「利下げ開始時期を「夏頃」と明言した場合はユーロ売りの反応」
【今回のポイント】
〇 4.5%の政策金利は現状維持
〇 利下げに関する検討を行っていることは発言
〇 利下げ開始時期は明言しない
【市場コンセンサスは何?】
3月7日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。市場コンセンサスは下記の3点と考える。
・政策金利4.50%の据え置き
・年内利下げ検討には言及
・具体的な引き下げ時期は明言しない
ECBが設定している政策金利4.50%は、ユーロ誕生以降、過去最高である。足元のユーロは162円台で推移しているが、投機筋を中心とした円キャリートレードのポジションは積み上がっており、ユーロ高の流れは根強い。
【前回議事録】
・インフレ率は2%目標に向かっており、そのペースは依然の予想よりも速い可能性がある
・現在の政策金利水準は、十分に長期間維持されれば、目標達成に大きく貢献するだろう
・目標を達成し持続的に落ち着くことを確信するには、ディスインフレがさらに進展する必要ある
・レーン氏はECB主要3金利の据え置きを提案した
・引き続きデータに依存したアプローチをとるべき
・レーン氏はPEPPの償還期限到来分の再投資に柔軟性を適用する選択肢残すことを提案
【何がサプライズになる?】
今回のECB理事会のポイントは、利下げ開始時期をラガルドECB総裁が明言するかどうかだが、足元の発言内容を推測するに、明言はしないだろう。つまり、今回のECB理事会はサプライズの可能性が著しく低い会合となりそうだ。
2月23日にラガルドECB総裁は「1−3月の賃金の数字がECBの判断にとって重要」と発言していることから3月利下げ開始の可能性はゼロだ。ECB関係者の発言を見ると「4月」「6月」という話は出ているが、ナーゲル独連銀総裁は「第2四半期に重要なインフレ圧力に関するデータが発表される」と発言しており「7月以降」といった状況だ。
前回のECB理事会後のラガルドECB総裁の記者会見では、「(賃金データの)新しいスタッフ見通しが手に入るのは6月頃か?」という質問に対して、時期に対する明言は回避し「それまでは情報が十分にそろわない」ことを示唆するなど早期の利下げをけん制していたことから、このスタンスは今回も変わらないだろう。
【では、ユーロはどう動く?】
〇コンセンサス通りだった場合
発表直後は、ユーロは対円で少し売られる可能性はある。足元の投機筋の円売りポジションが2023年11月頃の水準まで積み上がっていることから、通過後はポジション解消の動きが多少は入りそうだ。
また、日本銀行が3月にもマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み出すとの観測がやや高まっていることから、円高ユーロ安に進みやすい地合いと言えよう。2月26日に163円74銭をつけた後、上値が重くなっていることや、昨年11月16日高値164円35銭を起点とした上値抵抗線も意識されることから、ユーロはやや下向きを想定しておいた方がよさそうだ。
なお、米大統領選挙候補者の共和党予備選挙が集中する「スーパーチューズデー」では、トランプ前大統領の強さが際立った。まだ確定ではないが、不透明要因が多い「もしトラ」が強く意識される状況は、リスク回避のポジション解消売りを進める大きな要因となろう。
〇サプライズだった場合
仮に「データ次第だが利下げ開始は夏ごろ(8月に理事会はないので、7月を指す可能性が高い)を検討」といった踏み込んだ声明もしくはラガルドECB総裁の発言があった際は、ユーロは主要通貨に対して売りの反応が出るだろう。上記の通り、ユーロは対円で既に上値が重くなっていることから、瞬間的には160円割れを試す展開もあろう。「もしトラ」への警戒感も加わり下へのバイアスは強まりやすいと考える。
一方、対ドルでは1.08ドル水準で推移しており足元しっかりといった状況だ。米国ではパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言が6日−7日に開催されるほか、8日に2月の米雇用統計の発表を控えていることから、いったんユーロ売りのリアクションは入るだろうが、様子見ムードは強まりやすく1.08ドル水準は維持されると考える。
【最近のECB関係者の発言は?】
ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾った。
2月28日、カジミール・スロバキア中銀総裁
「最初の利下げは6月が望ましい、その後は緩和サイクルを円滑かつ着実に」
「インフレ見通しの改善は認めるが、3月の金利フォワードガイダンスは避けるべき」
2月27日、ラガルドECB総裁
「インフレは低下が続くと見込む」
2月26日、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「金融政策は慎重であり続ける必要がある」
「利下げ開始は6月と見ている」
2月24日、ミュラー・エストニア中銀総裁
「ECBは最初の利下げに忍耐強くなる必要」
「利下げに踏み切る前に、第1四半期の賃金データを見たい。」
2月24日、センテノ・ポルトガル中銀総裁
「インフレと成長の下振れリスクが顕在化」
「可能性がないにしても、ECBは3月利下げに前向きである必要」
2月23日、シムカス・リトアニア中銀総裁
「3月利下げは問題外、4月の可能性も低い」
2月23日、ラガルドECB総裁
「1−3月の賃金の数字がECBの判断にとって重要」
2月23日、ナーゲル独連銀総裁
「第2四半期に重要なインフレ圧力に関するデータが発表される」
2月23日、シュナーベルECB理事
「景気後退を招くことなくインフレを抑制し、ソフトランディングを達成できる期待ある」
2月23日、ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「現状はECBが米金融当局よりも先も利下げする環境ではない」
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・FOMC声明及びパウエルFRB議長は「3月利下げの可能性は低い」とけん制
3月19日−20日
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・政策金利維持、利下げに関する議論は時期尚早
3月 7日・・・政策金利維持、年内利下げ開始時期は言明しないか?
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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