ドル円が乱高下する中でドル/トルコリラは終値の史上最安値更新
〇トルコ円、日銀会合後にドル円が一旦急伸したため、直前の4.85近辺から4.87へ上昇
〇その後、植田総裁会見を受けたドル円下落で上げ幅を解消
〇6/14早朝から対ドルでリラが急落、終値ベースの史上最安値更新により夕刻に4.79まで失速
〇ドル円が戻したことで4.82まで一時的に反発するも、ドル高リラ安継続により4.80で取引終える
〇対ドル、6/14は概ね32.82から32.45の取引レンジ、6/15早朝の終値は32.63
〇トルコ中銀調査、年末予想中央値は1ドル37.7463リラ
〇4.83を下回るうちは一段安余地ありとし、4.78割れからは4.76前後への下落を想定
〇4.83超えからは4.85手前への上昇を想定するが4.85手前は反落警戒とする
【概況】
トルコリラ円の6月14日は概ね4.87円から4.79円の取引レンジ、15日早朝の終値は4.80円で前日終値の4.85円から0.05円の円高リラ安、週間では6月7日終値4.84円から0.04円の円高リラ安となった。
日銀金融政策決定会合後にドル円がいったん急伸したためにトルコリラ円は直前の4.85円近辺から4.87円へ上昇したものの、午後の植田総裁会見からドル円が下落に転じたために上げ幅を解消したが、14日早朝から対ドルでリラが急落して終値ベースの史上最安値を更新したことに圧されて夕刻に4.79円まで失速した。深夜にかけてドル円が戻したことで4.82円まで一時的に反発したもののドル高リラ安の継続により4.80円で週を終えた。
日銀が長期金利抑制のための国債大量購入(現行で月6兆円規模)の縮小を決めたものの具体的計画は7月の次回会合で決めるとしたために量的引き締めへの姿勢が緩いとしてドル円はいったん円安反応を見せて発表前安値156.82円から158.25円へ急伸したのだが、植田総裁が次回会合での国債買い入れ減額は相当な規模となると市場をけん制して追加利上げに含みを持たせる発言も行ったために156.88円へ失速した。15日早朝にかけてはやや落ち着いて157円台前半へ戻したものの乱調な展開となり、仏総選挙での極右政党躍進見通し等による欧州株安とユーロやポンドの下落によりクロス円全般は日銀会合後の急落解消から一段安へ失速し、トルコリラ円も日中の上昇分を解消してさらに下落した。
ドル円は5月3日安値以降の高値を更新したことにより、14日夜にかけての反落から持ち直してくれば円安基調を継続して4月29日高値160.16円に迫る可能性も考えられるが、一本調子の円安ではなく上下に振れ幅も大きくなっているため、ドルストレートでドル高に圧迫される通貨はドル円の下落時に大きく足を引っ張られやすくなっていると思われる。
トルコリラ円は6月7日に4.87円を付けた後は上値が重くなり4.82円前後を下値支持線とした持ち合いの様相だったが、15日早朝への下落により持ち合いから転落し始めた印象だ。ドル高リラ安の影響も大きいため、勢いのある円安へ進まない場合はドル高リラ安に圧迫されて水準を切り下げてゆくことも懸念される。
【対ドルでリラ急落、終値ベースで史上最安値更新】
ドル/トルコリラの6月14日は概ね32.82リラから32.45リラの取引レンジ、15日早朝の終値は32.63リラで前日終値の32.28リラから0.35リラのドル高リラ安となり、日足終値としては6月4日終値32.57リラを超えて対ドルでの史上最安値更新となり、この日の安値32.82リラは4月12日に付けた取引時間中の史上最安値33.03リラに次ぐ安値水準となった。週間では6月7日終値32.24リラから0.39リラのドル高リラ安だった。
4月12日の史上最安値33.03リラを起点としてそれまでのリラ安が落ち着いてリラの買い戻し優勢の流れとなり5月14日には高値で31.89リラを付けたが、それ以降は繰り返し31リラ台の高値を試しつつも高値更新へ進めずに日足終値では32リラ台が維持されてきた。
6月4日にトルコ外相のBRICS加盟希望を表明したこと等をきっかけとしたリラ売りによる急落で終値を32.57リラとして4月24日終値32.54リラを超えて終値ベースの最安値とし、6月5日に32.67リラへ安値を切り下げてからいったん急落幅を解消した後はこの間の高安の範囲で徐々にレンジを縮小する三角持ち合いに入っていたが、6月14日は三角持ち合いから下放れしたことでテクニカルな売り優勢となり急落商状を招いたようだ。
フランス総選挙での極右・右派勢力が躍進との見通しで欧州株が下落して為替市場ではユーロやポンドが急落しているが、欧州勢のリスク回避感が投機筋の手仕舞いを助長してリラ買いポジションの解消につながったことも考えられる。
【トルコ中銀調査、年末予想中央値は1ドル37.7463リラ】
6月14日にトルコ中銀は月次のビジネスサーベイ(エコノミストや企業トップに対する市況調査)結果を公表した。
それによると2024年末のトルコCPIは年率43.52%で前月調査時の43.64%から若干低下し、12か月先見通しは31.79%で前月調査時の33.21%から低下した。
2024年GDP見通しは3.3%で前月調査と変わらず、経常赤字見通しは290億ドルで前月の305億ドルから若干減少した。政策金利については3か月後を50%として現行水準が続くとされ、12か月後は35.9%で前月調査時の37.11%から低下した。
為替レートについては2024年末に1ドル37.7463リラとされて前月調査時の38.7771リラからややリラ高へ修正された。今年2月時点の40.0212リラからは低下してきたものの依然としてリラの先安感は継続している。6月5日のロイター社調査では6月末に1ドル33リラ、8月末に34リラ、11月末に35.5リラ、2025年5月末に39リラへ下落すると見込まれ、最も悲観的な見通しでは1年後に45.67リラと予想された。金融大手の 米JPモルガンも5月末時点で2024年末を1ドル35.5リラ、2025年末を42リラとしている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、6月12日夜に4.81円へ急落してから直前の下げ幅を解消する反騰となったために13日午前時点では12日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしたが、6月13日午後へ高値を伸ばした後は上値の重い展開が続いたために14日午前時点ではすでにサイクルトップを付けた可能性があるとして4.81円割れから弱気サイクル入りとした。
6月14日夜に4.79円へ下落したため13日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして17日夜から19日深夜にかけての間への下落を想定する。4.83円超えからは強気転換注意とするが、現時点からの強気サイクル入りには4.85円を超える規模の反騰が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では6月14日夜の下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落し、その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下落再開とし、強気転換は連続的な上昇で先行スパンを上抜くところからとする。
60分足の相対力指数は14日夜に30ポイントへ低下してからも50ポイント以下での推移が続いているので20ポイント前後への低下余地ありとみる。50ポイント超えから続伸する場合は強気転換注意として60ポイント前後への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.78円を下値支持線、4.83円を上値抵抗線とする。
(2)4.83円を下回るうちは一段安余地ありとし、4.78円割れからは4.76円前後への下落を想定する。4.76円以下は反発注意とするが4.83円を下回るか直前安値から0.04円を超える反騰がみられないうちは18日も安値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)4.83円超えからは4.85円手前への上昇を想定するが4.85円手前は反落警戒とする。
【当面の主な予定】
6月20日
16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 80.51)
17:00 5月 財政収支 (4月 -1778億リラ)
20:30 週次 外貨準備高 グロス 6月14日時点 (6月7日時点 863.6億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 6月14日時点 (6月7日時点 475.2億ドル)
23:30 5月 中央政府債務 (4月 7兆4926億リラ)
6月24日
16:00 6月 製造業信頼感指数 (5月 105.4)
16:00 6月 設備稼働率 (5月 76.3%)
6月25日
17:00 5月 海外観光客数 前年同月比 (4月 8.7%)
6月27日
16:00 6月 経済信頼感指数 (5月 98.2)
20:00 トルコ中銀 政策金利 週間レポレート (現行 50.0%、予想 50.0%)
20:30 週次 外貨準備高 6月21日時点
注:ポイント要約は編集部
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