トルコのCPI、11.29%に上昇
昨日発表された3月のトルコの消費者物価指数は前年比で11.29%と、2008年10月以来の高水準となりました。事前予想は10.7%程度の上昇でした。
物価上昇の背景には昨年クーデター以来のトルコリラの下落による輸入物価の上昇が指摘されており、食料品、衣類、靴が著しく上昇した他、生産者物価の上昇から減税を実施した白物家電も価格が上昇。
エコノミスト等の間では二ケタ台のインフレに対する警戒感が強いものの、エルドアン政権近辺からは「為替の下落による一時的なもの」との見解が出ています。
予想外のインフレ率の上昇に、最近一時の下落から持ち直しつつあったトルコリラは弱含みとなり、対円で発表前30.73レベルが現在30.30近辺、対ドルでは3.62近辺が3.64後半まで下落しています。
トルコでは広範な権限を大統領に集中させ、エルドアン大統領の事実上の独裁体制を固める改憲の是非を問う国民投票が16日に予定されていて、改憲が可決されれば今後10年にわたりエルドアン大統領の任期が伸びることとなります。
最近の世論調査では改憲賛成42.4%に対し反対44.0%(メトロポール調査、2月)と拮抗していますが、反対派をテロリストと同一視する発言すら行うエルドアン大統領のスタンスからは「いかなる手段」を使っても改憲を通そうとする姿勢が伺われます。
報道によればトルコの外交官151名が迫害を恐れてドイツに亡命申請しているとされており、クルド系一般市民の虐殺の疑い、シリアへの再侵攻、オランダをはじめとするEU諸国との対立等投票前後の政治的リスクの種はつきません。
一方で積極的に経済振興策を推進するエルドアン大統領が「独裁的指導体制」を固めると倫理的、人道的、民主的側面の問題は多々あるものの、強力な指導力で経済は活性化するとの見方もあります。
実際、先月末に発表となった4QのGDPは市場予想を大幅に上回る前年同期比3.5%の増加で、7月のクーデター未遂後減少した7-9の後、10-12は家計支出が大幅に伸びたことを示すやや不可解なデータとなっていて、政治的混乱や戒厳令の継続にもかかわらず、経済はむしろ堅調に推移している状況です。
仮に改憲が成立した場合トルコ中銀も独立性の維持がいっそう困難なものとなることも予想され、いずれにせよ当面トルコリラは上下両方向のリスクを抱えて波乱含みです。
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