トルコリラ円見通し ドル円の反騰続き4連騰だが10日午前は失速気味
〇トルコリラ円、5/9午前4.79まで下げたが、ドル円が156円に迫る中で夜に4.85まで高値を伸ばす
〇米新規失業保険申請件数の大幅悪化を受けてドル円が下げ、トルコリラ円も5/10朝4.80まで下げる
〇対ドル、5/9は概ね32.39から31.92の取引レンジ、1ドル32リラの壁を超え4/8以来の31リラ台到達
〇4/25以降の高値・安値切り上がり基調継続、歴史的なリラ安がいったん落ち着く可能性出てくるか
〇トルコ中銀の年末インフレ率予想、38%に引き上げられる
〇外貨準備高はグロス・ネットともに増加
〇4.80を下回るうちは上昇再開余地ありとし、4.85超えからは4.87前後への上昇を想定する
〇4.79割れからは、4.76前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の5月9日は概ね4.85円から4.79円の取引レンジ、10日早朝の終値は4.82円で前日終値と変わらなかった。
ドル円が4月29日の市場介入をきっかけとして5月3日夜へ大幅下落した局面でトルコリラ円は4月29日午前高値4.92円から5月3日夜安値4.69円まで大幅下落したが、5月3日夜安値からドル円が反騰に転じて5月6日から8日にかけて3連騰したことに合わせてトルコリラ円も5月6日から8日へ3連騰とした。
5月9日は午前にドル円が小反落したところで4.79円まで下げたものの早々に切り返し、夜にかけてドル円が156円に迫る中で4.85円まで高値を伸ばしたが、米新規失業保険申請件数が大幅に悪化したことでドル円が下げたため、トルコリラ円も10日朝には4.80円まで下げた。
ドル円は二度の市場介入で4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円まで8.31円の下落幅となったが、その半値戻しに当たる156円に迫ったところで戻り一巡感が出ている。4月29日午後の市場介入で急落した後の戻りに対して5月2日早朝に二度目の介入を行って一段安したため、連騰で半値戻し近くまで上昇したところでは三度目の市場介入への警戒感も強まりやすく、ユーロ等の反騰によりドル高感が緩み米長期債利回りも低下したため、連騰一巡でいったん仕切り直しの下落期に入る可能性がある。
ドル円が155円を割り込んで反落期に入る場合はトルコリラ円もドル円の下落を追いかけて4.70円台中盤へ下げる可能性があり、ドル円が市場介入ないし介入警戒感による売りの連鎖で急落する場合いは4.70円台前半へ押し返される可能性もあるところと注意したい。
【ドル/トルコリラは1ドル32リラの壁を一時超える】
ドル/トルコリラの5月9日は概ね32.39リラから31.92リラの取引レンジ、10日早朝の終値は32.24リラで前日終値の32.25リラから0.01リラのドル安リラ高だった。
4月12日に取引時間中の史上最安値を33.03リラへ更新し、終値ベースでは4月24日終値32.54リラへ史上最安値を更新してきたが、4月25日にトルコ中銀が政策金利の週間レポレートを50%で据え置きインフレ抑制のために利上げ状態を続ける姿勢を示したことでリラ売りが後退し、大手格付け会社S&Pがトルコ格付けを引き上げたこともリラ買い要因とされて4月25日以降はドル安リラ安基調で推移してきた。
5月8日までは1ドル32リラの壁を超えていなかったものの9日は高値で31.92リラを付けて4月8日以来の31リラ台に到達し、4月25日以降の高値・安値切り上がり基調を継続した。
5月10日午前は32.30リラから32.18リラのレンジで推移しているが、1ドル31リラ台での推移が続きリラの高値切り上げが続けば歴史的なリラ安がいったん落ち着く可能性も出てくるかもしれない。
【トルコ中銀の年末インフレ率予想は38%】
5月9日にトルコ中銀が発表した四半期ベースのインフレ報告では、2024年末のCPI(消費者物価指数)上昇率を38.0%とし前回報告の36.0%から引き上げた。4月のCPI上昇率が3月を上回ったことを反映したものだ。2025年末のCPI上昇率予想は前回見通しと変わらず14%とし、2026年末を9%とした。
中銀のカラハン総裁はインフレ抑制のための金融引き締めスタンスを維持してインフレ長期化を防ぐとし、インフレ率は今月にピークに達してその後はディスインフレ傾向が定着してゆくとの見通しを示した。総裁はインフレが大幅に悪化した場合はさらに引き締めを行うとしたが、インフレが5月でピークを付けて低下に転じれば現行の政策金利50%から徐々に利下げされてゆく可能性もあると思われる。
ロイター社によるアナリスト調査では、直近のトルコの年末インフレ見通しは43.5%、予想レンジは40%から48%であり、今回の中銀予想の38%を上回っている。これまでの大幅利上げによる効果やトルコリラの下落が落ち着けば年末にかけて50%以下へ低下してゆく可能性も高まると思われるが、原油高がぶり返す場合やドル高が進行したり欧米のインフレが高止まりを続ける場合にはトルコ中銀の楽観的見通しが実現しない可能性もあるだろう。
【外貨準備高は増加】
5月9日に発表された週次の外貨準備高は5月3日時点のグロスで691.5億ドルとなり4月22日時点の649.7億ドルから増加し、ネットでは210.8億ドルとなり4月22日時点の140.1億ドルから増加した。
グロスの外貨準備高は2023年6月の565.2億ドルから2023年12月に975.6億ドルまで大幅増加したが、12月をピークに減少に転じて4月22日時点でこの間の最低としたところから回復した。ネットの外貨準備高も2023年12月の400.9億ドルをピークとして4月22日時点でこの間の最低としたところから増加した。グロス及びネットの外貨準備高が一時的増加にとどまって減少傾向を続ける場合は外資の評価を下げることになるが再び増加傾向を見せれば外資の評価も上がると思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、5月3日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして5月7日の日中から8日午前にかけての間への上昇を想定してきたが、5月8日夜に4.83円まで高値を切り上げてから9日午前に4.80円をいったん割り込んだため、9日午前時点では8日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとした。
5月9日夜へ一段高したため、9日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、9日午前安値割れ回避のうちは13日夜から15日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、9日午前安値を割り込む場合は弱気サイクル入りとして14日午前から16日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月10日午前への下落で遅行スパンが悪化したが、先行スパンからの転落は回避している。先行スパンからの転落を回避する内は遅行スパンが好転するところから上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下落期入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月8日から9日夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられて50ポイントを割り込んだため、55ポイント超えからは上昇再開とみて60ポイント台中盤への上昇を想定するが、50ポイント以下での推移中は下向きとて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.79円を下値支持線、4.85円を上値抵抗線とする。
(2)4.80円を下回るうちは上昇再開余地ありとし、4.85円超えからは4.87円前後への上昇を想定する。4.86円以上は反落注意とするが、4.82円を上回っての推移なら週明けも高値試しへ進みやすいとみる。
(3)4.79円割れからは4.76円前後への下落を想定する。4.76円以下は買われやすいとみるが、4.79円を割り込んだ後も4.80円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月10日
16:00 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 2.4%)
16:00 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 11.5%)
16:00 3月 失業率 (2月 8.7%)
5月13日
16:00 3月 経常収支 (2月 -32.7億ドル9
16:00 3月 小売売上高 前月比 (2月 3.5%)
16:00 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 25.1%)
5月15日
17:00 4月 財政収支 (3月 -3090億リラ)
5月16日
20:30 週次 外貨準備高 グロス 5月10日時点 (5月3日時点 691.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 5月10日時点 (5月3日時点 210.8億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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