突然のエルカン氏辞任でトルコリラは正念場を迎える
先週のトルコリラは、1月12日以来となる史上最安値圏である4.7円台を付けるなど弱い動きが続いた。
2日の1月米雇用統計が市場予想を大幅に上振れたことから、ドル高円安が進行。トルコリラもこの流れにつられ、4.86円まで持ち直した。
ただ、米雇用統計前の16時に発表した1月製造業PMIは49.2と前回47.4を大きく上回る結果となったが、発表後、目立った動きは見られず。良好な自国経済指標が発表されても、トルコリラ買いが入らないことから猜疑心の強い地合いとなっている様子。
なお、東京時間3日未明、トルコ中央銀行のエルカン総裁は突如、辞任を表明した。エルドアン大統領は、後任に副総裁のカラハン氏を指名。体制としては、エルカン氏が行っていたオーソドックスな経済政策を継続することを示唆しているが、わずか8カ月の辞任にトルコリラは動揺。対ドルでは、1ドル30.4885リラと終値ベースでは史上最安値を更新した。
トルコ・円(東京時間:1月29日―2月2日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.8971円
高値:4.9095円
安値:4.7881円
終値:4.8600円
【今週の重要指標】※時間は東京時間
2月5日
16時00分、1月CPI(前月比)、前回:2.93%、市場予想:6.50%
16時00分、1月CPI(前年比)、前回:64.77%、市場予想:64.56%
16時00分、1月CPIコア(前年比)、前回:70.64%、市場予想:68.35%
16時00分、1月PPI(前月比)、前回:1.14%
16時00分、1月PPI(前年比)、前回:44.22%
2月9日
16時00分、12月鉱工業生産(前月比)、前回:−1.4%
16時00分、12月鉱工業生産(前年比)、前回:0.2%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、トルコ中銀総裁の突然の交代の影響を見極める必要がある。
エルカン氏は、個人のX(旧ツイッター)に、自身に対する中傷キャンペーンに直面しており、幼い子供を含む家族を守るために辞任するという説明を書きこんだ。一部メディアは、エルカン氏の父親がトルコ中銀勤務ではないのにも関わらず、業務に深く関与しているとの疑惑を報じていた。
エルドアン大統領がカラハン中銀副総裁を後任に指名したことから、エルドアン大統領独自の金融政策「利下げを行えばインフレは収まる」ではなく、既存のエルカン路線「利上げでインフレを抑える」で進むことは少なくても継続されそうだ。
ユルマズ副大統領も「トルコの中期計画は引き続き断固として実施される」と自身のXに投稿していることから、大きな路線変更に伴うトルコリラの混乱は回避される見通しだ。
一方、週初に消費者物価指数(CPI)が発表されることから、カラハン新総裁は、早速トルコリラの史上最安値更新という厳しい洗礼を浴びる可能性がある。既に対ドルの終値ベースでは史上最安値を更新したことから、カラハン新総裁は厳しい船出となろう。
テクニカルでは、50日移動平均線に上値を抑えられた状況が10日ほど続いている。上影(上ヒゲ)連発で上値を切り下げていることからトレンドの弱さがうかがえる。
日足の一目均衡表で三役逆転が示現しているが、遅行スパンが実線をとらえる可能性もある。切り下がってきた雲下限に届きそう状況ではあるが、1月3日の史上最安値4.7396円更新を試しそうな状況か。
トルコ中銀総裁はこの5年間で6人目となった。今回、「家族を守るため」という思わぬトルコ中銀トップの交代を迎えたトルコリラは、正念場を迎えている。
トルコ円日足
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