ドル円見通し 日銀マイナス金利解除動向とFRB議長議会証言等で急落、149円を試す(24/3/7)

ドル円はパウエルFRB議長が下院議会証言で年内の利下げ姿勢を示したことによるドル全面安で7日未明には149.09円まで一段安した。

ドル円見通し 日銀マイナス金利解除動向とFRB議長議会証言等で急落、149円を試す(24/3/7)

日銀マイナス金利解除動向とFRB議長議会証言等で急落、149円を試す

〇昨日ドル円、日中はジリ安推移、夕刻の時事通信社報道を受け149.32へ下落
〇パウエル議長ハト派的発言と米指標悪化によりドル全面安に、3/7未明149.09まで一段安
〇時事通信、次回日銀会合にて少なくとも委員1人がマイナス金利解除妥当と意見表明の見通しと報じる
〇今夜のFRB議長上院証言、ECB政策金利発表・総裁会見、米失業保険申請件数、明日夜米雇用統計に注目
〇149.09割れからは148円台中盤を試す下落を想定
〇149.75超えからは反騰継続とみて150円台回復を目指す上昇を想定

【概況】

ドル円は3月5日深夜の米2月ISMサービス業景況指数が悪化したことで149.69円へ下落してからいったん6日未明高値150.22円まで戻したものの6日の日中はジリ安の推移となり、夕刻に時事通信社が「日銀の3月会合で一部出席者がマイナス金利解除が妥当と意見表明する見通し」と報じたことをきっかけに149.32円へ下落し、その後の反発では150円に届かず、6日夜の米2月ADP全米雇用報告での就業者数が予想を下回り、パウエルFRB議長が下院議会証言で年内の利下げ姿勢を示したことによるドル全面安で7日未明には149.09円まで一段安した。

2月13日夜の米1月CPI上昇率が予想を上回ったことをきっかけとして149円台序盤から2月14日早朝高値150.88円まで急伸した後は高値更新へ進めずに150.0円台後半を繰り返し売られつつ149円台へ突っ込むところは買い戻されて持ち合いを形成してきたが、2月29日に高田日銀審議委員がマイナス金利解除議論が必要と述べたことによる急落で付けた3月1日未明安値149.20円を割り込んだ。
今夜はパウエル議長の上院証言、ECBの政策金利発表とラガルド総裁会見、米週間新規失業保険申請件数の発表があり、明日夜には2月の米雇用統計がある。それらを通過しながら149円台を維持して反騰できるのか、149円割れからの続落で持ち合い下放れに入り円高が加速するのか注目される。

【日銀マイナス金利解除への地ならし続く】

時事通信社は3月7日午後に3月18-19日の日銀金融政策決定会合で政策委員9人のうち少なくとも1人がマイナス金利政策の解除が妥当だと意見表明する見通しだと報じた。報道通りに意見表明される場合、9人の委員中5人が賛成すればマイナス金利解除が決定される。過半数に至らなければ解除判断は延期されるものの、賛成者が複数いて植田総裁らが解除への消極姿勢を強調するようなことがなければ4月会合での解除が濃厚となり円高が加速する可能性がある。

植田総裁はG20財務相・中銀総裁会合後の会見で「2%物価目標の持続的達成については今のところまだそこまでには至っていない」「春季労使交渉はその確認作業の中で大きなポイント」と述べており、2月29日午前に高田審議委員によるマイナス金利の解除検討が必要との発言で急落していたドル円が元の水準までいったん戻した経緯がある。日本経済の低迷や実質所得及び家計支出の低下傾向を踏まえれば急ぐ必要のないこととの見方もあるが、正常ではないマイナス金利状態を解除したいとの衝動も大きい。
マイナス金利が解除される場合は政策金利が現行のマイナス0.1%から0.0%〜0.1%のレンジへ引き上げられることとなり、2007年以来17年振りの利上げとなる。

【パウエル議長の議会証言はハト派的】

3月6日にFRBのパウエル議長は下院金融サービス委員会での証言において「インフレの持続的な低下についていくらか確信しているが、もっと確信が欲しい」とし、早期利下げ判断については慎重な姿勢を示したものの、「経済が予想通り大幅に進展すれば、今年のある時点で政策抑制の縮小を開始するのが適切な可能性が高い」と述べて年内利下げ開始姿勢を示した。早すぎる利下げと遅すぎる利下げによるリスクにも言及しており、インフレ指標が顕著に鈍化し続けることを確認しつつ米経済指標が悪化するようだと利下げを躊躇できなくなるという内心を示した印象だ。昨年12月のFOMCでは2024年3回利下げ想定が示されており、昨年末からはFRB高官による市場の過度な早期利下げ期待をけん制する発言が相次いできたが、3回利下げ想定そのものを否定するものは見られない。

米労働省による1月のJOLTS(雇用動態調査)における非農業部門求人数は前月比2万6000件減の886万3000件となり市場予想の890万件を下回った。米民間雇用サービス会社ADPの2月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比14万人増となり1月の11.1万人(速報の10.7万人から上方修正)を上回ったものの市場予想の15万人増を下回った。これらも米長期債利回り低下とドル安に寄与した。

【米長期債利回りは低下、ダウは反発】

3月6日の米長期債利回りはパウエルFRB議長の年内利下げ見通しと米ADP及びJOLTS統計が予想をし回ったことで低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.05%低下の4.11%となり、5日の0.06%低下からの続落で一時は4.08%をつけて2月22日に付けた直近のピークである4.35%以降の最低とした。
30年債利回りは前日比0.06%低下の4.24%となり、5日の0.06%低下から続落した。2年債利回りは変わらずの4.56%で終了したが、一時は4.52%をつけて3月1日と同値として2月23日に付けた4.76%以降の最低水準とした。
一方でNYダウは前日比75.86ドル高と上昇、ナスダック総合指数は91.95ポイント高と上昇した。パウエル議長発言がハト派的だったことと長期債利回り低下を好感して買われたが、NY州地銀株が急落する場面もあり、NYダウは3月5日に前日比404.64ドル安と急落した後の高値警戒感も抱えている印象だった。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は3月4日夜高値150.56円からの下落が続き3月1日未明安値を割り込んで149円台を維持できるか試している。149.75円を超えるところからは反騰入りとみて7日夜から11日夜にかけての間への上昇を想定するが、149.75円以下での推移中は一段安警戒とし、7日未明安値149.09円を割り込む場合は7日の日中から11日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、3月5日夜の下落時に遅行スパンが悪化して深夜には先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパンが好転するところからはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とする。

60分足の相対力指数は30ポイント以下を買われつつ40ポイント前後で売られる持ち合いで推移しているがその間も相場は安値を更新しておりまだ下落余地を残している。50ポイント以下での推移中は一段安警戒とし、50ポイント超えからは反騰入りとみて60ポイント台へ迫る上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月7日未明安値149.09円を下値支持線、150.75円を上値抵抗線とする。
(2)150.50円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、149.09円割れからは148円台中盤(148.65円から148.35円)を試す下落を想定する。148.50円以下は反騰注意とするが、149.50円以下で押すか直前安値から0.70円を超える反騰がみられないうちは8日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)149.50円から149.75円手前にかけては戻り売り有利とするが、149.75円超えからは反騰継続とみて150円台回復を目指す上昇を想定する。

【当面の予定】

3/7(木)
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル (1月 753.4億ドル、予想 1037.0億ドル)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、講演、14:30 記者会見
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 8.9%、予想 -6.0%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 2.7%、予想 -6.0%)
22:15 (欧) 欧州中銀 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.2%、予想 3.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.5万人、予想 188.9万人)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -622億ドル、予想 -635億ドル)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、記者会見
24:00 (米) パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
25:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 (12月 15.6億ドル、予想 92.5億ドル)

3/8(金)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -2.5%、予想 -4.3%)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 1兆8100億円、予想 2兆744億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 7443億円、予想 -3304億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支・国際収支ベース (12月 1155億円、予想 -1兆5044億円)
14:00 (日) 1月 景気先行指数CI・速報値 (12月 110.2、予想 109.7)
14:00 (日) 1月 景気一致指数CI・速報値 (12月 115.9、予想 110.2)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断 (1月 50.2、予想 50.6)
14:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断 (1月 52.5、予想 52.2)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.7%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.0%、予想 -4.9%)
16:00 (独) 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 -1.2%、予想 -0.1%)

19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前期比 (改定値 0.0%、予想 0.0%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP・確定値 前年同期比 (改定値 0.1%、予想 0.1%)
21:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会
22:30 (米) 2月 非農業部門雇用者数 前月比 (1月 35.3万人、予想 19.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.6%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.5%、予想 4.3%)


注:ポイント要約は編集部

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