ドル円の反騰を追いかけて5月3日安値以降の高値を更新
〇トルコ円、米PPI発表後ドル円が156.75へ続伸した場面で高値切り上げられず、やや軟調推移
〇今夜米4月CPI発表、急変に注意しながら引き続きドル円の反騰基調追いかける展開
〇本邦政府・日銀の米CPI発表後の介入にも要警戒
〇対ドル、5/14は概ね32.32から31.89の取引レンジ。1ドル32リラ挟んだ攻防続く
〇トルコ政府、5/13に包括的財政緊縮策を発表。財政規律を維持して物価安定目指す
〇4.83上回るうちは一段高余地あり、4.86超えからは4.88前後への上昇を想定
〇4.83割れからは下落期入りとみて4.80前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円の5月14日は概ね4.86円から4.83円の取引レンジ、15日早朝の終値は4.84円で前日終値と変わらなかった。
ドル円が4月29日高値160.16円から5月3日夜安値151.85円までの大幅下落一巡により反騰入りした流れを追いかけてトルコリラ円も4月29日午前高値4.92円から5月3日夜安値4.69円までの大幅下落一巡で反騰入りしてきたが、5月14日未明にドル円が156円台へ一段高したことで14日午後には4.86円を付けて5月3日以降の高値を更新した。しかし14日夜の米PPI発表後にドル円が156.75円へ続伸した場面でトルコリラ円は高値を切り上げられず、15日早朝にかけてはやや軟調な推移となった。
ドル円は5月13日深夜の上昇で4月29日高値から5月3日安値までの下落幅8.31円に対する半値戻しラインの156.00円を超えた。
14日夜は米4月PPI(生産者物価指数)上昇率が全体の前月比が予想を上回り、コア指数の前年比が3月の2.1%から2.4%へ上昇したため、発表直後のドル高反応によりドル円はこの間の高値を更新したが、その後にパウエルFRB議長が次の政策変更は利上げではないと述べたことをハト派的姿勢と受け止めてドル安に流れが変わったためドル円の上昇にはブレーキがかかった。しかしユーロドルやポンドドルが一段高する中でユーロ円やポンド円も続伸したためにドルストレートでのドル安とクロス円の円安が拮抗したことでドル円は156円台を維持している。
今夜は米4月CPIの発表があり、内容次第では年内利下げ時期を巡る思惑で大きく動く可能性があるが、ドル安反応なら4月29日からの下げ幅に対する3分の2戻し157.39円等を試すのではないかと思われる。
トルコリラ円としては米経済指標等をきっかけとした急変に注意しながら引き続きドル円の反騰基調を追いかける展開と思われる。政府・日銀としては市場介入しづらいタイミングだが、5月2日早朝にはFOMC声明等発表後に介入しているため、今夜の米CPI発表後も介入への警戒感を持っておきたい。
【ドル/トルコリラは1ドル32リラを挟んだ攻防続く】
ドル/トルコリラの5月14日は概ね32.32リラから31.89リラの取引レンジ、15日早朝の終値は32.27リラで前日終値と変わらなかった。
4月12日に取引時間中の史上最安値を33.03リラへ更新し、終値ベースでは4月24日終値32.54リラへ史上最安値を更新したが、その後はリラ買い優勢の流れで連日のように高値を切り上げて5月9日からは1ドル31リラ台後半を繰り返し付けている。5月14日は31.89リラを付けてこの間の高値を更新したが終盤のリラ売りで終値としては32リラ台にとどまっている。
4月25日にトルコ中銀が政策金利を50%で据え置いてインフレ抑制のための利上げ状態を継続するとしたことや5月3日に大手格付け会社S&Pがトルコ格付けを引き上げたことでリラ買いがやや優勢となっているもの、31リラ台に定着できず上値も重さも見られる。週間では先週まで3週連続のドル安リラ高だったが、4月12日の週の高安レンジ(33.03リラから31.73リラ)にとどまっており、32リラ台後半へ下落するようだと中勢レベルの調整的なリラ高一巡により再びリラ売り優勢の流れへ進みかねないところのため、リラ高継続には新たな押し上げ材料が欲しいところだ。
【トルコ政府、インフレ抑制へ向け歳出削減】
トルコ政府は5月13日に包括的財政緊縮策を発表した。歳出を削減して予算配分を効率化し公共投資も絞り込むとした。シムシェキ財務相はトルコ中銀が政策金利を50%まで大幅に引き上げてきたことに呼応して財政規律を維持して物価安定を目指すとした。
構造改革的な緊縮財政により政府機関の財・サービス購入予算は10%縮小、投資規模は15%縮小され、公務員の新規採用は退職者の埋め合わせにとどめるとした。
昨年5月の大統領選挙でエルドアン大統領が三選した時に経済対策チームとしてユルマズ副大統領とシムシェキ財務相が先頭に立っている。緊縮財政はトルコ政府への信認を高めるものだが、高度成長を再開させることにはマイナスの影響もあると思われ、うまく舵取りができればリラ高を助長すると期待されるものの、運用を誤ればイスラエルとの断交による貿易量の低下とともに景気低迷を招くことにもなりかねない。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、5月8日夜高値をサイクルトップとして高値更新から新たな強気サイクル入りとし、5月9日夜へ一段高したために10日午前時点では9日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、14日午前時点では直近のサイクルボトムを10日午前安値とした強気サイクル入りと改めてトップ形成期を14日夕から16日夕にかけての間とした。
5月14日午後へ続伸した後はやや下げているためすでにサイクルトップを付けた可能性もあると注意し、4.83円割れからは弱気サイクル入りと仮定して15日の日中から17日午前にかけての間への下落を想定する。ただし、いったん弱気サイクル入りしてから14日午後高値4.86円を上抜き返すところからは新たな強気サイクル入りとして17日午後から21日午後にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では5月15日早朝への下落で遅行スパンが悪化しつつあるものの先行スパンを上回った状況を維持している。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。ただし、先行スパンから転落してから再び上抜き返す場合は上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は5月14日午後の上昇時に70ポイントに迫ってから一時50ポイントを割り込んだ。60ポイント超えからは上昇継続とするが、50ポイント以下での推移が続き始める場合は下向きとし、次に45ポイントを割り込むところからは下落期入りとみて30ポイント以下への低下へ進むとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.83円を下値支持線、4.86円を上値抵抗線とする。
(2)4.83円を上回るうちは一段高余地ありとし、4.86円超えからは4.88円前後への上昇を想定する。4.88円以上は反落警戒とするが、4.84円を上回っての推移なら16日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.83円割れからは下落期入りとみて4.80円前後への下落を想定する。4.80円以下は反騰注意とするが、4.83円を下回っての推移なら16日も安値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月15日
17:00 4月 財政収支 (3月 -3090億リラ)
5月16日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5月10日時点 (5月3日時点 691.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5月10日時点 (5月3日時点 210.8億ドル)
5月23日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 80.5)
20:00 トルコ中銀政策金利発表
注:ポイント要約は編集部
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