【概況】
6月14日未明の米連銀FOMCは今年2度目の利上げを決定、メンバーの年間利上げ予想回数の中央値を3月会合時点の3回から4回へ上方修正したことでドル円は110.84円まで上昇した。
14日夜のECB理事会は金融政策を現状維持としたがドラギ総裁が来年夏までマイナス金利を継続するとしたためにユーロ安ドル高となり、さらに15日の日銀金融政策決定会合が現状維持で無策としたことからドル高が進んで15日午後には110.90円まで上昇して14日未明高値をわずかに超えた。
ただこれで米欧日の金融政策発表が一巡、ドル高はいったん収まった。さらに19日朝にトランプ大統領が中国への知的財産権侵害を理由とした制裁完全を大規模に拡大する姿勢を示したためにリスク回避からドル円は急落、19日午後には109.55円まで下げた。19日の下落では14日の安値を割り込んだため、5月30日以降継続してきた高値更新後の安値切り上げパターンが崩れた。
20日はドル全面高が進んでユーロ、ポンド、新興国通貨が下落したため、ドル円もリスク回避的な
円買いよりもドル全面高になびいて上昇、21日午後には110.75円まで上昇したが15日高値110.90円には届かず失速した。21日夜の英中銀金融政策発表で政策金利と量的緩和規模は現状維持とされたが利上げ支持派が増えたことでポンドが反騰、ユーロが連鎖上昇したことでドル安感が高まったことがドル円下落の背景だった。
22日はほぼ横ばい。110円割れでは買いも入るが110円台序盤では抵抗にあっている。
【米国とEUの貿易戦争全面化か?】
6月19日、米トランプ政権は中国に対する知的財産権侵害を口実とした制裁関税を大幅に追加するとした。さらに22日、大統領は「EUから米国に入ってくる全ての自動車に20%の関税を課す」とツイートした。ロス米商務長官は輸入自動車と同部品に対する追加関税の影響調査について7月下旬か8月を目途に終えるとの見通しを示しているので、関税発動にはまだ時間的猶予もあると思われるが、中国との貿易戦争全面化の様相に加えてEUとの対立も先鋭化しつつある状況は、トランプ大統領が貿易戦争全面化による世界経済の混乱リスクよりも米国の国益が叶うとの強固な政治姿勢を堅持しさらに強硬姿勢に踏み込み始めていることを示唆している。
22日には鉄鋼・アルミの関税強化に関する適用除外もいくつか発表されて市場をやや安堵させてもいたが、今後は日本への圧力もさらに強まってゆくことが懸念される。
【5月30日からの支持線割れ、高値・安値切り下がり】
6月19日の下落では14日安値を割り込んだために高値切り上げ後に安値も切り上げて上昇トレンドを形成する流れがストップした。21日への上昇でも高値切り上げへ進めずにいるが、今のところは19日安値割れには至っていないため、安値切り下がりパターンには至っていない。しかし、すでに5月30日、6月8日の安値を結んだ支持線を割り込んでいるため、5月30日以降の上昇基調が崩れ始めている。6月最終週に19日安値を割り込む場合は安値切り下がりにより下降トレンド形成へ進むため、再び高値切り上げパターンを形成できないうちは多少戻してもその後の下落で一段安へ進む可能性が継続すると思われる。
3月26日からの上昇については、概ね5か月から6か月周期のサイクルによるリバウンドとし、同サイクルの前回上昇期であった昨年9月8日から11月6日への上昇並みと見てきた。また5月30日からの反発は11月27日から12月12日への反発並みと見てきた。今のところは5月21日高値に対して6月15日高値では高値更新に至らずにいるため、昨年12月からの下落再開と同レベルの下落へ発展する可能性も継続していると思われる。この懸念を払しょくするには5月21日高値を超える必要があるが、高値更新できないうちは6月19日安値割れから下落期入りの再確認となるのではないかと考える。
【中勢のポイント】
(1)当面、6月21日高値110.75円を上抜き返せないうちは22日深夜安値109.80円割れから6月19日安値試しを想定する。
(2)6月19日安値割れ回避から110.25円越えへ戻す場合は110.50円から21日高値手前を試すとみるが、高値更新できずに110円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)6月19日安値を割り込む場合は、新たな円高材料を背景にした急落の場合は109円試しとするが、109円台序盤はいったん突っ込み警戒感から戻しを入れやすいとみる。また戻りに入っても6月15日、6月21日と高値を切り下げてきている高値ラインが戻り抵抗となってくると思われる。
(4)概ね3日から5日周期の短期サイクルでは25日へ下落の場合は25日から26日にかけての間にいったん安値を付け、26日から27日にかけての間へ戻り高値を入れつつ、その後の下落では6月末にかけてさらに一段安へ進みやすい展開が考えられる。週後半へ安値を更新する場合は5月29日安値108.11円を目指すとみる。
(5)上記は6月21日高値を超えずに高値・安値切り下げの下落基調へ進むことを前提とするが、6月21日高値を超える上昇が発生する場合はその前提が崩れるため、6月13日以降を高値圏持ち合いによる調整期とし、高値更新からさらに一段高へ進む可能性優先へ見通しを切り替える。その場合は2016年12月天井、2017年11月天井を結ぶ長期の抵抗線が来る111.50円から112円手前にかけてのゾーンを試す上昇を想定するが、111.50円以上は反落警戒圏と考える。(了)<24日21:50執筆>
【当面の主な予定】
6/25(月)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合における主な意見公表(6月14-15日開催分)
17:00 (独) 6月 IFO企業景況感指数 (5月 102.2、予想 101.8)
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数 年率換算件数 (4月 66.2万件、予想 66.5万件)
23:00 (米) 5月 新築住宅販売件数 前月比 (4月 -1.5%、予想 0.5%)
6/26(火)
22:00 (米) 4月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年比 (3月 6.8%、予想 6.7%)
23:00 (米) 6月 リッチモンド連銀製造業指数 (5月 16、予想 15)
23:00 (米) 6月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (5月 128.0、予想 128.0)
26:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:45 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、講演
6/27(水)
07:45 (NZ) 5月 貿易収支 (4月 2.63億NZドル、予想 1.00億NZドル)
17:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、発言
21:30 (米) 5月 耐久財受注 前月比 (4月 -1.6%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 5月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (4月 0.9%、予想 0.5%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -1.3%、予想 1.0%)
25:15 (米) ローゼングレン米ボストン連銀総裁、講演
6/28(木)
EU首脳会議(28日〜29日)
06:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 据え置き)
17:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
21:00 (独) 6月 消費者物価指数 速報 前年比 (5月 2.2%、予想 2.2%)
21:30 (米) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前期比年率 (改定値 2.2%、予想 2.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
23:45 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
6/29(金)
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -3.7%、予想
08:30 (日) 5月 失業率 (4月 2.5%、予想 2.5%)
08:30 (日) 6月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (5月 0.5%
08:50 (日) 5月 鉱工業生産・速報値 前月比 (4月 0.5%、予想 -1.2%)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.2%、予想 5.2%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数(HICP、速報 前年比 (5月 1.9%、予想 2.0%)
21:30 (米) 5月 個人消費 前月比 (4月 0.6%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年比 (4月 1.8%、予想 1.9%)
22:45 (米) 6月 シカゴPMI(5月 62.7、予想 60.5)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者態度指数・確報 (速報 99.3、予想 99.2)
6/30(土)
10:00 (中国) 6月製造業PMI (5月 51.9、予想 51.8)
10:00 (中国) 6月非製造業PMI (5月 54.9 )
オーダー/ポジション状況
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