円全面高に地政学リスクも意識されて反発は鈍い、史上最安値更新に警戒
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、投機筋による円売りポジション解消に伴う円急伸が影響して、対円での史上最安値を更新した。
5日、日経平均が1987年10月20日のブラックマンデー翌日の下げ幅を上回る過去最大の下落幅を記録。投機筋による円売りポジション解消も加速し、円は主要通貨に対して全面高の展開となり、トルコリラは4.2438円と史上最安値を大幅に更新した。
売り一巡後は、6日の日経平均が過去最大の上昇幅となったことや、米景気減速懸念の後退、円高一服などが影響してトルコリラは反発。5日に発表された7月消費者物価指数や生産者物価指数が前年比で大幅に鈍化したことも反発材料となった。一方、中東情勢緊張化が重しとなり強い反発とはならなかった。
トルコリラ・円(東京時間:8月5日―8月9日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.4107円
高値:4.4239円
安値:4.2438円
終値:4.3775円
【先週と今週の重要指標】※時間は東京時間
8月5日
16時00分、7月消費者物価指数(前月比)、前回:1.64%、市場予想:3.50%、結果:3.23%
16時00分、7月消費者物価指数(前年比)、前回:71.60%、市場予想:62.00%、結果:61.78%
16時00分、7月生産者物価指数(前月比)、前回:1.38%、結果:1.94%
16時00分、7月生産者物価指数(前年比)、前回:50.09%、結果:41.37%
8月9日
16時00分、6月鉱工業生産指数(前月比)、前回:1.8%、結果:−2.1%
16時00分、6月鉱工業生産指数(前年比)、前回:−0.1%、結果:−4.7%
8月12日
16時00分、6月雇用統計、前回:8.4%
8月13日
16時00分、6月経常収支、前回:−12.4億ドル
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、短期的な急落に対する反発を期待したいところだが、中東情勢の緊張化やリスク回避の円買いなどが重しとなって戻りは鈍くなりそうだ。
CFTCが公表した8月6日時点の投機筋の円売りポジションは、ネットで1.1万枚の円売りと2023年1月31日時点の2.0万枚を下回る水準まで減少した。7月2日時点の18.4万枚(2007年以来の円売りポジション)から僅か1カ月と少しで17.1万枚も減少。金額換算では2.2兆円ほどの傾きがアンワインド(巻き戻し)となったことで、この円全面高は発生した。
ただ、ネットではなく円売りポジションそのものがまだ7.7万枚残っているので、この円売りポジションの解消はまだ終わっていないとの見方もできる。円買いポジションも6.6万枚とじりじりと増加していることから、円全面高が再加速する可能性はトルコリラの戻りを鈍くするだろう。
そして、もう一つの重しである地政学リスクの高まりについてだが、パレスチナ寄りのエルドアン大統領は、パレスチナ自治区ガザを巡る紛争ではイスラエル批判を繰り返してきた。イランとイスラエル間で緊張が高まりつつあるなか、エルドアン大統領の不規則発言で地政学リスクの高まりに伴うトルコリラ売りが入る可能性はあろう。また、地政学リスクの高まりでトルコリラが下落した場合、エルドアン大統領が金融政策の運営に口を出し始める可能性もある。
テクニカルでは、5日に長い下影(下ヒゲ)を残し反発基調が強まりそうな状況だが、週末にかけては動きが鈍くなっている。5日以降、下値を切り上げているが、7日の高値4.4239円をクリアできない状況だ。早いタイミングで日足の一目均衡表の転換線4.4729円水準を上回りたいところだが、積極的にはトルコリラ買いに動けない様子。一段安で史上最安値を更新する可能性も意識しておきたい。
トルコリラ円日足
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.08.13
トルコリラ円見通し 円高による大幅下落一服だが8月2日からの急落幅解消には遠い(24/8/13)
トルコリラ円の8月12日は概ね4.42円から4.38円の取引レンジ、13日早朝の終値は4.38円で先週末終値と同じだった。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.08.10
トルコリラ円週報:『史上最安値更新後に反発。高インフレ沈静化期待がリラの下値を支えるか』(8/10朝)
トルコリラの対円相場は、7/3に記録した約7ヵ月ぶり高値4.99円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、史上最安値4.24円まで急落しました。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。