ドル円の急落とドル高リラ安の継続で史上最安値を更新
〇昨日のトルコ円、4.67まで取引時間中の史上最安値更新
〇3/7午前ドル円が149円割り込み、トルコ円も4.66まで安値を切り下げる
〇当面は円高とドル高リラ安継続により、史上最安値更新を試す流れ続きやすいか
〇対ドル、3/6は概ね31.89から31.51の取引レンジ、4日連続で取引時間中の史上最安値更新
〇トルコ中銀、利上げ対応ではなく銀行融資規制による引き締めに着手
〇4.73を下回るうちは一段安警戒とし、4.65割れからは4.60前後への下落を想定
〇4.73前後は売り有利とし、その後に4.70を割り込むところから下げ再開とする
【概況】
トルコリラ円の3月6日は概ね4.74円から4.67円の取引レンジ、7日早朝の終値は4.70円で前日比終値の4.74円から0.04円の円高リラ安だった。
トルコリラが対ドルで史上最安値を連日更新する中でドル円も急落したため、トルコリラ円は4.67円まで取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでも前日に続き史上最安値を更新した。
ドル円は3月6日夕刻に時事通信社が3月の日銀会合で少なくとも1人の委員がマイナス金利解除の意見表明をすると報じたことをきっかけに急落し、6日夜のパウエルFRB議長による下院議会証言で年内利下げ開始が妥当との姿勢を示したことやADP民間雇用とJOLTS求人件数がともに市場予想を下回ったことで6月利下げ期待度が高まり、米長期債利回りが続落する中で7日未明に149.09円へ下落して3月1日未明安値149.20円を割り込み、7日9時過ぎには148.94円を付けて149円を割り込んだ。
日銀は3月18-19日に金融政策決定会合を開くが、今年に入ってから植田総裁、内田副総裁らがマイナス金利解除への言及を繰り返し、2月29日には高田審議委員がマイナス金利解除議論が必要と述べたことで2月29日未明高値150.84円から3月1日未明安値149.20円まで急落した経緯がある。米国の6月利下げ開始が優勢となりつつある中で日銀のマイナス金利解除=17年振り利上げを意識してドル円は下落しやすい状況にある。
トルコリラ円はドル高リラ安に加えて円高が重なったことで4.70円を割り込んできた。2月13日夜の米CPI発表後にドル円が急伸した場面で4.91円へ上昇し、その後の一時的上昇で4.97円を付ける場面も見られたが、飛び値となる一時的高値を除けば2月13日以降は戻り高値を切り下げながら一段安を繰り返す右肩下がりの展開となり、史上最安値を更新したことで先安感もさらに強まっている印象だ。
3月7日午前にはドル円が149円を割り込んだ際に4.66円まで安値を切り下げている。当面は円高とドル高リラ安の継続により史上最安値更新を試す流れが続きやすいと思われる。
【ドル/トルコリラは9営業日続落、4日連続で取引時間中の史上最安値を更新】
ドル/トルコリラの3月6日は概ね31.89リラから31.51リラの取引レンジ、7日早朝の終値は31.72リラで前日終値の31.62リラから0.10リラのドル高リラ安だった。
ドル高リラ安が収まらず、3月6日も31.89リラへ史上最安値を更新、取引時間中の最安値更新は3月1日から4営業日連続となり、終値ベースの史上最安値は2月23日から3月6日まで9営業日連続となった。
高インフレが続く中でトルコ中銀は1月の2.5%利上げで政策金利を45.0%としたところでインフレ対策としての利上げ終了を宣言、2月2日には金融政策正常化を進めて就任以来8会合連続で利上げを行い為替市場介入を止めて外貨準備高増強に努めてきたトルコ中銀のエルカン総裁が突然辞任、後任のカラハン総裁は利上げの必要無しとして年後半のインフレ鎮静化への楽観見通しを示したものの、3月4日発表の2月トルコCPI上昇率は全体とコアの前年比が1月から加速したため、市場は追加利上げ催促によるリラ売りを継続している。
【中銀は銀行融資規制による引き締めに着手】
トルコ中銀は3月6日に金融政策の引き締めスタンスへのコミットメント強化のために商業貸し付けを従来の2.5%から2.0%へ、一般貸し付けの月次伸び率限度を従来の3.0%から2.0%に引き下げた。
トルコ中銀は1月の利上げで政策金利の週間レポレートを45%として利上げ終了を宣言したが、3月4日発表の2月CPI上昇率が前年比67.07%となり1月の64.86%から上昇し、前月比も1月の6.7%から鈍化したものの4.53%と高水準となりインフレ鈍化の兆しが見られなかったことに対し、利上げ対応をせずに貸出抑制による引き締めで対処しようとしているようだ。
シムシェキ財務相は「ディスインフレには時間と決意が必要。物価の安定達成まで忍耐と決意をもって対応を続ける」「中銀を全面的に支持している」と述べているが、リラ安に歯止めがかからず国内経済指標も低調さが続いている中でこれ以上の利上げを行えば経済への大きな打撃となることも懸念されることで難しい政策判断に追い込まれている印象だ。
3月6日にトルコ中銀は外貨先物4億7500万ドルを売却したと報じられている。市場介入ではないものの実質的にはドル売りリラ買いであり、エルカン前中銀総裁が進めてきた外貨準備高増強もとん挫しかねないところだ。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、2月28日夕高値をサイクルトップとして3月4日の日中から6日午後にかけての間への下落を想定していたが、3月4日午前に一段安してからいったん戻して再び軟調な推移に入ったため、3月5日午前時点では3月4日午前安値を直近のサイクルボトムとして4.75円割れから新たな弱気サイクル入りとし、3月6日午前への下落で4.75円を割り込んだために3月4日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日午前から11日午前にかけての間への下落を想定した。
3月7日午前へ続落しているので引き続きボトム形成中とみる。強気転換には直前安値から0.05円を超える規模の反騰が必要と思われ、短期的な反発は戻り売りにつかまりやすいとみる。
60分足の一目均衡表では一時的な高値時を除いて先行スパンを下回る状況が続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先としてきたが、3月7日午前へ続落して両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、連続的な上昇で先行スパンを上抜くところからは反騰入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30ポイント前後の水準へ低下してからも40ポイント台回復へ進めずにいるのでまだ一段安余地ありとみる。史上最安値更新後の修正高にも注意がいるので45ポイント超えを強気転換注意とし、50ポイント超えからは反騰期入りとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.65円を下値支持線、4.73円を上値抵抗線とする。
(2)一時的な上昇を除いて4.73円を下回るうちは一段安警戒とし、4.65円割れからは4.60円前後への下落を想想定する。4.60円以下は反発注意とするが、4.70円を下回っての推移なら3月8日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.73円前後は売り有利とし、その後に4.70円を割り込むところから下げ再開とする。4.73円超えからは4.75円試しとするがその後の反落を警戒する。
【当面の主な予定】
3月7日
20:30 週次 外貨準備高 3月1日時点 グロス (2月23日時点 824.8億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 3月1日時点 ネット (2月23日時点 224.5億ドル)
3月11日
16:00 1月 失業率 (12月 8.8%)
16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 1.7%)
16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 11.4%)
3月12日
16:00 1月 経常収支 (12月 -20.91億ドル)
16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 2.4%)
16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 1.6%)
注:ポイント要約は編集部
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