ご祝儀相場はもう少し続くが、徐々に電力問題などの改善策に関心向うか
【先週の南アフリカ・ランド】
先週のランドは、ラマポーザ大統領による閣僚人事発表を材料に18年以来の水準まで買われる場面も見られた。
6月30日、ラマポーザ大統領は、国民統一政府(GNU)政権下での新内閣の閣僚名簿を発表した。閣僚ポストは、前回の28から32に増加し、20人がアフリカ民族会議(ANC)から、6人が民主同盟(DA)から入閣した。インカタ自由党(IFP)が2人、愛国同盟(PA)など4政党もそれぞれ1人ずつ閣僚ポストを得た。
主要経済閣僚ポストでは、財務相にイノック・ゴドングワナ氏が残留し、鉱業・石油資源相にはグウェデ・マンタシェ氏、電力・エネルギー相(分かれていた電力とエネルギーが一括)にはコシエント・ラモコパ氏が残留した。農業相にはDA党首のジョン・スティーンヘイゼン氏、内務相にはレオン・シュレイバー氏が就いた。政党間のバランスを考慮し閣僚ポストが増加したのは想定線との見方だ。
市場では無事に組閣できたことでご祝儀的なランド買いが強まり、2018年以来の8.97円水準まで買われる場面も見られた。節目の9.0円手前で利益確定に押されたが、金やプラチナ価格の高騰などが下支えとなり、利益確定は短期的な流れに留まった。
ランド・円(東京時間:7月1日―7月5日)
※Investing.comの日足を参照
始値:8.8750円
高値:8.9747円
安値:8.6504円
終値:8.8105円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
7月11日
20時00分、5月製造業生産高(前月比)、前回:5.2%、市場予想:−2.0%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のランドは、目立った経済指標の発表が予定されていないこともあり、ご祝儀相場の余韻が残りそうだが、新閣僚による諸問題への対応策などに徐々に関心が向かいそうだ。喫緊の課題は電力問題だ。
今回、残留したラモコパ電力・エネルギー相は2023年3月に就任し、電力公社エスコムは同月から改善プロジェクト「発電事業復興計画」を立ち上げた。幾つかの発電所改修プロジェクトを含んでおり、電力不足改善を後押ししている。南アは電源構成の約8割を石炭火力発電に依存している一方、15ある石炭火力発電所の多くが1960年代から1980年代にかけて建設されたことで老朽化が進んでいる。
一方、南アフリカの電力問題は、発電所の老朽化だけではなく、エスコム内での汚職や脆弱な電力網、そして、度重なる電線網の窃盗事件など問題は様々だ。発電所改修には既に取り組んでいることから、ラモコパ電力・エネルギー相は、こうした汚職など内部と送電網(インフラ)の整備も取り組む必要がある。
テクニカルでは、日足の一目均衡表の雲上限水準を上放れており、18年ぶりの高値に達したことでターゲットは9.0円台となろう。目立った売り材料に乏しい状況下、ご祝儀的なランド買いは継続し9.0円台到達は近いと考える。
まだ新閣僚を発表して1週間なのでハネムーン期間ではあるが、諸問題を多く抱えていることから、先進国に比べてハネムーン期間は極端に短いだろう。ご祝儀的なランド買いは今週辺りでピークを迎えると想定する。
南アフリカランド円日足
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