データがそろう6月会合で利下げ実施の公算が大
【今回のポイント】
〇 政策金利は過去最高の4.5%を据え置き
〇 ラガルドECB総裁は「制約的なスタンスの縮小について討議し始めたところ」
〇 市場は6月利下げを見込むが、ユーロは小動き推移
【ECB理事会の結果】
欧州中央銀行(ECB)理事会は、主要政策金利の据え置き(4.50%)を発表。金利を引き下げる準備はまだできていないとしながらも、インフレ見通しを下方修正し、想定よりも早い鈍化を確認するなど、年内利下げ着手に向けて慎重な地ならしを行った。
ラガルドECB総裁は、理事会後の記者会見において「今回の理事会では利下げについて議論しなかった」と説明したものの「制約的なスタンスの縮小について討議し始めたところ」と言及。第1四半期の賃金データが発表された後の6月6日のECB理事会で利下げが決定される公算があることを示唆した。
ラガルド総裁は「次回の4月11日の理事会までに、あと少しのデータが入手される。6月の理事会までにはさらに多くのデータが得られる。われわれはデータに依存しているため、この違いは重要になる」と述べた。一方、ラガルド総裁は、ECBが利下げに踏み切るにはより多くの証拠(データ)が必要として、「(インフレ率の)明確な低下が進行中であり、インフレ目標に向けて順調に前進している。その結果、われわれはより自信を深めているが十分ではない」と慎重な見方も表明した。6月利下げを織り込む市場をけん制した発言もあったが、市場はほぼ6月に利下げを行うとの見方を強める結果となった。
【市場の反応】
為替市場では、ユーロは対円で160円60銭水準から162円台に乗せる場面が見られたものの「往って来い」の格好となった。もっとも、日本銀行が3月18-19日に開く金融政策決定会合で、一部出席者がマイナス金利政策の解除が妥当だと意見表明する見通しと一部で報じられたことで、想定よりも早く金融政策の正常化に踏み出すとの観測が強まったことで円買いが優勢となった影響が大きかった。
対ドルでは、1.087ドルから1.095ドルまでユーロ買いが進み、2月の米雇用統計発表後、ドル売りが強まった場面では、1月上旬以来となる一時1.098ドルまで上昇した。ユーロが強いというよりも、ドルインデックスが1月中旬以来の102.3水準まで下落するなどドルの弱さが目立った。
【今後、ユーロはどう動く?】
今後は、18-19日の日銀金融政策決定会合で「金融政策の正常化」に踏み出すかが、対円でのポイントとなろう。市場は「マイナス金利の撤廃」を織り込むような見方だが、遅かれ早かれ日銀は「金融政策の正常化」に動く公算は大きいことから、少々騒ぎすぎと考える。
私は期末や株価の調整などを考慮して、「マイナス金利の撤廃を含めた議論を行った結果、現状維持」という「地ならし」的な日銀会合になると想像している。植田和男日銀総裁が12日に発した「個人消費は価格上昇幅が大きかった食料品など非耐久財への消費に弱めの動きがうかがわれる」も、3月会合では時期尚早なイメージを持たせている。結果、ユーロは対円では、160円水準±1円と狭いレンジでのもみ合いが3月中は続くと考える。
一方、対ドルもボラタイルな展開だ。根本的には、11月の米大統領選挙に共和党候補者としてトランプ前大統領が選出される公算が大きくなったことで「ドル安」を意識し始めたと考える。米経済指標の発表で上下にドルは動いているが、基本的にはトランプリスクを織り込み始めたと推測。ユーロは対ドルで、昨年12月28日につけた1.1141ドルを目指す展開を想定する。
ちなみに、ユーロが対円で160円水準でのもみ合いとなっていれば。1.1141ドルで計算すると、ドルは143円60銭水準となるが、さほど違和感はない水準と言えよう。さすがにこの水準までドル安が進行すると、株式市場では輸出関連銘柄の重しとなりそうだ。日経平均の調整局面はもう少し続く可能性はある。
【2024年スケジュール】
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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