『ムーディーズの格付見通し上方修正を受けて反発。トルコ中銀会合に注目』
〇今週のトルコ円、週央にかけて、週間高値4.94円まで上昇、底堅く推移
〇ムーディーズによるトルコ格付け見通しの上方修正、投資家向け説明会を好感した資金流入期待が背景
〇テクニカルには転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを上抜け地合い好転
〇ファンダメンタルズはトルコ経済先行き不透明感、インフレ昂進懸念等が重石
〇引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週はリスクシナリオ顕在化(トルコリラ円上昇)の可能性にも念のため注意が必要
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):4.70ー5.00
今週のレビュー(1/15−1/19)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初4.81円で寄り付いた後、早々に週間安値4.80円まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)ムーディーズによる先週末のトルコ格付け見通しの上方修正(ステーブルからポジティブへの引き上げ)や、(2)エルカン総裁による先週の投資家向け説明会(米ニューヨークで1/11ー1/12に開催)を好感した資金流入期待、(3)トルコ11月住宅価格指数(結果+82.84%、前回+86.46%、※前年比)の前回比鈍化、(4)トルコ株の底堅い動き、(5)ドル円相場の堅調推移(ドル円上昇→トルコリラ円連れ高)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値4.94円まで上昇しました。週末にかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間1/20午前2時30分現在)では、4.90円前後で推移しております。
来週の見通し(1/22−1/26)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は、1/3に記録した史上最安値4.73円をボトムに切り返すと、今週半ばにかけて、一時4.94円まで反発しました。この間、日足ローソク足が一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを上抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を期待させるチャート形状となりつつあります。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)トルコ経済の先行き不透明感や、(2)トルコ国内のインフレ昂進リスク(トルコ中銀による懸命の利上げを受けても尚インフレ抑制に繋がっていないことに対する失望感)、(3)トルコリラの実質金利のマイナス幅拡大(政策金利42.5%に対してCPIは64.9%と実質金利は▲22.4%→構造的なリラ売り要因)、(4)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米金利上昇→トルコリラ下落の波及経路)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。一方、メインシナリオに対するリスクシナリオ(トルコリラ円相場が予想に反して上昇するリスク)としては、トルコ政府・中銀による継続的な正常化路線を好感した資金流入再開の可能性が挙げられます(トルコは失われた信用を取り戻すべく、昨年6月にシムシェキ財務相とエルカン総裁主導の正常化政策に転換→大手格付け機関が相次いでトルコ格付けの見通しの上方修正を実施→先週1/11ー1/12に米ニューヨークで開催された投資家向け説明会も海外投資家の評価は良好→ピムコやバンガードも昨年終盤にトルコ市場へ復帰するなど外国人投資家による資金流入が再開する素地が整いつつある)。
事実、ムーディーズも先週末にトルコ格付け見通しの上方修正(ステーブルからポジティブへの引き上げ)を実施しました。来週1/25に予定されているトルコ中銀会合にて、インフレ抑制に向けた強い意志(エルドアン大統領に配慮せず、インフレが抑制されるまで積極的な利上げを続ける中銀の姿勢)が示されれば、トルコリラ相場への資金流入が活発化する恐れもあるため、来週はリスクシナリオ顕在化(トルコリラ円上昇)の可能性にも念のため注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(TRYJPY):4.70ー5.00
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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