日銀会合(12/18-19開催)のポイント: 利上げ実施は五分五分、思惑先行で乱高下必至の状況に(24/12/16)

今回の会合は方向性が非常に不透明で、観測記事や関係者による具体的な報道も少ないため、見極めが難しくなっている。

日銀会合(12/18-19開催)のポイント: 利上げ実施は五分五分、思惑先行で乱高下必至の状況に(24/12/16)

利上げ実施は五分五分、思惑先行で乱高下必至の状況に

【今回のポイント】

〇 利上げ実施の可能性は五分五分
〇 FOMC声明やパウエル議長会見も吟味する可能性
〇 発表時間遅くなり思惑先行で円や株が乱高下に

【市場コンセンサスは何?】

12月15日12時時点の日銀会合のコンセンサスは下記の通りである。

・利上げ実施の可能性は五分五分

今回の会合は方向性が非常に不透明で、観測記事や関係者による具体的な報道も少ないため、見極めが難しくなっている。12月上旬は植田総裁のインタビューを受けて、利上げ実施のムードが強まったものの、12月第2週には、「利上げ見送り」もしくは「直前まで検討」といった関係者によるリーク報道が相次いだ。最新の報道では、「日銀は次の利上げを待つコストはほどんとないとの見方で、金利据え置きに傾く」といった内容が伝わっている。植田総裁は利上げに対して前向きな考えかもしれないが、中村審議委員など日銀内では様々な見方が交錯しているようだ。

【何がサプライズになる?】

ある意味、0.25%利上げに動いても、利上げ見送りとなっても、サプライズとなる状況と言えよう。週末の為替は、153円台半ばと12月上旬との比較では円安ドル高が進行しており、金利据え置きを予想した動きが確認できる。一方、投機筋などは対円での積極的なポジション取りは手控えていることから、「利上げ実施→円買い」「利上げ見送り→円売り」というわかりやすい方向性に進む可能性はある。

夏以降の日銀会合では、日銀会合の結果は材料とはならず、植田日銀総裁の記者会見が注目されるケースが目立ったが、今回は日銀会合の結果発表と植田日銀総裁の記者会見が同列で注目されそうだ。議論が紛糾する可能性が高いことから、日銀会合の結果発表はこれまでの11時台よりは遅い時間となろう。

【では、円はどう動く?】

日銀会合前に関係者によるリーク報道が伝わる可能性もあるが、19日未明には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が伝わることもあり、19日の結果発表は遅い時間となりそうだ。【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】にある通り、ここ2回(9月、10月)は11時台の早い時間帯に会合は終了したが、今回は7月会合並みの遅い時間を想定する。植田総裁の最初の会合となった23年4月の12時53分終了を超える可能性もあることから、19日の東京時間は思惑先行の乱高下となりそうだ。

為替、株式、金利市場いずれも大きな影響を受ける可能性が高いことで、久しぶりに緊張感のある日銀会合結果発表となりそうだ。思惑先行の展開が想定されることから、円は対ドルや対ユーロで2−3円は上下するだろう。

【最近の日銀会合関係者の発言は?】

ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。

12月9日、石破首相
「現時点でデフレ脱却には至っていない」
「現時点で日銀との共同声明を見直すことは考えていない」

12月5日、中村日銀審議委員
「年内に利上げするかはこれから出る日銀短観などのデータをよく見て判断したい」
「利上げに反対しているわけではない、データに基づいて判断するべき」
「賃上げの持続性にまだ自信を持てておらず、個人消費の節約志向の強まりや設備投資計画が先送りされる可能性」
「消費者物価(除く生鮮食品)前年比で2025年度以降は2%に届かない可能性がある」
「米国経済は、累次の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に底堅く推移し、ソフトランディング期待が高まっている」
「日本経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」
「家計部門の所得環境は、足もとまで前年比+2%台後半の賃金上昇が続くなど、緩やかに改善している」
「『前向きな賃上げ』と『防衛的な賃上げ』の二極化が窺われ、今後の動向を注視している」

11月30日、植田日銀総裁
「12月や2025年1月の追加利上げの可能性について、経済・物価が見通し通りに推移し、「見通し期間(2024年度−2026年度)の後半に基調的な物価上昇率が2%に向けて着実に上がっていく確度が高まれば、適宜のタイミングで金融緩和度合いを調整する」
「(追加利上げの時期について)データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいている」
「トランプ次期大統領の政策を含め、米国経済の先行きを見極めたい」
「(2025年の春季労使交渉(春闘)が)どういうモメンタム(勢い)になるか。それはみたい。(その確認を)待たないと金融政策が判断できないわけではない」

【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】

日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行である。

そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。

以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。

【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%を1.0%メドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持

【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時28分終了、マイナス金利の解除等金融政策の枠組みを見直し
4月26日(金)・・・12時15分終了、前回会合の方針を維持
6月14日(金)・・・12時16分終了、国債買入額を引き下げる方針を決定
7月31日(水)・・・12時49分終了、国債買入額の減額と利上げ実施を発表
9月20日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(木)・・・11時41分終了、前回会合の方針を維持

【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円安推移
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、植田総裁はややタカ派な発言
12月18日−19日・・・0.25%利上げ見通しは五分五分

米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日・・・0.25%の利下げを実施、12月も0.25%利下げ実施を示唆
12月17日−18日・・・0.25%利下げを実施か、25年以降の利下げ見通しは明言せず

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
12月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、文言変更で一段の利下げを示唆

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