成する方針を示し、米国の大統領令による中国企業排斥の動きへの対抗姿勢を強めた。トランプ大統領は米中協議への楽観見通しを再三述べつつも、合意を急がないとし、中国がいつまでも関税を払い続けることはできないだろうと強硬姿勢を継続している。中国側も歩み寄りを見せていない。G20における米中首脳会談で合意するのではないかとの楽観見通しも大きく後退している。

ドル円の4月24日からの下落基調は日経平均の4月24日高値からの下落、NYダウの4月23日からの下落と同調している。
NYダウは5月13日安値を割り込み31日も大幅続落した。ここまでの下落度合いは昨年10月3日天井からの下落時にも近い印象だが、日経平均も5月14日安値を割り込んで二段下げに入っており、ドル円もそれらと同調しつつ5月31日に一段安しているため、日米株安と円高が負のスパイラルでさらに同調安してゆく可能性が懸念される。

株安により米10年債利回りが低下しているが、米中対立の深刻化に加えて米国がメキシコへの制裁関税発動を決定したことで先行き不安が増したため米連銀による利下げの可能性も再浮上していることも寄与している。米連銀は年内の利上げを断念する姿勢を示してきたが、利下げにまで踏み込む可能性はさほど高くなかった。しかし株安の深刻化により年内利下げの確率が高まり始め、それが米10年債利回り低下を加速させている印象だ。
米10年債利回りは31日に前日比0.09%低下の2.13%となり2017年9月以来の低水準となったが、3か月物TB利回り(2.3475%)を下回る逆イールド状態は6日連続となった。米10年債利回り低下は日米長期金利差の縮小として直接的なドル売り円買い材料となり、株安によるリスク回避的なクロス円の買い戻しと重なって円高を加速させやすい。

【年初安値を目指す流れ、さらに2016年暴落型への警戒も】

4月24日高値からの下落が二段下げとなった。日足チャート上の目安となる1月31日安値108.50円を割り込んだ。次の下値目安は1月3日の暴落時における日足終値=下ヒゲ部分を捨象したところの107.51円だが、107.50円を割り込んでゆくと1月3日の長大下ヒゲをつぶしにかかることとなるので1月3日安値104.82円を目指して行くことになるのだろうと思われる。
1月3日安値は2018年3月26日安値104.63円とダブル底ラインを形成しているが、このダブル底ラインを割り込む場合には週足レベルの下値目安である2016年6月24日安値99.04円まで見当たらなくなる。早々にそうした水準まで下落するとは考えないが円高材料がさらに重なり、市場心理が一段と弱気に傾斜すれば向こう1か月、2か月でそうした水準に到達する可能性もないとは言えない。

2019年1月3日の週足における長大下ヒゲを前後する状況が、2015年8月24日安値週の長大下ヒゲとその前後状況に類似しているということを指摘してきた。4月24日からの下落は2015年8月24日安値から同年11月18日へ戻した後に崩れ始めた時に近い動きとなっている。2016年に入ると半年で凡そ20円の円高ドル安が発生しているが、それは2015年8月の下ヒゲに迫り、割り込むところから発生している。今回も1月3日安値を試すところがあれば、いったんは戻しを入れると思うが、その後に底割れしてゆく場合は2016年前半の暴落型円高となる可能性も出てくると頭の片隅に入れておきたい。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)当初は108.00円、次いで107.50円を下値支持線、108.75円から109.00円までを上値抵抗帯とする。
(2)概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、29日安値を割り込んだために30日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクルの中にあると考える。今回の安値形成期は6月1日の日中から6月3日にかけての間と想定されるので、まず1日の日中、午後は安値を試しやすいとみる。また1日午後から夜へ続落の場合及び反発が鈍い場合は2日へ続落しやすい状況と考えておく。
(3)108円前後で買い戻しが見られない場合は107.50円前後への下落を想定する。107.50円前後は反発注意だが、その後の戻り抵抗は108円前後へ切り下がるとみる。
(4)108円前後からの反騰で108.50円超えの場合は108.75円から109円手前への反発を想定するが、反発後に直前高値から0.50円以上の下落となる場合は下げ再開として、その後は戻り幅の倍返しの下げへ進みやすいとみる。(了)<2日16:30執筆>

【当面の主な予定】

6/3(月)
休 場 女王誕生日 ニュージーランド
休 場 スティダー王妃誕生日 タイ
米大統領、英を国賓訪問(6月5日まで)
08:50 (日) 1-3月期 法人企業調査・全産業設備投資額 前年同期比 (前期 5.7%、予想 2.6%)
10:45 (中) 5月 財新製造業PMI (4月 50.2、予想 50.0)
10:45 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、シンガポールで講演
16:55 (独) 5月 製造業PMI改定値 (速報 44.3、予想 44.3)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI改定値 (速報 47.7、予想 44.7)
17:30 (英) 5月 製造業PMI (4月 53.1、予想 52.0)
22:45 (米) 5月 製造業PMI改定値 (速報 50.6、予想 50.6)
23:00 (米) 5月 ISM製造業景況指数 (4月 52.8、予想 53.0)
23:00 (米) 4月 建設支出 前月比 (3月 -0.9%、予想 0.3%)
25:40 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
26:25 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

6/4(火)
休 場 断食明け大祭 トルコ、インドネシア
08:50 (日) 5月 マネタリーベース 前年同月比 (4月 3.1%)
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (前期 -72億豪ドル、予想 -29億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.25%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 7.7%、予想 7.7%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数・HICP速報値 前年同月比 (4月 1.7%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数・HICPコア指数速報値 前年同月比 (4月 1.3%、予想 0.9%)
18:30 (南) 1-3月期GDP 前期比年率 (前期 1.4%、予想 -1.6%)
18:30 (南) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 1.1%、予想 0.7%)
21:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合挨拶
22:45 (米) エバンズ米シカゴ地区連銀総裁、会合挨拶
22:55 (米) パウエルFRB議長、会合挨拶
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 1.9%、予想 -0.9%)

6/5(水)
休 場 断食明け大祭 シンガポール、マレーシア、インドネシア、トルコ
中国習主席、ロシア訪問(6月7日まで)
欧州委員会、イタリア財政状況についての報告書公表
デンマーク総選挙
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前期比 (前期 0.2%、予想 0.4%)
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%、予想 1.8%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 54.5、予想 54.2)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.0、予想 55.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.5、予想 52.5)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI (4月 50.4、予想 50.6)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.9%、予想 3.1%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.0%、予想 -0.5%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 1.9%、予想 1.5%)

21:15 (米) 5月 ADP 非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 27.5万人、予想 18.3万人)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 50.9、予想 50.9)
22:45 (米) 5月 総合PMI改定値 (速報 50.9) 
22:45 (米) クラリダFRB副議長、会合挨拶
24:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 55.5、予想 55.5)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

6/6(木)
休 場 戦没者慰霊日 韓国
休 場 断食明け大祭 マレーシア、インドネシア、トルコ
トランプ米大統領、訪仏
国際金融協会(IIF)春季総会、東京(6月7日まで)

10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 49.49億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 0.6%、予想 0.0%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -6.0%、予想 -5.9%)
17:25 (日) 黒田東彦日銀総裁、講演
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、東京で講演
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 1-3月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.6%、予想 3.5%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -500億ドル、予想 -506億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万人)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.7万人、予想 166.2万人)
21:40 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

6/7(金)
休 場 端午節 中国、香港、台湾
休 場 断食明け大祭 インドネシア
メイ英首相が保守党党首辞任
金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)
08:30 (日) 4月 全世帯消費支出 前年同月比 (3月 2.1%、予想 2.7%)
12:50 (日) 黒田日銀総裁、GPFIフォーラムで挨拶
13:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、シンガポールで講演
14:00 (日) 4月 景気先行指数(CI)速報値 (3月 95.9、予想 96.0)
14:00 (日) 4月 景気一致指数(CI)速報値 (3月 99.4、予想 100.2)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.5%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.9%、予想 -0.4%)
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 227億ユーロ、予想 195億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 302億ユーロ)

21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 26.3万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 3.2%、予想 3.2%)
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 102.8億ドル、予想 130.0億ドル)

6/8(土)
G20財務相・中央銀行総裁会議開幕(福岡市、6月9日まで)

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