短期リバウンドのなか、31日の地方選挙に注目
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、予想外のトルコ中央銀行(トルコ中銀)による5.00%の政策金利引き上げを材料に買い優勢の展開となった。
21日、トルコ中銀は、金融政策決定会合を開催し、主要政策金利の一週間物レポ金利を5.00%引き上げ、年50.00%にすると決定した。利上げは、3月31日の地方選後の4月以降になるとの市場予想に対し、前倒しの対応でインフレの抑制を図った。
トルコ中銀は、月次インフレ統計で基調的な低下が顕著かつ持続的に観察され、インフレ期待が予測するレンジに収束するまで金融引き締めスタンスを維持するとし、インフレ率の大幅かつ持続的な悪化が予想される場合は引き締めを実施すると述べた。
インフレ率は年央には減速するとの見方があったが、3月4日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)は前年比+67.07%、コアCPIは前年比+72.89%とともに、前月、市場予想を上回り、インフレは収束の兆しが見られなかった。
トルコリラはこのサプライズを受けて、売り方の買戻しなども入り、3月上旬の水準である4.78円まで値を戻した。史上最安値圏からのリバウンドを試す展開を迎えている。
トルコ・円(東京時間:3月18日―3月22日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.6393円
高値:4.7849円
安値:4.5794円
終値:4.7300円
【先週と今週の重要指標】※時間は東京時間
3月21日
20時00分、政策金利発表、前回:45.00%、市場予想:45.00%、結果:50.00%
3月22日
16時00分、3月の製造業景況感指数(季節調整済)、前回:102.0、結果:103.5
16時00分、3月設備稼働率、前回:76.4%、結果:76.2%
17時00分、2月外国人観光客(前年比)、前回:2.1%、結果:22.7%
3月29日
16時00分、2月貿易収支、前回:−62.3億ドル、市場予想:−70.0億ドル
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、反発継続で目先の上値抵抗線である50日移動平均線が位置する4.8円水準を上回るか注目する。
今回のトルコ中銀の利上げは、市場に対してインパクトを与えるサプライズだったが、シムシェキ財務相は11日、Xに「中央銀行のインフレ抑制を支援するため、今後も財政政策を引き締める」「健全な政策を維持し構造改革を進める」「物価安定が引き続き最優先課題だ」と述べており、「地ならし」を行っていた。
ただ、前週でも記載した通り、利上げを行ったとしても「1.25−2.50%」ほどの利上げに留まると想定していたので、「5.00%」の利上げは、「カラハン中銀総裁がインフレ抑制に強い姿勢を示した」証左と言えよう。
トルコ中銀の声明を見る限り、シムシェキ財務相とカラハン中銀総裁がインフレ抑制のため利上げに積極的なのは明確だが、ここで注意しなくてはいけないのが、沈黙を続けるエルドアン大統領の存在である。
トルコでは3月31日には地方選挙が実施される。今回の利上げは選挙後に実施されることから、
財政政策の引き締めによって国民の生活は厳しさが増すこととなる。
エルドアン政権の支持母体である建設・不動産業界は金融引き締めに対して否定的な立場である。昨年5月末に行われた大統領選挙で、エルドアン氏は野党クルチダルオール氏に52.16%対47.84%の僅差で勝利した。(開票率99.85%時点)
そのわずか10日後の6月8日、エルドアン大統領はエルカン氏(前総裁)をトルコ中銀総裁に任命した。僅差で大統領選挙をクリアしたエルドアン大統領が、オーソドックスな金融政策を実施する路線に転換したことから、トルコ中銀の政策金利は昨年6月の8.5%から1月の45.0%まで一気に駆け上がり、今会合で50.00%まで引き上がった。
今回の地方選に対して、自身の支持母体である建設・不動産業界にどういった説明を行っているのか謎だが、地方選の結果が今後のトルコ金融情勢に与える影響がある事は覚えておきたい。
日足ベースでは、50日移動平均線が位置する4.80円水準突破を意識したリバウンド局面と言えよう。この水準を上回れば、日足の一目均衡表の雲下限4.89円水準や雲上限4.92円水準がターゲットとなる。地方選挙の結果やその後のエルドアン体制の方針を確認する必要があるため、さすがに心理的な節目である5.0円水準回復までは時間はかかりそうだが、史上最安値圏からの反発基調は今しばらく続くと考える。
トルコリラ円日足
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.03.26
トルコリラ円見通し 利上げによるリラ高続かずドル円の上昇も頭打ちで上値の重い展開(24/3/26)
トルコリラ円の3月25日は概ね4.74円から4.68円の取引レンジ、26日早朝の終値は4.71円で先週末終値4.73円からは0.02円の円高リラ安だった。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.03.25
トルコリラ円見通し トルコ中銀の利上げと円安で戻すが4.70円台後半に抵抗感(24/3/25)
トルコリラ円の3月22日は概ね4.75円から4.70円の取引レンジ、23日早朝の終値は4.73円で前日と同じだった。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。