ユーロは下降トレンド入りリスク高まる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、英国とEUとのブレグジット再協議、欧州の弱い経済指標、フランスとイタリアの政治的対立と、欧州にとっては悪材料ばかりが目立ち週初から週末までじり安の一週間となりました。
ブレグジットの再協議は、建設的な話し合いとの発言はあったものの「最終的な打開策を見いだすには至らなかった」と結論は出ないまま2月末までに開催される次回協議へと持ち越し、仮に2月下旬となると最終期限まで1か月と、いよいよハードブレグジットの可能性も考えなくてはいけません。欧州側は現段階でも修正の可能性を否定していますので、今週も英国と欧州にとってブレグジットへの楽観的な思惑は一段と収縮することになると言えそうです。
次に、欧州の経済指標ですが軒並み弱い指標が続きます。中国、米国と来て欧州にも昨年の貿易摩擦の影響が経済指標に表れてきたと言えますが、ユーロ圏のGDPではイタリアが既にリセッション入りと欧州の中でもイタリアよりも弱い国もある以上、今後の情勢には注意が必要です。そんな中で欧州と英国の経済成長見通しが大幅に下方修正され、英国ではブレグジットの不透明感から国民投票直後の水準に下げられました。
またフランスとイタリアの政治的な摩擦ですが、どちらかというと反EU派のイタリア与党に対して、フランスのマクロン大統領は親EU派ですから、イタリアはフランス、特にマクロン大統領に対して非難の発言が続き、フランス外務省は抗議から駐イタリア大使の召還を決めたと異例の発表を行いました。フランス国内ではデモの問題もあって、イタリアのポピュリズムに対する警戒も強く、今後も両国の対立の行方は気になるところです。
以上の3点は今週も継続材料となりますが、今週は英国、ドイツ、ユーロ圏の10〜12月期GDP速報値が発表されます。各国の数字が悪化する場合には一段のユーロ売り材料とされることは間違いありませんし、仮にいい数字が出たとしてもこれまで下げてきたことから、絶好の戻り売りにされる可能性が高いのではないかと考えています。
テクニカルな面からチャートもご覧ください。
*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
前週若干の修正を加えた平行チャンネル(青のライン)をそのまま残してありますが、先週の下げの動きで、中間線を下抜け平行線の下限を目指す動きになってきた動きに見えます。これまで11月以降は上下しながらも緩やかな上昇トレンドにありましたが、先週の下げで変調を来し始めたように思えます。
下げが続いて1月安値を抜けてくると、次のターゲットとしては1月高値を起点に1月安値までの下げ、その後の1月末の戻しを3点とする逆N波動が完成し、100%エクスパンションとなる1.1234レベルと11月安値を試しに行く展開へと下げが続く動きを考えた方がよさそうです。
当然、チャンネル下限で反転上昇という可能性もありますが、ユーロを取り囲む環境を考えると安値トライのリスクの方がはるかに大きいように思えます。今週は1.1250レベルをサポートに1.1400レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
ポンドの下値ターゲットは金曜のコラムで取り上げましたので、週報のコラムではユーロ円の下値ターゲットについてテクニカルな観点から考えてみます。
日足チャートをご覧ください。
先週のユーロドルの下げから、ユーロ円も週後半は下げに転じ、1月4日以降続けてきた上昇ウェッジ(ピンクのライン)をわずかに下抜けての週末クローズとなりました。
まだ、明確に抜けたとまでは言い切れないものの、週末終値で抜ける動きとなってきていること、またユーロを取り囲む環境が悪材料が多い上に、先週後半の株式市場の下げの動きを見ていると、クロス円ではリスクオフの円買いも出やすいと考えた方が自然です。
そこで1月3日安値と2月高値からフィボナッチリトレースメントを計算すると、38.2%押しが123.32、半値押しが122.50となっていることがわかります(青のターゲット)。今週は、週末の水準から1円ほど円高水準となる123円台前半を試しやすい流れにあり、展開次第では122円台半ばもありうると見ています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
2月11日(月)
17:00 デギンドスECB副総裁講演
18:30 英国10〜12月期GDP速報値
18:30 英国12月貿易収支、鉱工業生産
2月12日(火)
(特になし)
2月13日(水)
18:30 英国1月CPI、PPI
19:00 ユーロ圏12月鉱工業生産
2月14日(木)
16:00 ドイツ10〜12月期GDP速報値
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP速報値
2月15日(金)
18:30 英国1月小売売上高
19:00 ユーロ圏12月貿易収支
前週のユーロレンジ
前週のユーロレンジ
先週の概況
2月4日(月)
ユーロドルもドル円同様に金曜雇用統計後のドル高の流れを継続し、終日ユーロ売り・ドル買いの動きとなりました。しかし、1.14台半ばから前半へと水準を下げましたが、一日の値幅は36pips止まりと動意薄の一日となりました。
2月5日(火)
ユーロドルは前日安値を下回ったあたりでテクニカルな売りが出ていたもののNY市場前に買い戻し。その後はポンドの下げに引っ張られてやや売りが目立っての引けとなりました。
2月6日(水)
ユーロドルは終日じりじりと水準を切り下げる展開が続きましたが、最近の弱い経済指標やメイ首相とEUとのブレグジット再協議など不透明な材料が多いことから買いにくい流れとなっていました。NY市場では1.1361レベルまで水準を下げ安値圏での引けとなりました。
2月7日(木)
ユーロドルは、東京市場では小動きでしたが、欧州市場に入り発表された経済指標が弱かったこと、欧州委員会が発表した景気の見通しで主要国に軒並み大幅な下方修正が入ったことを嫌気してユーロ売りの動きとなりました。一時1.1325レベルまで水準を切り下げましたが、NY市場ではドル売りの動きも重なって一時的に買い戻しも見られました。引けにかけては再度ユーロ売りが目立ってのクローズとなりました。
2月8日(金)
ユーロドルも値幅こそ狭かったものの、週を通して欧州や英国の景気減速懸念が悪材料となり、金曜もわずかとは言え週間安値を更新しました。また、イタリアとフランスの間の政治的な対立が深まり、フランス政府は駐イタリア大使を帰国させる等の動きが新たな懸念材料となり、ユーロは安値圏での引けとなりました。
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