『ドル買い・円売りの流れが止まらず。来週は日銀会合と米GDPに注目』
〇今週のドル円、週末にかけて週間高値148.81まで急伸、148円台前半で越週
〇円金利の低下、FRB関係者のタカ派発言、相次いだ米指標の好調と米長期金利の上昇が背景
〇ユーロドル、1.08台に下落欧州指標の不冴え、ECB関係者のハト派発言等が重石に
〇ドル円、主要テクニカルポイントを上抜け、強い買いシグナルも実現、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の違いと円キャリートレード再開期待等がサポート
〇来週は1/23に発表される日銀金融政策決定会合と、植田日銀総裁記者会見に注目
〇日銀金融政策決定会合後の反応は素直に「円売り」か
〇引き続きドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー151.00、(EURUSD):1.0700−1.1000
今週のレビュー(1/15−1/19)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初144.91で寄り付いた後、早々に週間安値144.87まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)円金利低下に伴う円売り圧力(本邦2年債利回りが昨年7月以来のマイナス圏へ下落)や、(2)ウォラーFRB理事による「以前ほど迅速に利下げを行う必要はない」「利下げを開始した場合でも秩序だって行うべき」との市場で燻る早期利下げ期待を牽制する発言、(3)テクニカル的な地合いの強さ(一目均衡表雲上限および90日移動平均線の上方ブレイク)、(4)米12月小売売上高(結果+0.6%、予想+0.4%)および、除く自動車(結果+0.4%、予想+0.2%)の市場予想を上回る結果、(5)米12月鉱工業生産(結果+0.1%、予想▲0.1%)の市場予想を上回る結果、(6)米1月NAHB住宅市場指数(結果44、予想39)の市場予想を上回る結果、(7)米新規失業保険申請件数(結果18.7万件、予想20.5万件)の力強い結果や、
(8)米12月建設許可件数(結果149.5万件、予想147.7万件)の市場予想を上回る結果、(9)米12月住宅着工件数(結果146.0万件、予想142.5万件)の市場予想を上回る結果、(10)アトランタ連銀ボスティック総裁による「最悪なのは利下げしてから再び利上げしなければならない事態に追い込まれること」との早期利下げ実施に慎重な発言、(11)米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りは昨年12/13以来の高水準となる4.20%へ急上昇)、(12)本邦12月消費者物価指数(結果2.6%、予想2.7%、前回2.8%)の市場予想を下回る結果(日銀による早期マイナス金利解除観測の後退)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値148.81まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間1/20午前4時00分現在)では、148.27前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0955で寄り付いた後、早々に週間高値1.0969まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ユーロ圏11月鉱工業生産(結果▲6.8%、予想▲6.0%)の市場予想を下回る結果や、(2)欧州株の冴えない動き、(3)心理的節目1.0900を割り込んだことに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買い、(4)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「我々の次の行動は利下げとなるだろう」「金利は現在の水準より高くなるべきではない」とのハト派的な発言、(5)ECB月次調査による1年先期待インフレ率(結果3.2%、前回4.0%)および、3年先期待インフレ率(結果2.2%、前回2.5%)の急低下、(6)ウォラーFRB理事による「以前ほど迅速に利下げを行う必要はない」「利下げを開始した場合でも秩序だって行うべき」との早期利下げに慎重な発言、(7)米経済指標の力強い結果、(8)上記6、7を背景とした米長期金利の急上昇(ドル全面高)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0844まで下落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、週末にかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間1/20午前4時00分現在)では、1.0892前後で推移しております。尚、今週はオーストリア中銀ホルツマン総裁による「2024年の利下げを想定するべきではない」「利下げについて議論する理由がない」との発言や、ドイツ連銀ナーゲル総裁による「利下げ協議は時期尚早」「インフレはまだ高すぎる」との発言に加えて、ラガルドECB総裁や、オランダ中銀クノット総裁、スロベニア中銀バスレ総裁などからもタカ派的な発言(市場で燻る早期利下げ期待を牽制する発言)が相次ぎましたが、市場の反応は限られました。
来週の見通し(1/22−1/26)
<ドル円相場>
ドル円は昨年12/28に記録した安値140.25(昨年7/28以来、約5カ月ぶり安値圏)をボトムに切り返すと、今週末にかけて、一時148.81(昨年11/28以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、一目均衡表基準線、一目均衡表雲上下限)を軒並み上抜けしたことや、市場参加者に意識されていた昨年11/13高値151.91と昨年12/28安値140.25を起点としたフィボナッチ半値戻し(146.08)や同61.8%戻し(147.46)を達成したこと、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のバンドウォーク」「21日線と200日線のゴールデンクロス」が実現したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて強いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀によるマイナス金利解除時期の後ずれ観測(年始に発生した能登半島地震の影響や、実質賃金悪化の影響、CPI鈍化の影響などを受けて、マイナス金利解除時期が予想よりも大幅に後ずれするとの思惑浮上→対主要通貨での円売り安心感)や、(2)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(良好な米経済指標や、米当局者によるタカ派的な発言を受けて、米FRBによる利下げ開始時期が予想よりも大幅に後ずれするとの思惑浮上→対主要通貨でのドル買い安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違いとそれに伴う円キャリートレード再開期待(日米金利差拡大に着目したドル買い・円売り)、(4)本邦個人投資家による恒常的なドル買い・円売り需要(新NISA開始に伴う米株投資の活発化→本邦個人投資家による外貨転需要の急拡大)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記1を見極める目的で、1/23に発表される日銀金融政策決定会合と、植田日銀総裁記者会見に注目が集まります。上述の通り、能登半島地震や実質賃金悪化の影響などから来週の会合でのマイナス金利解除の可能性はほぼ無くなったと見られている他、植田日銀総裁からも早期マイナス金利解除を期待させる発言(先月出てきたようなチャレンジング発言)は手控えられる可能性が高いと考えられます(春闘結果を見極めるまでは様子見姿勢を続けるといったスタンスを強調する可能性大)。このため、日銀金融政策決定会合後の反応は素直に「円売り」となりそうです。
また、来週は1/25に発表される米10ー12月期GDP速報値にも注目が集まります。アトランタ連銀が公表するGDPNowが示す通り堅調な結果が明らかとなれば、米FRBによる早期利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買いの経路でドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(市場は依然として3月FOMCでの利下げ着手を46.2%も織り込んでいるため、来週はこの46.2%分を吐き出す中で、昨年11/13に記録した高値151.91への全値戻しに向かって一段と上値を伸ばすシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):146.50ー151.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、12/28に記録した約5ヵ月ぶり高値1.1141をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、一時1.0844(昨年12/13以来の安値圏)まで下落しました。この間、日足ローソク足が一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(今週発表された欧州12月新車販売台数は前年同月比▲3.3%と16カ月ぶりのマイナス転落)や、(2)ECBによる根強い早期利下げ観測(ECB当局者からは市場で燻る早期利下げ期待を強く牽制する発言が相次ぎましたが、インフレ圧力の鈍化傾向が強まる中で、市場では依然として4−6月の利下げ開始を織り込む動きが根強い)、(3)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米金利上昇→対主要通貨ドル全面高)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は上記1を確認する目的で、1/24に予定されている欧州各国のPMI速報値や、1/25のドイツ1月IFO景況指数に注目が集まる他、上記2を見極める目的で、1/25に開催されるECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見に注目が集まります。前者(欧州経済指標)については、市場予想を下回る可能性が高いことから、欧州経済の先行き不透明感を通じて、ユーロドルに下押し圧力を加えそうです。一方、後者については、声明文、ラガルドECB総裁記者会見共に、利下げ開始時期のヒントを発する可能性は乏しい(利下げ議論は時期尚早。インフレデータや賃金データをじっくり見てから判断するといったスタンスを続ける公算が大きい)と考えられることから、ユーロドルに与える影響は限られそうです。
以上を踏まえ、来週は、「テクニカル的な地合いの弱さ」+「欧州経済指標の下振れを通じた欧州経済の先行き不透明感再燃」+「米FRBによる利下げ開示時期の後ずれ観測を通じたドル全面高の流れの継続」を材料に、ユーロドルが一段と下げ足を速める展開をメインシナリオとして予想いたします(1.08台半ばに位置する一目均衡表雲上限を割り込めば、ロスカット主導で1.07台半ばまで一気に下落する恐れあり)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0700−1.1000
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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