地方選挙後はリラ反発、50日線での攻防は継続か
先週のトルコリラは、地方選挙で与党は敗北したものの、エルドアン大統領が現在の金融政策を維持すると明言したことで買われる展開となった。
イスタンブール市長選では、最大野党の共和人民党(CHP)の現職のエクレム・イマモールが51.1%を得票し、与党である公正発展党(AKP)のムラト・クルム候補の39.6 %を大きく引き離した。また、首都アンカラでもCHPの現職のマンスール・ヤワシュが60.4%を得票し、与党候補に圧勝した。
そのほか、主要30都市のうち、イズミル、アンタルヤなど14都市で野党CHPが勝利し、AKPが勝ったのは12都市に留まった。全体の得票率は、CHPが37.76%、AKPは35.48%であった。前回の2019年の地方選と比べると、AKPは9%の得票減で、かつてエルドアン大統領が市長を務めたイスタンブールでの与党敗北は象徴的な結果となった。
エルドアン大統領は「今回の結果を真摯に受け入れて、大いに反省する」と敗北宣言をし、「これから経済政策を練り直して、インフレを抑えることに全力をあげる」と宣言。市場では、エルドアン大統領が素直に敗北を認め、経済対応に乗り出すことをポジティブに捉えた様子。
リラはエルドアン大統領の声明を受けて上昇。3月4日以来の4.8円台まで上昇する場面が見られた。ただ、3月CPIは市場予想を下回る結果となったことから、追加利上げ期待は後退。リラは4.7円台でのもみ合いとなった。
トルコ・円(東京時間:4月1日―4月5日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.6803円
高値:4.8092円
安値:4.6487円
終値:4.7308円
【先週と今週の重要指標】※時間は東京時間
3月31日
未定、統一地方選挙(結果は東京時間4月1日もしくは2日)、結果:与党敗北
4月1日
16時00分、3月製造業PMI、前回:50.2、結果:50.0
4月3日
16時00分、3月CPI(前月比)、前回:4.53%、市場予想:3.50%、結果:3.16%
16時00分、3月CPI(前年比)、前回:67.07%、市場予想:69.05%、結果:68.50%
4月8日
16時00分、2月鉱工業生産指数(前月比)、前回:0.0%
16時00分、2月鉱工業生産指数(前年比)、前回:1.1%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、エルドアン大統領の声明を鵜のみにする投資家は少ないと考え、金融政策転換への警戒が先行し、トルコリラ売りの地合いが再度強まる可能性を警戒したい。
3月CPIが市場予想を下振れてインフレ圧力がやや和らいだ点は、トルコ経済にとってポジティブな内容となったが、トルコ地方選挙の結果はエルドアン政権にとって大きなダメージとなった。
エルドアン大統領は「既存の金融政策を維持したうえで必要な点を改善する」といった話をしているが、エルドアン政権が、自身の支持母体である建設・不動産業界を中心とした景気刺激策を打ち出す可能性は十分あろう。
どこまで行うかは想像の世界となるが、最悪エルドアン政権が昨年の大統領選挙まで繰り返していた持論である「利下げがインフレ抑制」を主張する可能性もあると考える。可能性は非常に低いが、エルドアン大統領の考えは想定の範囲外を攻めてくるため注意したい。当然ながら、「利下げがインフレ抑制」を主張した場合、トルコリラ売りの対応となる。
日足ベースでは、50日移動平均線が位置する4.76円水準で上影(上ヒゲ)を連発している。一気に上を抜けてくると短期的な反発基調はより強くなりそうだが、「おっかなびっくり」な地合いが窺える。3月13日の史上最安値4.5227円から下値をじりじりと切り上げているが、50日線との攻防は続きそうだ。
トルコリラ円日足
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