エルドアン大統領の強権発動に警戒、テクニカルでは反発を試す展開
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、突然のエルカン前トルコ中央銀行(トルコ中銀)総裁の辞任という波乱後、様子見姿勢の強い地合いとなった。
エルカン氏の後任であるカラハン・トルコ中銀新総裁が「物価安定を達成するまでは現状の金融引き締めを維持する」と発言したことから、エルカン体制(金融政策の正常化方針)が継続されるとの安心感が高まりトルコリラ売りは回避。トルコリラは4.8円から4.9円でのもみ合いが継続した。
ただ、5日16時に発表された1月の消費者物価指数(CPI)は、市場予想(対前月比6.5%増)を上回る同6.7%増。コアは対前年比70.48%増とこちらも市場予想(同68.35%増)を上回った。
シムシェキ財務相は「1月CPI上振れは一時的な要因によるもので、2月以降は顕著に減速すると見込んでいる」と発言。トルコリラは週末にかけて4.9503円まで上昇する場面が見られたものの、買いは続かず、結局4.8586円で取引を終えた。
トルコ・円(東京時間:2月5日―2月9日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.8660円
高値:4.9503円
安値:4.8147円
終値:4.8586円
【先週と今週の重要指標】※時間は東京時間
2月5日
16時00分、1月CPI(前月比)、前回:2.93%、市場予想:6.50%、結果:6.7%
16時00分、1月CPI(前年比)、前回:64.77%、市場予想:64.56%、結果:64.86%
16時00分、1月CPIコア(前年比)、前回:70.64%、市場予想:68.35%、結果:70.48%
16時00分、1月PPI(前月比)、前回:1.14%、結果:4.14%
16時00分、1月PPI(前年比)、前回:44.22%、結果:44.20%
2月9日
16時00分、12月鉱工業生産(前月比)、前回:−1.4%、結果:2.4%
16時00分、12月鉱工業生産(前年比)、前回:0.2%、結果:1.6%
2月12日
16時00分、12月失業率、前回:9.0%
2月13日
16時00分、12月経常収支、前回:−27.2億ドル、市場予想:−33.0億ドル
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、トルコ中銀の方向性を気にしながらもテクニカルリバウンドを試す展開となりそうだ。
トルコ中銀新総裁のカラハン氏は、元ニューヨーク連銀エコノミストで、エルカン体制が進めた「インフレに対しては金融引き締めを実施するというオーソドックスな金融政策運営」を継承するとの見通しだが、エルドアン大統領の本心はわからない。
エルドアン政権の支持母体である建設・不動産業界は金融引き締めに対して否定的な立場である。昨年5月末に行われた大統領選挙で、エルドアン氏は野党クルチダルオール氏に52.16%対47.84%の僅差で勝利した。(開票率99.85%時点)
そのわずか10日後の6月8日、エルドアン大統領はエルカン氏をトルコ中銀総裁に任命した。僅差で大統領選挙をクリアしたエルドアン大統領が、オーソドックスな金融政策を実施する路線に転換したことから、トルコ中銀の政策金利は昨年6月の8.5%から1月の45.0%まで一気に駆け上がった。そして、1月会合において、利上げ終了を示唆する一方、早期の利下げ転換についても否定的な見解を示した。
市場では、今回のトルコ中銀総裁交代のタイミングで、エルドアン大統領の強い意向(インフレは利下げによって抑えることができる)を示し、政策再転換するのではないか?という警戒感が浮上している。大統領選挙後、自身の支持母体とどういった「握り」をしているのか気になるところだが、エルドアン大統領の強権発動の有無に今しばらく警戒したいところだ。
しかしながら、テクニカル面では好転しそうな状況を迎えている。上影(上ヒゲ)示現ながらも、上値抵抗線として意識されていた50日移動平均線を上抜ける場面が見られたほか、日足の一目均衡表の雲への突入も試している。
また、1月3日の史上最安値4.7396円と1月12日安値、2月2日安値を結んだ下値支持線と、昨年8月24日の高値5.8005円を起点とした上値抵抗線を結んだ三角保合い上放れを試す展開も迎えている。
日足の一目均衡表の雲突入、上値抵抗線の50日移動平均線、三角保合いと、テクニカルではトルコリラは重要な局面を迎えている。このタイミングで上放れると、心理的な節目である5.0円、雲上限や切り下がってくる100日移動平均線の5.05円水準辺りが短期的な反発の上値メドとなろう。
トルコリラ円日足
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