ドル円見通し 株安からの圧迫感抜けず(週報12月第3週)

12月10日からの1週間は前週の下落に対する揺れ返しでの上昇となったが、最後は株安による失速で終了した。

ドル円見通し 株安からの圧迫感抜けず(週報12月第3週)

ドル円見通し 株安からの圧迫感抜けず

【概況】

12月10日からの1週間は前週の下落に対する揺れ返しでの上昇となったが、最後は株安による失速で終了した。
12月1日の米中首脳会談を受けて12月3日朝は両国関係改善期待で一時的に反発したが、その後はファーウェイ副会長逮捕等による両国関係悪化懸念で下落、12月6日深夜に112.24円、週明け10日午前にも112.23円の安値を付けていたが、ファーウェイ副会長保釈や米中の電話協議報道等により状況改善として113円台を回復、14日未明には113.70円を付けたが14日のNYダウが496.87ドル安と下落で終了してドル円も113.21円まで反落、113.38円で終了した。

【NYダウは終値ベースで10月3日以降の安値を更新】

12月18−19日の米連銀FOMCも迫るが、米中関係への楽観と悲観が交錯しながら株式市場の動揺が続いており、ドル円も株安不安とその回復期待の狭間で揺れている。ドル円は10月4日に114.54円の高値を付けて以降は三角持ち合い型の推移が続いて高値更新へ進めずにいるが、NYダウも12月14日の下落では12月10日のザラバ安値を割り込んではいないものの終値ベースでは10月3日天井以降の安値更新であり、株安基調の継続がドル円の上値を抑えている。

12月14日は日経平均が441.36円安、上海総合株価指数も1.5%安、欧州株もDAXが0.5%安、そしてNYダウが496.87ドル安と世界を一周したが、そのきっかけは中国経済指標の悪化だった。
中国の11月小売売上高は前月比8.1%増だったが、前月の8.6%から低下して2003年5月以来15年ぶりの伸び率低下となった。鉱工業生産も5.4%で前月の5.9%から低下して2008年11月以来の低水準となった。
12月のユーロ圏製造業PMI、サービス業PMIも低下しており、最近は中国と欧州の経済指標の鈍化が目立ち始めている。やはり米国の仕掛ける貿易戦争がこれらの景気減速を進行させており、それを反映して米国での長短金利逆転現象も発生して米長期債利回り低下が進んだ。日経平均も10月26日安値の後は新たな安値更新を回避しているものの底割れに対する余裕も乏しい。

米中の電話協議では年明けからの通商協議のスケジュール等が詰められ、中国が米国産大豆を大量購入したり米国自動車への制裁関税を引き下げたり、米国側も年明けから予定していた制裁関税引き上げを90日間延期することを正式決定したり、協議進展への期待を抱かせる報道もあるのだが、米中貿易戦争はトランプ大統領の個人的資質による保護主義の突出ではなく世界経済の覇権争いであり、そう簡単には終わらないだろうということを株式市場も十分に認識し始めているという事だろう。

【FOMCを意識しつつも株安への警戒感が優先】

12月18−19日には米連銀のFOMCが開かれ、日本時間20日未明には金融政策発表、来年以降の利上げ見通し、議長会見等がある。今年4度目の利上げはほぼ確実視されており、来年以降の利上げペースは従来から減速するのではないかとみられている。
利上げペースの鈍化や利上げ終点の接近感はドル安円高材料にも採れるが、利上げがまだ数回は続くことを優先的に受け止めればドル高円安材料にもなりえる。いずれへ反応するのかは市場の心理ベースが前向きか後ろ向きかにも左右される。
株式市場心理が前向きならこうした米中協議の進展報道や利上げペース鈍化見込みなどを強気反応して上昇基調を回復してもよいところだが、市場心理が冷え込んできたために強気材料よりも弱気材料に対する反応が相対的に大きくなって戻り高値が切り下がり、その後に安値を切り下げるという現在のNYダウの姿を作っているのだろうと推察される。

株高による金融市場全般への楽観、リスクオン心理が強まらないとドル円も現状の三角持ち合いを上抜け切れず、逆に持ち合い下放れのリスクを抱えたままとなる。10月4日から10月26日へのドル安円高は世界連鎖株安と同調したものだった。仮に日米株が10月以降の安値を更新して一段安入りする場合、ドル円も10月4日から10月26日への下落規模(3.17円の円高ドル安)を再現すれば現状からの下落で110円を試すところに至り、10月26日や11月20日、さらに12月6日と12月10日の安値を下支えした104日移動平均を割り込んで三角持ち合い下放れによる下落期入りへ進みかねない。

【三角持ち合い放れの決着をつけるところ】

10月4日以降はレンジ縮小型の三角持ち合いであり、その下値支持線は104日移動平均と重なる。
11月28日高値114.03円超えからは上放れ開始として10月4日高値試しとし、10月4日高値更新からは年末年始への上昇継続として115円台、116円台を目指す流れと思われる。逆に12月10日安値112.23円割れからは下放れとして年末年始にかけて110円前後試しへ向かう流れとなるのだろう。
「持ち合いは持ち合い放れにつけ」の鉄則に従うが、徐々に持ち合いのレンジも収縮してきており、放れる前夜情勢にあると思われる。欧米はクリスマス休暇も迫りポジション調整・整理に動きやすい時期に入る。FOMC及び12月21日の米個人消費統計からの反応も持ち合い放れのきっかけとなりやすいのではないかと思う。

ドル円見通し 株安からの圧迫感抜けず

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月13日未明安値113.13円を支持線、14日未明高値113.70円を抵抗線とみておく。
(2)113.13円を上回るうちは113.70円超えから11月28日深夜高値114.03円試しとし、高値更新からは三角持ち合い上放れ開始として10月4日高値114.54円試しへ向かうとみる。仮に10月4日高値を上抜く場合は8月21日から10月4日への上昇波動並みとしてN計算値の116.14円を目指す流れと考える。
(3)113.13円割れからは12月10日安値112.23円試しとみる。12月6日深夜と10日午前安値で毛抜き型のダブル底を形成しているので、これを割り込む場合は下落再開感がかなり強まると思われる。その際は当初の下値目途を10月26日安値111.37円、さらに先行き110円前後試しへ向かうとみる。また株安が深刻化する流れと同調する場合、10月4日から10月26日への下げ波動の二倍値としてのE計算値108.20円を先行きで目指す流れと考える。(了)<16日11:40執筆>

【当面の主な予定】

12/17(月)
休場 南アフリカ
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 131億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICP、改定値) 前年同月比 (10月 2.0%、予想 2.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICPコア指数、改定値)前年同月比 (10月 1.0%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 10月 貿易収支(季調済) (9月 134億ユーロ、予想 140億ユーロ)
22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (11月 23.3、予想 20.6)
24:00 (米) 12月 NAHB住宅市場指数 (11月 60、予想 60)

12/18(火)
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
09:00 (NZ) 12月 NBNZ企業信頼感 (11月 -37.1)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
18:00 (独) 12月 IFO景況感指数 (11月 102.0、予想 101.7)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 年率換算件数 (10月 122.8万件、予想 123.0万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 年率換算件数 (10月 126.3万件、予想 126.5万件)

12/19(水)
英中銀金融政策委員会(MPC)1日目
日銀・金融政策決定会合(1日目)
06:45 (NZ) 7-9月期 四半期経常収支 (前期 -16.19億NZドル、予想 -59.35NZドル)
08:50 (日) 11月 貿易統計(通関ベース、季調前) (10月 -4493億円、予想 -6300億円)
08:50 (日) 11月 貿易統計(通関ベース、季調済) (10月 -3027億円、予想 −3076億円)
16:00 (独) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.3%、予想 -0.1%)
18:30 (英) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.2%)
18:30 (英) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 2.4%、予想 2.3%)
18:30 (英) 11月 小売物価指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
18:30 (英) 11月 小売物価指数 前年同月比 (10月 3.3%、予想 3.2%)
18:30 (英) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 2.4%、予想 2.3%)

22:30 (米) 7-9月期 四半期経常収支 (前期 -1015億ドル、予想 −1245億ドル)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 年率換算件数 (10月 522万件、予想 520万件)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 2.00-2.25%、予想 2.25-2.50%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

12/20(木)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 据え置き)
06:45 (NZ) 11月 貿易収支 (10月 -12.95億NZドル、予想 −8.80億NZドル)
06:45 (NZ) 7-9月期GDP 前期比 (前期 1.0%、予想 0.6%)
06:45 (NZ) 7-9月期GDP 前年同期比 (前期 2.8%、予想 2.8%)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 3.28万人、予想 2.00万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 5.0%、予想 5.0%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

18:00 (欧) 10月 経常収支 季調済 (9月 169億ユーロ)
18:00 (欧) 10月 経常収支 季調前 (9月 241億ユーロ)
18:30 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.5%、予想 0.3%)
18:30 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 2.2%、予想 2.0%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利 (現行 0.75%、予想 据え置き)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 12.9、予想 16.0)
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 20.6万件、予想 21.9万件)
24:00 (米) 11月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 8.00%)

12/21(金)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数 前年同月比 (10月 1.4%、予想 0.8%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価コア指数・生鮮食品除く 前年同月比 (10月 1.0%、予想 1.0%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価コア指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 0.4%、予想 0.4%)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感調査 (12月 10.4、予想 10.3)
18:30 (英) 7-9月期 四半期経常収支 (前期 -203億ポンド、予想 −222億ポンド)
18:30 (英) 7-9月期 GDP、改定値 前期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
18:30 (英) 7-9月期 GDP、改定値 前年同期比 (速報 1.5%、予想 1.5%)

22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比 (10月 -4.4%、予想 1.7%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP、確定値 前期比年率 (改定値 3.5%、予想 3.5%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・確定値 前期比 (改定値 3.6%、予想 3.6%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・確定値 前期比 (改定値 1.5%、予想 1.5%)
24:00 (米) 11月 個人消費 前月比 (10月 0.6%、予想 0.3%)
24:00 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 0.5%、予想 0.3%)
24:00 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前月比 (10月 0.1%、予想 0.2%)
24:00 (欧) 12月 消費者信頼感 速報値 (11月 -3.9、予想 -4.3)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 97.5、予想 97.5)
24:00 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 2.0%、予想 1.8%)
24:00 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (10月 1.8%、予想 1.9%)

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