今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは、引き続き欧州内の材料として今週のブレグジット案採決とイタリア予算案修正があり、さらに外部要因として対中制裁関税猶予後のファーウェイCFO逮捕と、特に後者の株式市場に与えるリスクオフの動きが当初はユーロ円の売り、その後はドル全面安となったことで、ユーロドルは上下しながらも高値引けとなりました。
今週は最大の注目材料として、11日の英国議会におけるブレグジット案の採決がありますが、週末にメイ首相が採決の延期をほのめかしたことで、週初の段階では11日に採決が行われるのかどうかがわかりません。おそらく過半数を得ることが難しい現状から、何かを考えているのだろうことだけはわかりますが、それがうまくいくのかどうかはわかりません。
仮に11日でないとしても、採決が行われた場合にブレグジット案が否決される可能性の方が高い状態で、アイルランドとしては既に合意無き離脱(ハードブレグジット)に備えているとのヘッドラインが金曜にも出ていました。EU側も合意なしを想定して備えていることは間違いありませんが、ハードブレグジットとなった場合の英国経済に与える悪影響は甚大ですし、EUにとっても関税がのしかかりますので、試算によるとドイツの自動車輸出は半減すると言われています。英国にとってもEUにとっても悪影響が目立ち、おそらくポンドもユーロも急落する可能性が出てきます。否決となることでユーロは年初来安値を大幅に更新する可能性大と言えるでしょうが、いつ採決が行われるか次第です。
もうひとつイタリア予算案が修正される流れは、おそらくEUの財政規律に沿ったものとなる可能性が高そうですが、こちらも当初14日に伊・EU首脳会議が行われるとの話が、金曜段階では11日との話も出ていて、それまでに修正予算案が決まっているのか、あるいはその場で交渉するのか、まだ不透明な状況のまま週明けを迎えています。またイタリアでは、財務相が辞任する、しないと政権内でも予算案に関係してごたごたしていそうですから、こちらもひょっとすると今週中に結論が出ない可能性があります。
イタリア予算案についても、もしEUの財政規律に沿わないものであった場合、ユーロ売りとなりますが、ブレグジット案採決と両方ともネガティブな場合、ユーロの下げがどこまで行くのか、長期的には2017年安値1.0340をも考えるような流れになるリスクがあることだけは考えておいた方がよいでしょう。ただ、仮にイタリアがポジティブでも英国がネガティブな結果であれば、ユーロの急落は免れそうもありませんので、今週以降は結果を見るまで常に構えていることとなります。
唯一ポジティブなニュースとしては週末のドイツCDU党首選でメルケル首相の側近でもある幹事長が次期党首となり、ドイツ国内の政治は現状の継続が約束されたことです。ただ、これも他の大きなイベントを前にしてユーロ買い材料とはなっていません。
ということで、いったいスケジュールがどうなるのかがわからない中で、唯一はっきりしているのは木曜のECB理事会とドラギ総裁会見くらいです。ドラギ総裁がもっともハト派であるということを含めて、どのようなコメントが会見で出てくるのか、ブレグジットについて何らかの意見が出てくるのか、あたりに注目です。
テクニカルな観点から、チャートも見てみましょう。
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
9月高値1.1815を起点とした下降トレンドは現在も継続中ですが、11月高値を結んだレジスタンス上に来ていることから、ここを上抜けてくると11月高値の1.1500を視野に入れてくる展開が予想されます。しかし、ここまで書いてきた通りで不安材料が多い中、1.14台後半から1.15では大量のユーロ売りが控えているのではないかと考えられます。
また下値は11月安値を結んだサポートラインが現在1.13台前半を上昇中で同水準がサポートとなります。何も無ければ素直に1.1325サポートの1.1500レジスタンスで良いのですが、何しろ来年以降の欧州を左右するブレグジット案の採決の行方次第です。仮に採決が今週中に行われるとして、現状可能性は少ないもののポジティブな結果となった場合は1.1600までの上値余地、ネガティブな結果となった場合には1.1200を下抜ける可能性、双方を考えながら1.1325〜1.1500をコアレンジとする見方をしておきたいと思います。
今週のコラム
2週続いてポンドドルのチャートを見ましたが、今週は過去10年程度の動きから最悪の事態を想定した下値目途を見ておこうと思います。
今回は月足チャートです。
目立った高値は2007年11月の2.1160、目立った安値は2017年1月の1.1988です。そして、ここ数年の動きとしては2014年7月高値の1.7191を起点に2017年1月までの下げ、その後の2018年1月高値1.4346までの戻しです。2018年は高値のあとは下げの動きが目立ち、流れとしては1.1988をトライし、この逆N波動から求められるフィボナッチ・エクスパンションの各レベル(青のターゲット)である、1.1747、1.1134、1.0261という水準が求められます。
長期的な話ではありますが、パリティ(1ポンド=1ドル)という話も出てくる可能性が否定できない月足チャートと言えるでしょう。
今週の予定
12月10日(月)
16:00 ドイツ10月貿易収支
18:30 英国10月GDP
18:30 英国10月貿易収支
12月11日(火)
17:30 デギンドスECB副総裁講演
18:30 英国11月失業率
19:00 ドイツ12月ZEW景況感指数
19:00 ユーロ圏12月ZEW景況感指数
**:** 英議会ブレグジット案採決(延期の可能性あり)
**:** 伊・EU首脳会談(予定)
12月12日(水)
17:15 スペイン中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
**:** イタリア修正予算案提出(予定)
12月13日(木)
16:00 ドイツ11月CPI
16:45 フランス11月CPI
17:30 スイス中銀政策金利発表
18:00 ノルウェー中銀政策金利発表
21:45 ECB理事会
22:30 ドラギECB総裁会見
**:** EU首脳会議(〜14日)
12月14日(金)
17:15 デギンドスECB副総裁講演
17:15 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 オーストリア中銀総裁講演
18:30 ラウテンシュレーガーECB理事講演
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
12月3日(月)
ユーロドルは、東京市場ではドル円のドル売りの動きとイタリア予算案の修正期待から買いが先行していましたが、欧州市場に入るとブレグジット案に関し閣外協力を得ている北アイルランド与党とEUとの板挟み状態のメイ首相の状況が、11日採決への不安を高めポンドとともにユーロも売られる動きとなりました。ただ、引けにかけては神経質な動きを挟みながらも買い戻しも出ていました。
12月4日(火)
ユーロドルは、株式市場の売りが欧州市場前場までドル売り・ユーロ買いの動きとなっていましたが、NY市場ではリスクオフの動きがユーロ円の売りにも波及し、ダウの急落とともにユーロが対ドル、対円で安値をつけにいく動きとなりました。欧州内ではEU司法が英国は離脱を一方的に取り消せるとの判断も出ましたが、メイ首相は取り消すことはないと発言し、ポンドとユーロの売りの動きに影響していました。
12月5日(水)
ユーロドルは、イタリア修正予算案がEU財政規律に沿って2.0%になるとのイタリア財務相の発言から上昇する動きが目立ちました。NY市場に入り一時的に押す場面も見られましたが、すぐに戻して1.13台半ばでの引けとなりました。
12月6日(木)
ユーロドルは、ファーウェイCFO逮捕の報道によるリスクオフで、ユーロ円の売りが出ていたことから欧州市場序盤までは上値が重くじり安の展開となりました。NY市場に入ってからは株式市場の下げからドル全面安の動きとなり、ユーロも1.1412レベルまで上昇、引けにかけては1.13台後半へと押しての引けとなりました。
12月7日(金)
ユーロドルは、基本的にドル円同様に東京市場でドルがやや買われる動きの後に海外市場に入ってからはドル売りと雇用統計を前に方向感が出ませんでした。その後、イタリアの修正予算案が12日にEUに提出されるとのヘッドラインも出て底堅い動きとなり、NY市場の引け間際には週間高値を更新、1.14台に乗せてのクローズとなりました。
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