円安一巡で5円に届かず下落、今夜のトルコ中銀利上げ幅に注目
〇トルコ円、ドル円の失速を追いかけ12/20夜に4.91、12/21午前は4.91を割り込む
〇日米金利差面では円高をぶり返しやすい状況、円高再燃に対しても要警戒
〇対ドル、12/21午前序盤は29.14から29.05のレンジで推移、最安値更新を伺う流れ
〇利上げ催促のリラ売りが進行か、今夜のトルコ中銀追加利上げ幅に市場は注目
〇政策金利が現行の40.0%から42.5%へ引き上げられても大幅な実質マイナス金利状態は変わらず
〇8月同様のサプライズとなるためには5.0%ないし7.5%の大幅利上げが必要
〇4.95を下回るうちは一段安警戒とし、4.90割れからは4.87、4.85を順次試して行く下落を想定
〇4.95超えからは上昇再開とみて4.97、4.99を試して行く上昇を想定
【概況】
トルコリラ円の12月20日は概ね4.95円から4.91円の取引レンジ、21日早朝の終値は4.92円で前日終値の4.94円から0.02円の円高リラ安だった。
12月19日の日銀金融政策決定会合で金融緩和政策の現状維持が決定され、マイナス金利解除やYCC(長短金利操作)の撤廃等の出口戦略へ向けた前傾姿勢が示されなかったことでドル円は142円台序盤から急伸して19日夜に144.95円まで高値を伸ばしたが、円売りが一巡して145円には届かず、20日は欧米長期債利回りが揃って低下する中でユーロやポンドが下落してドル高となったものの、ドル円は米長期債利回り低下とユーロ円やポンド円での円高により143円台序盤へ失速した。
トルコリラ円は日銀会合前の安値4.89円から急伸して19日夜には4.98円まで高値を伸ばしたが、5円台には届かずにドル円の失速を追いかけて20日未明に4.93円へ下落し、20日夜には4.91円まで安値を切り下げた。21日未明にかけて4.93円まで一時的に戻したものの21日午前には4.91円を割り込んで19日夜以降の安値を更新している。
日銀が金融緩和からの出口戦略について実質的にゼロ回答だったことで円安反応を招いたが、米国は早ければ来年3月にも利下げ開始へ向かうとの見方が強まっており、米10年債利回りは10月23日以降の低下基調を続けているため、日米金利差面では円高をぶり返しやすい状況にあると思われる。12月14日にかけての急激な円高商状を再開する懸念は後退しつつも、トルコリラ円としては円高再燃に対しても警戒しておく必要がありそうだ。
【対ドルでは連日の史上最安値更新】
ドル/トルコリラの12月20日は概ね29.14リラから28.89リラの取引レンジ、21日早朝の終値は29.11リラで前日終値の29.07リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
12月に入ってからドル高リラ安のペースはやや鈍っていたものの、12月21日夜のトルコ中銀金融政策委員会での利上げを催促するようにリラ売りが進行し、12月19日に29.10リラを付けて取引時間中の史上最安値を更新していたが、20日も29.14リラへ最安値を更新した。終値ベースでは12月18日終値29.04リラで12月14日終値28.97リラを抜き、19日から20日への続落で3営業日連続の最安値更新となった。
12月21日午前序盤は29.14リラから29.05リラのレンジで推移しており、最安値更新を伺う流れが続いている。
12月20日夕刻発表のトルコ12月消費者信頼感指数は77.4となり11月の75.5から改善したが市場の反応は鈍かった。
【12月21日夜、トルコ中銀の追加利上げ幅に注目集まる】
12月21日20時にトルコ中銀MPC(金融政策委員会)が政策金利を発表する。エルドアン大統領三選後に就任したエルカン総裁体制となってからトルコ中銀は政策金利の週間レポレートをそれまでの8.5%から11月には40.0%まで大幅に引き上げてきた。6会合連続利上げであり、中銀はインフレ鎮静化のための利上げを継続する姿勢を繰り返し示してきたが、11月会合では利上げサイクルの終了期に近付いているとの認識を示している。
今回の会合では2.5%の追加利上げ予想で衆目が一致しているが、12月4日に発表された11月のトルコCPI(消費者物価指数)は前月比3.28%(10月は3.43%)、前年比が61.98%(10月は61.36%)であり、政策金利が現行の40.0%から42.5%へ引き上げられても大幅な実質マイナス金利状態は改善しない。
年明けのインフレ率が顕著に鈍化すれば利上げを続けてきたことの効果も見え始めると思われるが、まだ利上げが足りないと市場は見ているから対ドルでトルコリラの史上最安値更新が収まらないということだろう。
トルコ中銀は8月24日の会合で市場予想が2.5%利上げだったところで7.5%利上げを決定したためにサプライズ効果でトルコリラは発表当日に急騰したが、翌日からはドル高リラ安が再開して9月22日には当時の史上最安値を更新している。今回もサプライズとなるためには5.0%ないし7.5%の大幅利上げが必要と思われる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、日銀会合後の円安で12月18日深夜高値を上抜いたために20日午前時点では19日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして21日夜から26日午前にかけての間への上昇を想定したが、20日未明安値4.93円割れからは下向きとし、4.91円割れからは弱気サイクル入りとした。
12月21日午前に4.91円を割り込んだため、19日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして22日午前から26日午前にかけての間への下落を想定する。ただし、4.95円を超える反騰となる場合は直前安値をボトムとした強気サイクル入りと改めて22日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では12月20日午後への下落で遅行スパンが悪化し、21日午前には先行スパンから転落したため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。4.95円を超えないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下落再開とするが、4.95円超えからは先行スパンも上回るため上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は19日夜に70ポイント台へ上昇してから20日夕に30ポイント台へ低下し、いったん50ポイントを超えたものの21日午前には50ポイントを再び割り込んでいる。55ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定するが、55ポイント超えからは上向きとして60ポイント台前半への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、4.90円を下値支持線、4.95円を上値抵抗線とする。
(2)4.95円を下回るうちは一段安警戒とし、4.90円割れからは4.87円、4.85円を順次試して行く下落を想定する。4.85円以下は反騰注意とするが、4.94円を下回っての推移中か、直前安値から0.05円を超える反騰がみられないうちは22日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)4.95円超えからは上昇再開とみて4.97円、4.99円を試して行く上昇を想定する。4.95円以上での推移なら22日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12月21日
20:00 トルコ中銀MPC(金融政策委員会) 政策金利 (現行 40.0% 予想 42.5%)
20:30 週次 外貨準備高 12月15日時点 グロス (12月8日時点 945.1億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12月15日時点 ネット (12月8日時点 381.5億ドル)
12月22日
17:00 11月 海外観光客数 前年同月比 (10月 3.8%)
12月26日
16:00 12月 製造業景況感 (11月 100.2)
16:00 12月 設備稼働率 (11月 78.0%)
注:ポイント要約は編集部
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