米雇用統計をサプライズとしてドル円とともに反騰
〇トルコ円、米雇用統計発表後のドル円急伸を受け2/3未明に4.88へ反騰、取引終了前に一時4.89つける
〇対ドル、2/2は概ね30.60から30.24の取引レンジ、エルカン総裁突然の辞任に30.60へ史上最安値更新
〇エルカン氏の後任は副総裁のカラハン氏、シムシェキ財務相は金融政策正常化の継続を強調
〇トルコ円、当面はドル円の方向性見定めつつ、トルコ中銀新体制の姿勢を値踏みする展開か
〇本日は1月トルコインフレ指標の発表予定、高止まり見込まれる
〇4.84を上回るうちは一段高余地ありとし、4.89超えからは4.90台序盤への上昇を想定
〇4.84割れからは4.82、4.80を順次試してゆく下落を想定
【概況】
トルコリラ円の2月2日は概ね4.89円から4.76円の取引レンジ、2月3日早朝の終値は4.85円で前日終値の4.81円からは0.04円の円安リラ高だった。
トルコ中銀のエルカン総裁が突然辞任したことによりドル/トルコリラでは史上最安値を更新するリラ安となったが、トルコリラ円は米雇用統計発表後にドル円が急伸したのを追いかけて反騰した。
2月2日夜発表の米1月雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想の18.0万人増を大幅に上回る35.3万人増となりインフレ指標である平均時給伸び率が前年比4.5%で12月の4.3%を上回ったことで米国の利下げ開始先送り感が強まりドル全面高の様相となり、ドル円は発表前の146.50円台から3日未明高値148.58円へ急伸した。
トルコリラ円の2月2日は午前の一時的安値で4.76円を付けたのを除けば4.80円から4.82円までのレンジで推移していたが、ドル円の急伸により3日未明に4.88円へ急伸、取引終了前には一時4.89円を付ける場面も見られた。
2月5日早朝には一時4.84円まで下げたものの早々の4.87円前後まで戻している。
【ドル円の一段高で右肩下がりの展開から抜け出せるか】
トルコリラ円は昨年12月29日に4.70円まで史上最安値を更新してからドル円の反騰に合わせて上昇期に入り、1月24日には4.95円まで高値を切り上げてきたが、その後はドル円の上昇が頭打ちとなる一方でドル高リラ安が進行したために戻り高値とその後の安値を切り下げる右肩下がりの展開に入ってきた。
2月2日の反騰をきっかけとしてドル円が昨年末以降の高値更新へ進むなら、トルコリラ円もドル高リラ安を気にしつつもドル円の上昇を追いかけて4.90円台回復から1月24日高値超えへ進む可能性も開けると思われるが、ドル円の反騰が続かずに一段高へ進み切れない場合はドル円の修正安=円高とドル高リラ安の継続によりトルコリラ円は右肩下がりの展開から抜け出せずに再び史上最安値更新を目指して行くことにもなりかねないところだ。
米国の利下げ開始時期については3月利下げの期待は大幅に後退して可能性が低くなったが、今後数週ないし数か月のデータにより早ければ4月30−5月1日の会合で、遅くとも6月11−12日の会合で利下げが決定される可能性が高いと思われる。利下げを急ぐ必要は切迫していないが利下げを躊躇することによる景気悪化リスクが付きまとっているからだ。一方で日銀はマイナス金利解除へ進めずにいるもののそのタイミングをうかがっている。
ドル円が150円に迫るなら米国の利下げ先送り感を優先した上昇を継続しやすく、149円前後までで頭打ちが続くならいずれ利下げが始まり日銀のマイナス金利解除へのステップも進むとの見方を優先して円高へ向かう可能性が高まる。トルコリラ円としても当面はドル円がいずれの方向へ進むのかを見定めつつ、トルコ中銀の新体制の姿勢を値踏みする展開に入ると思われる。
【ドル/トルコリラは史上最安値更新】
ドル/トルコリラの2月2日は概ね30.60リラから30.24リラの取引レンジ、3日早朝の終値は30.40リラで前日終値の30.27リラから0.13リラのドル高リラ安だった。週間では1月26日終値30.27リラから0.13リラのドル高リラ安。
1月25日にトルコ中銀が2.5%の追加利上げを決定して政策金利を45.0%とした上でインフレ対策としての利上げ終了を示唆したために、市場は利上げ終了を不服として追加利上げ催促のリラ売りへ進み、1月26日には30.57リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新した。その後は新たな最安値更新を回避していたものの、2月2日はトルコ中銀のエルカン総裁辞任報道もありリラ安継続への不安が拡大したために30.60リラへ史上最安値を更新、終値ベースでも1月30日の30.33リラを超えて最安値を更新した。
週足ベースでは12月15日の週から8週連続で週末値ベースの史上最安値を更新し、2週連続で取引時間中の最安値を更新した。月間ベースでは2022年9月から今年1月まで17か月連続で史上最安値を更新、2月2日に最安値を更新したことで18か月連続の最安値更新となっている。
トルコ中銀のエルカン総裁が突然辞任したことにより、新総裁体制がエルカン総裁時代の金融政策姿勢を継続できるのかどうか、市場は不安にさいなまれることになる。今週は2月5日に1月のトルコインフレ指標の発表があり、CPI(消費者物価指数)の上昇率については全体の前月比が12月の2.93%から6.49%へ加速し、前年比は64.52%で12月の64.77%から若干低下するものの高止まりと見込まれている。
【トルコ中銀のエルカン総裁が辞任】
2月2日にトルコ中銀のエルカン総裁が辞任した。総裁を巡っては家族への便宜供与疑惑がメディアで取り上げられて批判されており、エルカン氏は「私の人格を抹殺する試みが最近行われている。家族と子供を守るため、大統領に辞任を申し出た」と述べた。エルカン氏とともにトルコ金融政策の正常化プロセスを体現してきたシムシェキ財務相は「エルカン氏の辞任は個人的な決定であり尊重する。我々の経済プログラムは間断なく続く」と述べて金融政策正常化の継続を強調した。
エルドアン大統領はエルカン氏の後任にファティ・カラハン氏を任命した。カラハン氏は2012年にニューヨーク連銀でエコノミストなり、2023年に米オンライン小売大手アマゾンに入社して7月からはシニアエコノミストとなった。
エルドアン大統領は過去にインフレとリラ安抑制のために利上げを強行した中銀総裁を繰り返し解任してきた経緯がある。昨年5月末に大統領三選を果たしてからは低金利がインフレを抑制するとの自説を引っ込めてエルカン総裁を採用して大幅利上げを見守ってきた。今回の辞任がエルドアン大統領による解任で金融政策に変更があるのか、エルカン氏が言うような個人的な理由による辞任で金融政策は継続するのか、今後の大統領や新総裁による発言を見ながら判断してゆくことになると思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、2月1日早朝へ下落後にいったん戻してから再び失速したため、2月1日午前時点では1月31日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして2月2日午前から6日午前にかけての間への下落を想定した。
2月2日午前に一時的安値で4.76円を付けてから3日早朝へ急騰したため、2日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。サイクルトップ形成期は2月3日早朝から7日未明にかけての間とするが、4.84円割れを弱気転換注意とし、4.82円割れからは弱気サイクル入りとして7日午前から9日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では2月3日早朝への急伸で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いたため、遅行スパン好転中の高値試し優先とする。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開の可能性もあるとみるが、遅行スパン悪化からは下落再開を疑い安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まると注意する。
60分足の相対力指数は2月3日未明への上昇時に70ポイントを超え、その後も60ポイント以上を維持している。相場が高値更新する際に指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられる場合は反落警戒とし、50ポイント割れからは下落期入りとして30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.84円を下値支持線、4.89円を上値抵抗線とする。
(2)4.84円を上回るうちは一段高余地ありとし、4.89円超えからは4.90円台序盤(4.90円から4.92円手前)への上昇を想定する。4.91円以上は反落警戒とするが、4.84円を上回っての推移なら6日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)4.84円割れからは4.82円、4.80円を順次試してゆく下落を想定する。4.80円前後は反騰注意とするが、4.84円を下回っての推移なら6日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
2月5日
16:00 1月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (12月 2.93%、予想 6.49%)
16:00 1月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (12月 64.77%、予想 64.52%)
16:00 1月 コアCPI 前月比 (12月 2.3%)
16:00 1月 コアCPI 前年同月比 (12月 70.6%)
16:00 1月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (12月 1.14%)
16:00 1月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (12月 44.22%)
2月8日
20:30 週次 外貨準備高 2月2日時点 グロス (1月26日時点 891.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 2月2日時点 ネット (1月26日時点 306.8億ドル)
2月9日
16:00 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -1.4%)
16:00 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 0.2%)
注:ポイント要約は編集部
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