ドル円週間見通し 年初から3週連続上昇、昨年末の下げ幅に対して7割強を戻す(24/1/22)

米国の早期利下げ期待が後退したことによるドル買いや日銀のマイナス金利解除が先送りされるとの見方による円売りについてはある程度織り込まれてきたともいえる。

ドル円週間見通し 年初から3週連続上昇、昨年末の下げ幅に対して7割強を戻す(24/1/22)

ドル円週間見通し 年初から3週連続上昇、昨年末の下げ幅に対して7割強を戻す

〇先週のドル円、年初から三週連続上昇で148円台に達する
〇FRB関係者のタカ派的発言、小売売上高、ミシガン大消費者信頼感等の米指標の好転等が背景
〇米10年債利回りは19日に4.20%まで上昇後失速して4.13%で終了
〇NYダウは遅れたとしてもいずれ利下げが始まるとの楽観に史上最高値を37933.73ドルまで伸ばす
〇米国の早期利下げ期待後退、日銀のマイナス金利解除先送りはある程度織り込まれ、上昇一巡の可能性も
〇147.63を上回るうちは一段高余地ありとし、148.80超えからは149円台前半への上昇を想定
〇147.63割れからはいったん調整安に入るとみて147円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は12月29日未明の28日付け安値140.24円からの上昇を継続し、19日午後には148.80円まで高値を伸ばした。この間の上昇幅は8.56円となったが、11月13日高値から12月28日までの下げ幅11.66円に対して凡そ73%を戻した。
昨年末からの上昇は米国の3月利下げ開始期待の後退による米長期債利回り上昇が主要因だが、1月1日発生の能登半島地震の影響を考慮して日銀のマイナス金利解除等が先送りされるとの見方による円売りも寄与してきた。先週は1月16日にウォラーFRB理事が利下げを急ぐ必要はないと強調する発言を行い、17日の米小売売上高等が予想を上回る堅調さだったことで148円台に到達し、1月19日午後に148.80円まで高値を伸ばした後は伸び悩みとなったものの148円割れを買われて確りし、1月のミシガン大消費者信頼感指数が予想を上回ったところでのドル高により19日夜安値147.81円から20日未明高値148.52円へ上昇するなど底固い動きで一段高状態を維持した。

【ミシガン大消費者信頼感指数が予想を大幅に上回る】

1月19日に米ミシガン大が発表した1月消費者信頼感指数速報値は市場予想の70.0を大幅に上回る78.8となり昨年12月の69.7から大幅上昇して2021年7月以来の高水準となった。これまでの金融引き締めにより景気後退が発生するリスクが高まれば米FRBも利下げを急ぐ必要に迫られるが、今のところの米景気は底固く一部は堅調な数字を示しているため、FRBとしては利下げを急ぐ必要に迫られていないことにもなる。
同大調査による1年先のインフレ期待は12月の3.1%から2.9%へ低下して2020年12月以来の低水準となり、5年先インフレ期待も12月の2.9%から2.8%へ低下した。インフレの鈍化傾向が消費者心理に反映されていることを示していることはこれまでの金融引き締め効果だが、FRBが目標とするインフレ率2%が持続的に実現するにはまだ時間もかかるため、拙速な利下げについては躊躇されやすいと思われる。

米不動産業者協会(NAR)による12月の中古住宅販売件数(年換算)は前月比1.0%減、前年同月比6.2%減の378万戸となり市場予想の382万戸を下回り2010年以来13年振りの低水準となった。2023年通年では前年比19%減の409万戸となり1995年以来28年振りの低水準だった。
FRBによる金融引き締めで住宅ローン金利が上昇したことによる買い控えが背景だが、住宅ローン金利は昨年秋に7%台後半へ上昇してから低下に転じており現時点では6%台後半となっているため、利下げが始まれば自ずと復調するのだろうと思われる。
モノのインフレとともに不動産もややバブル的な上昇だったが、不動産市況の過熱はひとまず冷やされており、不動産不況が深刻となり景気全般を冷やすような事態に陥らなければFRBが利下げを急ぐ動機にはならないだろう。

【FRB高官による早期利下げけん制発言続く】

1月19日にシカゴ連銀のグールズビー総裁は「FRBは利下げについて考え始めるべきだが、判断を下す前に向こう数週間の経済指標を見極める必要がある」と述べて早期利下げに慎重姿勢を示した。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も19日にインフレ率をFRBの目標とする2%まで低下させるためにはまだやるべきことがたくさん残っているとし、利下げが間近に迫っていると考えるのは「時期尚早」と述べて市場の早期利下げ期待をけん制した。
1月18日にはアトランタ連銀のボスティック総裁が、自身の利下げ開始予想につて従来の今年10−12月期から7−9月期に前倒ししたと述べたものの市場の3月利下げ期待には程遠いものだった。
FRBがインフレ指標として最重視しているコアPCE(個人消費支出)デフレーターについては、1月25日のGDP統計において四半期ベースの速報が示され、26日には12月の月次データが示される。それらの低下傾向が市場予想よりも鈍い場合は利下げ急がずとして米長期債利回り上昇とドル高を招き、予想以上の低下を示せば3月利下げへの期待が復調して米長期債利回り低下とドル安を招くと思われる。

【米長期債利回りはまちまち、ダウは史上最高値更新】

1月19日の米長期債利回りはまちまちの動きだったが週間では総じて上昇し、特に2年債利回りの反騰が目立った。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.01%低下の4.13%で終了、週間では1月12日終値3.94%から0.19%上昇だった。10月23日の5.02%をピークに早期利下げ期待により12月27日に3.78%まで大幅低下したが、年末から早期利下げ期待が徐々に後退したことで反騰入りし、連休明けの1月16日から18日へ3連騰となり19日は一時4.20%まで上昇していたものの連騰一服で失速した。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.33%で終了、週間では1月12日の4.18%から0.14%上昇した。
政策金利に敏感な2年債利回りは前日比0.03%上昇の4.39%となり、週間では1月12日の4.15%から0.24%上昇した。昨年10月19日の5.26%から大幅低下に転じて1月12日には一時4.12%まで低下したが、1月17日に0.15%上昇と急伸して19日も一時4.42%をつけて反騰を継続している。

一方、NYダウは前日比395.19ドル高と大幅上昇し、史上最高値を37933.73ドルまで伸ばし、ナスダック総合指数も255.32ポイント高の上昇で昨年12月28日高値を超えて2022年10月以降の最高値を更新した。株式市場にとっては米経済指標がしっかりする中でこれまでの金融引き締めによる景気後退への懸念は薄く、3月よりも遅れたとしてもいずれ利下げが始まるとして楽観的な先高期待が優勢だ。
米国主導の株高は為替市場のリスクオン心理を助長するため、米長期債利回り上昇とともにドル円を押し上げやすくなる。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は12月28日安値140.24円を起点とした上昇基調を維持している。すでに11月13日高値からの下げ幅に対して7割強を戻しており、これまでの上昇角度と値幅は昨年1月16日安値127.22円から3月8日高値137.91円へ上昇した時や、その後の3月24日安値からの上昇時、7月14日安値からの上昇時、遡れば2022年の8月2日安値130.41円から10月21日高値151.94円への上昇時にも匹敵する動きと思われる。
しかし、米国の早期利下げ期待が後退したことによるドル買いや日銀のマイナス金利解除が先送りされるとの見方による円売りについてはある程度織り込まれてきたともいえる。
2022年10月21日高値151.94円と2023年11月13日高値151.90円によるダブル天井が大きな抵抗となるであろうことも意識されるため、149円を超えて150円台を目指して行くにはより力強い推進力が必要と思われ、推進力に欠けるようだと昨年末からの上昇一巡でいったん仕切り直しの下落期に入る可能性もあると注意したい。

日足の一目均衡表では、反騰時の当初に上値抵抗線となりやすい26日基準線を突破し、遅行スパンが好転し、戻り抵抗帯となる先行スパンも突破してさらに続伸した状況にある。先行スパンを上回るうちは中勢のトレンドとして高値追及へ進みやすいとみるが、12月28日安値から17日目、11月13日高値から1月19日高値までが50日目となり、基本数値の17及び52を踏まえればいったん揺れ返しの下落が発生しても不思議ない日柄にあると注意したい。因みに昨年1月16日安値から3月24日安値までも50日だった。

日足の相対力指数は昨年12月序盤から12月28日にかけての下落時に指数のボトムがほぼフラットとなる強気逆行を見せてから上昇に転じて60ポイント台後半へ上昇してきた。日足レベルでは60ポイント以上を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇基調継続とするが、昨年3月8日への上昇時は70ポイント手前から失速しているので、55ポイント割れからは下向きとし、50ポイント割れからは戻り一巡による下落期入りとして40ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月18日夕安値147.63円を下値支持線、1月19日午後高値148.80円を上値抵抗線とする。
(2)147.63円を上回るうちは一段高余地ありとし、148.80円超えからは149円台前半への上昇を想定する。149.30円以上は反落注意とするが、1月25日の米GDP統計や26日の米PCE統計をきっかけとして急伸する場合は150円を目指す可能性もあるとみる。
(3)147.63円割れからはいったん調整安に入るとみて147円前後への下落を想定する。短期的には1月23日から25日にかけての間に安値を付けてから戻しやすいとみるが、その後に一段安する場合には1月末に向けて下落基調が延びるとみる。147円前後へ下落するところではいったん買われやすいとみるが、米GDPやPCE等をきっかけとして急落商状となる場合は146円台中盤へ下値目途を引き下げる。

【当面の予定】

1/22(月)
日銀・金融政策決定会合初日
24:00 (米) 12月 景気先行指標総合指数 前月比 (11月 -0.5%、予想 -0.3%)

1/23(火)
09:00 (日) 日銀金融政策決定会合、終了後政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
09:30 (豪) 12月 NAB企業景況感指数 (11月 9)
15:30 (日) 植田日銀総裁 記者会見
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感・速報値 (12月 -15.0)
24:00 (米) 1月 リッチモンド連銀製造業指数 (12月 -11)
27:00 (米) 財務省2年債入札

1/24(水)
06:45 (NZ) 10-12月期 CPI(消費者物価指数) 前期比 (7−9月 1.8%)
06:45 (NZ) 10-12月期 CPI(消費者物価指数) 前年同期比 (7−9月 5.6%)
08:50 (日) 12月 通関貿易収支・季調前 (11月 -7769億円)
08:50 (日) 12月 通関貿易収支・季調済 (11月 -4089億円)
17:30 (独) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 43.3)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 49.3)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 44.4)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 48.8)
18:30 (英) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 46.2)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 53.4)

23:45 (加) カナダ中銀 政策金利 (現行 5.00%、予想 5.00%)
23:45 (米) 1月 製造業PMI・速報値 (12月 47.9)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI・速報値 (12月 51.4)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省5年債入札

1/25(木)
休場 マレーシア
18:00 (独) 1月 IFO企業景況感指数 (12月 86.4)
22:15 (欧) ECB(欧州中銀) 政策金利 (現行 4.50%、予想 4.50%)
22:30 (米) 12月 卸売在庫 [前月比 (11月 -0.2%)
22:30 (米) 10-12月期 GDP・速報値 前期比年率 (7−9月 4.9%、予想 1.5%)
22:30 (米) 10-12月期GDP個人消費・速報値 前期比年率 (7−9月 3.1%)
22:30 (米) 10-12月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (7−9月 2.0%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注 前月比 (11月 5.4%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (11月 0.5%、予想 0.1%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.6万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数・年率換算 (11月 59.0万件、予想 65.0万件)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数 前月比 (11月 -12.2%、予想 10.2%)
27:00 (米) 財務省7年債入札

1/26(金)
休場 オーストラリア、インド
08:30 (日) 1月 東京区部CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 2.1%)
08:50 (日) 12月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (11月 2.3%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(12/18-19開催分)
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -22)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCE(個人消費支出) 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 2.6%)
22:30 (米) 12月 コアPCEデフレーター 前月比 (11月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 コアPCEデフレーター 前年同月比 (11月 3.2%、予想 2.9%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 0.0%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 -5.1%)

注:ポイント要約は編集部

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