来週の為替見通し 『米中貿易摩擦を巡るヘッドラインに引き続き警戒』
5/6−5/10の振り返り
5/6週のドル円相場は、米中貿易摩擦の激化を背景に、週を通して軟調推移が継続しました。きっかけとなったのは、5/5(日)に投稿されたトランプ米大統領による「中国からの輸入製品2000億ドルに対する関税を現行の10%から25%へ引き上げる」「その他の3250億ドル相当についても関税賦課の対象とする」との対中関税引き上げを示唆するツイートです。ドル円はこのツイートを嫌気する形でギャップオープンすると(※5/3終値111.11、5/6始値110.62)、「米中貿易摩擦の激化→グローバルな景気後退懸念→世界的な株安→リスク回避の円買い」との連想から、5/9(木)には、2/4以来、約3ヵ月ぶり安値となる109.47まで下げ幅を広げました。
5/10(金)の日本時間13時1分には、予定通り「中国からの輸入製品2000億ドルに対する関税の引き上げ」が行われましたが、既に出航した貨物については「適用されない」と、米税関に猶予期間が設けられたことから市場への反応は限定的となりました。引けにかけては、2日間にわたる米中通商協議を経てトランプ米大統領やムニューシン米財務長官より「協議は建設的だった」との発言が報じられる中、市場では緊張感が幾分和らぎ、ドル円は110円手前まで反発しての越週となっております。
一方、ユーロドル相場は週を通して底堅い動きが継続しました。5/7(火)に欧州委員会が2019年及び2020年の景気見通しを引き下げたことで(※特に域内最大の経済規模を誇るドイツの下方修正が大きく、2019年ドイツ:前回比▲0.6%、2020年ドイツ:前回比▲0.2%)、ユーロドルは一時的に弱含む場面も見られましたが、下げたところでは押し目買い意欲も根強く、週半ば以降は反発に転じました。5/8(水)に発表されたドイツ3月鉱工業生産(結果0.5%、予想▲0.5%)の予想比上振れを受けたユーロ買いや、5/7(木)の米4月生産者物価指数(結果0.2%、予想0.3%)を反映したドル売りが下支えとなる中、同日海外時間には一時1.1252まで上昇する展開となりました。週末にかけてやや反落に転じるも、冴えない米4月消費者物価指数(結果0.3%、予想0.4%)を受けたドル売りがサポートとなる中、結局1.1230付近まで持ち直しての越週となっております。
5/13−5/17の展望
今週のドル円相場は、これまでチャートポイントとして意識されてきた、@心理的節目111円丁度、A4/10安値110.84、B一目均衡表雲上限110.81、C一目均衡表雲下限110.30、D心理的節目110円丁度、E3/25安値109.72、F1/3安値と4/24高値を結んだフィボナッチ38.2%押し109.56 を全て割り込む「急落劇」を演じました。この間、強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」の点灯や、ボリンジャーバンド下限に沿って下落を続ける「バンドウォーク」が確認されるなど、先週までの横ばい推移とは一変し、センチメントの悪化が鮮明となりました。実際、これまで冷静さを保ってきた通貨オプション市場でも、リスクリバーサルの拡大(円コールオーバーの拡大)が見られるなど、円高リスクを織り込む動きが着々と進行しつつあります。5/9に記録した安値109.47を割り込めば、心理的節目109円丁度や、先述のフィボナッチ半値押し108.69、1/31安値108.49を試す動きが視野に入ります。RSIなど一部オシレータ系インジケーターに「売られ過ぎシグナル」が見られるものの、反発局面では戻り売り意欲が強まると見られ、上値余地は限られそうです。
ファンダメンタズ的に見ても同様で、米インフレ指標が弱含む中、市場では再び「米利上げ観測の後退→米利下げ観測の高進」を意識したドル売りが強まりつつあります。以上のことから、ドル円はテクニカル的にもファンダメンタルズ的にも上値の重い展開が予想されます。来週は、米中通商協議を巡るヘッドラインやトランプ米大統領によるツイート、中国側の報復関税の具体的な内容、5/15(水)に発表される米4月小売売上高の結果、5/18(土)までに最終判断がなされる輸入自動車に対する関税引き上げの是非を巡るヘッドラインを注視しつつも、ドル円・クロス円の続落に警戒が必要でしょう。
ユーロドル相場は、週末にかけてやや反発に転じるも、決定的な方向感を見出すには至りませんでした。テクニカル的に見てもボリンジャーバンド・ミッドバンドを挟んだ動きが続く中で(※横ばいを示唆)、上昇トレンドに転換したと捉えるのは時期尚早でしょう。来週5/14(火)に発表されるドイツ5月ZEW景況感指数が冴えない結果となれば、「欧州経済の先行き懸念の高まり→ECBによる金融緩和の再開観測→欧州金利の低下」といった波及経路で再びユーロドルに下押し圧力が加わる展開も想定されます。また、米中貿易摩擦の激化が、欧米貿易摩擦の激化に波及するリスクも残っております。実際、米CFTCが公表する投機筋のユーロ売りポジションは過去最高水準に迫る勢いで積み上がりつつあります。当方では引き続き、ユーロドル相場の下落を予測いたします。
ドル円の予想レンジ:108.50−111.00
ユーロドルの予想レンジ:1.1100−1.1350
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:上村 和弘
2019.05.13
ドル円見通し 米国の対中関税全面化、市場は受け止めきれるか?(週報5月第2週)
3月25日安値を割り込んで1月3日からの底上げパターンが崩れた。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2019.05.10
ドル円見通し 米中情勢を注視、ドル続落の可能性も(5/10夕)
10日の東京市場は、一時ドル高に振れるも「行って来い」。110円台を回復する局面も見られたが続かなかった。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。