想定通り0.25%利下げ実施、弱いドイツ経済がユーロの重しに
【今回のポイント】
〇 政策金利は0.25%引き下げて3.40%に
〇 今後の利下げ見通しは「データ次第」として明言せず
〇 対円では8月戻り高値を上回りそうだが、ユーロ安円高の流れは変わらず
【市場コンセンサスは何?】
10月17日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。市場コンセンサスは下記の2点と考える。
・政策金利は0.25%引き下げて3.40%に
・今後の利下げ見通しは「データ次第」とし今後の利下げスケジュールは明言せず
【前回会合の議事要旨】
・「今後のデータがベースライン予測と一致すれば、段階的に金融を緩和していくのが適切だという点で概ね同意した」
・「メンバーはおおむね、将来のデータが基本シナリオに沿うものであれば、景気への制限を徐々に緩和するアプローチが適切であることに同意した」
・「インフレ目標達成が遅れるリスクがあるため、景気への制限を性急に緩めないよう、ある程度の慎重さが求められる」
・「一方、インフレ率が目標をさらに下回るリスクはより大きくなっている」
・「インフレ問題が解決したと完全には確信できないため、現在は段階的かつ慎重なアプローチが適切だと思われる」
・「エネルギー価格の変動が大きい現状を踏まえると、総合インフレ率の数値は中期的な物価上昇圧力についてあまり参考にならない。コアインフレ率を引き続き注視する必要がある」
・「ユーロ圏の全体的経済見通しについては懸念が増しており、予測される回復は脆弱だ。経済活動は依然として低迷しており、成長へのリスクは下方向で、短期的なリスクは高まっている」
・「全体としては、ユーロ圏のリセッションは依然として可能性が低いというのが一般的な見方だった」
【何がサプライズになる?】
ECBは今年6月、9月に次ぐ利下げを実施する予定だ。ECBの重鎮であるビルロワドガロー仏中銀総裁が、9日に「来週の利下げの可能性は非常に高い」と発言していることからほぼ間違いないだろう。一方、ECB関係者の発言から、今後の利下げに関しては「データ次第」といった雰囲気が感じられる。ECB理事会後のラガルド総裁の記者会見でも、今後の利下げに関するスケジュール等はこれまで通りの「データ次第」という回答に留まるだろう。今回も前回同様、サプライズに欠ける理事会となり、為替市場に与えるインパクトは限定的と考える。
【では、ユーロはどう動く?】
今回のECB理事会もノーサプライズを想定することで、為替市場への影響は限定的となるだろう。ユーロは対円では、8月15日につけた163円91銭突破を試す展開を迎えているが上値は重い。日銀による追加の利上げ観測が後退していることから、この水準を上回る可能性は十分あるが、日欧金利差は縮小傾向にあることから、ユーロ買い円売りの流れが強まる展開は想定しにくい。投機筋の円売り観測が強まれば、ユーロ高円安がもう少し進みそうだが、欧米中銀が利下げに動き出していることを考慮すると、円キャリートレードの活発化は難しいだろう。
一方、対ドルでは米経済の強さを背景にユーロ売りドル買いが強まっている。欧米ともにハードランディング懸念は低いが、欧州はドイツを抱えていることから経済的には米国に分がありそうだ。
欧州のネックともいえるドイツは9日、2024年経済成長率見通しを従来のプラス0.3%からマイナス0.2へ下方修正した。IMFの予測に基づくと、24年に主要7カ国で唯一2年連続のマイナス成長となる見込みだ。下方修正の主な要因は、24年後半に見込まれた経済回復が空振りに終わる可能性が高まったことにある。ECB理事会後の記者会見にて、この辺りに関する見解を求められる可能性はある。既に伝わっている内容のためユーロ売りが強まる展開は想定していないが、弱いドイツ経済はユーロの重しとして意識されよう。
【最近のECB関係者の発言は?】
ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾った。
10月9日、カザークス・ラトビア中銀総裁
「経済が弱いため利下げは必要」
「2025年にインフレ率が2%になれば、ECBの金利は中立水準まで下がる可能性」
10月9日、ウンシュ・ベルギー中銀総裁
「ECB、10月の利下げ必要か現時点で不明」
「成長率は低いがインフレ率はまだ高過ぎ、地政学的な緊張がエネルギー価格を押し上げている」
10月9日、カジミール・スロバキア中銀総裁
「10月会合での利下げの可能性を排除することはできない」
「10月の利下げについて、メディア報道ほど確信していない」
「現時点では、ECBが2%のインフレ目標を下回ることを心配していない」
10月9日、ビルロワドガロー仏中銀総裁
「ECB、来週の利下げの可能性は非常に高い」
「仏経済には回復力がある」
「ECBの利下げは非常に不確実だが、最後ではないだろう」
10月8日、センテノ・ポルトガル中銀総裁
「ユーロ圏のインフレ率は、目標に向かって収斂しつつある」
10月8日、バスレ・スロベニア中銀総裁
「10月のECB理事会での利下げは選択肢の一つ」
「10月に利下げしても、12月はオープン」
10月8日、カザークス・ラトビア中銀総裁
「データは、10月のECB理事会での利下げを示唆している」
10月8日、ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「インフレとの戦いはまだ終わっていない」
10月7日、ビルロワドガロー仏中銀総裁
「ECBはおそらく今月利下げを実施するだろう」
「インフレ目標のアンダーシュートに警戒する必要がある」
10月3日、シュナーベルECB専務理事
「成長への逆風を無視することはできない」
「依然として賃金の伸びは堅調」
「サービスインフレは依然として高い」
「インフレ率が2%まで持続的に低下する可能性が高まっている」
10月3日、センテノ・ポルトガル中銀総裁
「インフレはECBの目標に近づいた」
「ユーロ圏のインフレは安定している」
10月3日、バスレ・スロベニア中銀総裁
「さらなる利下げはあるだろうが、それはデータ次第」
「10月の利下げを除外したり約束したりはできない」
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円安推移
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日・・・政策金利0.25%引き下げ
12月12日
オーダー/ポジション状況
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