ドル円の急落で5月3日安値以降の戻り一巡による下落期入りの様相
〇昨日のトルコ円、米CPI後のドル円大幅下落を受け、4.80を割り込む
〇その後いったん4.83まで戻してから一段安し、5/16午前に4.78へ続落
〇5/3以降の戻り幅の半値押しを試す、当面は戻り売り有利として安値の落ち着きどころを探りたい
〇対ドル、5/15は概ね32.33から32.01の取引レンジ、5/16早朝の終値は32.16
〇終値ベースで4/24以降の安値更新、32リラを挟んだ攻防を繰り返しながらリラ高優勢の流れを維持
〇トルコ財政支出は5か月連続の赤字、構造的な赤字体質からの脱却見込めず
〇4.82を下回るうちは一段安警戒とし、4.77割れからは4.75前後への下落を想定
〇4.82超えからはいったん戻しに入るとみるが、4.83から4.84前後は戻り売り有利とする
【概況】
トルコリラ円の5月15日は概ね4.85円から4.78円の取引レンジ、16日早朝の終値は4.81円で前日終値の4.84円から0.03円の円高リラ安だった。
ドル円が4月29日高値160.16円から5月3日夜安値151.85円までの大幅下落一巡により反騰入りした流れを追いかけてトルコリラ円は5月3日夜安値4.69円から反騰入りして5月14日午後に4.86円を付けて5月3日以降の高値を更新したが、ドル円が14日夜の米PPI発表後に156.75円へ高値を更新したところから下落に転じ、15日夜の米4月CPI上昇率の鈍化を見て大幅下落したため、トルコリラ円は米CPI発表直後に4.80円を割り込み、いったん4.83円まで戻してから一段安に入り、16日午前には4.78円へ続落した。
【5月3日以降の戻り幅の半値押しを試す】
4月の米CPIの前年同月比が3月の3.5%から3.4%へ低下し、食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比が3月の3.8%から3.6%へ低下して2021年4月以来の低い伸び率となったため、市場は9月と12月の利下げ期待度が高まったとして発表後の乱高下後にドル全面安となり、ユーロやポンド等が4月後半以降の高値を更新する一段高へ上昇し、ドル円は5月16日午前に154円を割り込んだ。
ドル円は5月3日夜151.85円から5月14日夜高値156.75円までの上昇幅4.90円に対する半値押しラインの154.30円を割り込んでおり、市場介入による大幅下落に対する揺れ返しの買い戻しが一巡して下落を再開し始めた印象であり、ドル円の騰落を追いかけているトルコリラ円も戻り一巡により下落期入りした印象を強めている。
トルコリラ円は5月3日夜安値4.69円から5月14日午後高値4.86円まで0.17円の上昇幅であり、半値押しラインの4.78円割れから3分の2押し4.75円を試し、さらに5月3日安値をもう一度試しに向かうことも懸念される。短期的な戻りを消化しながら5月14日以降の安値を更新してゆく展開も考えられるため、当面は戻り売り有利として安値の落ち着きどころを探りたい。
【ドル/トルコリラは終値ベースで4月24日以降の安値更新】
ドル/トルコリラの5月15日は概ね32.33リラから32.01リラの取引レンジ、16日早朝の終値は32.16リラで前日終値の32.27リラから0.11リラのドル安リラ高だった。
4月12日に取引時間中の史上最安値を33.03リラへ更新し、終値ベースでは4月24日終値32.54リラへ史上最安値を更新したが、4月25日にトルコ中銀が政策金利を据え置いて今後もインフレ抑制のための引き締めを続けるとしたことや5月3日の大手格付け機関S&Pによるトルコ格付けの引き上げによりリラ買い優勢の流れに入ってきた。
5月9日から14日まで繰り返し32リラ割れの高値を付けて徐々に高値と安値を切り上げてきたが、15日は31リラ台の高値をつけなかったものの終値としては4月24日終値以降の最高値を更新しており、32リラを挟んだ攻防を繰り返しながらリラ高優勢の流れを維持している印象だ。
【トルコ財政支出は5か月連続の赤字】
トルコの4月財政収支は1778.3億リラの赤字となり、昨年12月から5か月連続の赤字となった。直近1年間では昨年5月、7月、8月、11月に黒字を計上した以外は赤字であり、昨年12月に8425.3億リラの大幅赤字を計上した後はやや落ち着いているものの構造的な赤字体質からの脱却が見込めていない。
トルコ政府は5月13日に包括的財政緊縮策を発表し、高インフレとリラ安を抑制するために歳出を削減して予算配分を効率化し公共投資も絞り込むとしたが、貿易赤字体質による構造的な経常赤字、財政赤字、中央政府債務の膨張等が積極的な財政支出を伴う景気対策を難しくしている。
財政規律が保たれて赤字改善が進み、外貨準備高が順調に回復してインフレが収まればトルコに対する海外からの投資意欲も拡大するだろうが厳しい情勢が続いている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、5月10日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして14日夕から16日夕にかけての間への上昇を想定していたが、5月14日午後へ続伸してから下げたために15日朝時点ではすでにサイクルトップを付けた可能性があるとして4.83円割れからは弱気サイクル入りとした。
5月15日午後からの下落で4.83円を割り込み16日朝には4.80円も割り込んだため、14日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は16日午前から17日午前にかけての間とする。4.82円超えから強気サイクル入りとして17日午後から21日午後にかけての間への上昇を想定するが戻りは短命の可能性もあるので強気サイクル入りした後に14日午後以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとして21日から23日にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月15日午後からの下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンがその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は5月15日夜の下落時に30ポイントを割り込み、その後も50ポイント以下での推移が続いているのでまだ下落余地ありとみる。相場が一段安する際に指数のボトムが切り上がるかフラットとなる場合は強気逆行からの反騰入り注意とし、50ポイント超えからは60ポイント前後への上昇を想定するが、戻り一巡で40ポイントを割り込むところからは次の下落期入りと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.77円を下値支持線、4.82円を上値抵抗線とする。
(2)4.82円を下回るうちは一段安警戒とし、4.77円割れからは4.75円前後への下落を想定する。4.75円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は4.73円前後へ下値目途を引き下げる。4.82円を下回るか直前安値から0.03円を超える反騰がみられないうちは17日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.82円超えからはいったん戻しに入るとみるが4.83円から4.84円前後は戻り売り有利とし、その後に4.80円を割り込むところから下げ再開と一段安を想定する。
【当面の主な予定】
5月16日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5月10日時点 (5月3日時点 691.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5月10日時点 (5月3日時点 210.8億ドル)
5月17日
16:00 中銀調査 年末CPI・金利・為替レート予想
23:30 4月 中央政府債務残高
5月23日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 80.5)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 50.00%)
注:ポイント要約は編集部
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