エマージング通貨週報 『市場のリラ売り圧力 vs 国営銀行のリラ買い介入』
トルコリラ:市場のリラ売り圧力vs国営銀行のリラ買い介入
5/6週のトルコリラ・円相場(TRYJPY)は、週を通して「大荒れ」の1週間となりました。週初18.547円で寄り付いたTRYJPY相場は、同国最大都市イスタンブールでの市長選やり直しの報を受けて下げ足を速めると、エルドアン大統領の圧力に高等選挙評議会(YSK)が屈したとの見方から民主主義への不信感が広がり、5/9には一時17.539円まで下げ幅を広げるなど、昨年9月以来、約8カ月ぶり安値を更新しました。しかし、トルコ国営銀行がトルコリラ支援を目的に10億ドル超のドル売り・トルコリラ買い介入を行ったと報じられると、トルコリラは急反発。一時18.434円まで急伸するなど、市長選やり直し後の下げ幅を帳消しにする値動きとなりました。
こうした中、市場では、足元で強まるトルコリラ売り圧力を、国営銀行を通じた為替介入でどこまで封じ込めるかに注目が集まりそうです。今週は10億ドルを超える巨額介入で何とかトルコリラの買い支えに成功しましたが、市場の次のテーマは、介入余力がどの程度あり、それがいつ頃尽きるのかに移ると見られます。@政局不透明感の高まりに加えて、Aロシア製の武器輸入やベネズエラを巡っての対米関係の悪化懸念、B外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Cトルコ中銀による利下げ観測など、トルコリラを巡っては、ファンダメンタルズ面での弱さが根強く残ります。こうした点を踏まえれば、トルコリラに対する市場の売り圧力は今後一段と強まっていくと予想されます。
テクニカル的に見ても同様で、2月以降、ボリンジャーバンドのミッドバンドを下回る水準での推移が続いている他、一目均衡表では強い売りシグナルを表す三役逆転が出現しました。更には昨年8月のトルコショック時に付けた安値15.318円と昨年11月に付けた戻り高値22.132円を起点としたフィボナッチ50%押し水準(18.725円)を明確に下抜けするなど、テクニカル的に見て、TRYJPYの下落トレンドは相当強いと整理できます。米中貿易摩擦の激化を背景にドル円が下落基調に転じたことも、TRYJPY相場を押し下げる一因として注意を払う必要がありそうです。
以上の通り、TRYJPY相場は、ファンダメンタルズ面、テクニカル面共に、下落リスクが警戒されます。但し、国営銀行を通じたリラ買い介入には引き続き留意が必要です。安値圏での突っ込み売りを回避しつつ、戻りを丁寧に売るスタンスが適しそうです。5/13のトルコ3月経常収支や、5/14の同鉱工業生産、5/15の2月失業率などを睨みながらも、上値の重い展開が続くと予想いたします。
来週の予想レンジ TRYJPY 18.00ー18.80
トルコリラ円日足
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