ドル円見通し 日銀会合後の円安一巡、米長期債利回り低下で軟調推移(23/12/21)

ドル円、12月20日の日中から21日早朝にかけても軟調推移となり、夜安値で143.26円を付けたところからの戻りでは144円に届かず、21日午前序盤は143円台前半で推移している

ドル円見通し 日銀会合後の円安一巡、米長期債利回り低下で軟調推移(23/12/21)

日銀会合後の円安一巡、米長期債利回り低下で軟調推移

〇ドル円、12/20未明に143.52へ失速後、12/20日中から12/21早朝にかけても軟調推移
〇日銀会合後の円安が一巡し、12/19夜高値144.95を目先のピークとして下落期入りか
〇欧英中銀による利上げ終了と来年の利下げへの期待が強まり、独・英等の長期債利回り低下
〇それを受けたユーロ、ポンドの下落によるドル高感がドル円の下値を支えた側面も
〇12/20夜発表の米経済指標は総じて強く、ドル高に寄与
〇144円以下での推移中は下向きとし、143円割れからは142円台中盤への下落を想定
〇144.50超えからは上昇再開とみて12/19夜高値144.95及び145円到達を目指す上昇を想定

【概況】

ドル円は12月19日の日銀金融政策決定会合で大規模金融緩和が現状維持とされ植田総裁が会見で出口戦略に対する前傾姿勢を示さなかったことで19日午前安値142.24円から19日夜高値144.95円へ急伸したが、会合後の円高を警戒していた売り方の買い戻しが一巡して145円に届かなかったことで20日未明には143.52円へ失速した。
12月20日の日中から21日早朝にかけても軟調推移となり、夜安値で143.26円を付けたところからの戻りでは144円に届かず、21日午前序盤は143円台前半で推移している。

【ユーロ、ポンドが下落してドル高】

12月20日夕刻に発表されたドイツの11月PPI(生産者物価指数)が前月比0.5%低下となり10月の0.1%低下からさらに減速して市場予想の0.3%低下も下回った。英国の11月CPI(消費者物価指数)も前月比0.2%低下となり10月の0.0から鈍化して予想の0.1%上昇を下回り、前年比は5.1%で10月の5.7%から大幅に鈍化して市場予想の5.6%を下回った。

これらの発表を受けてECB(欧州中銀)と英中銀による利上げ終了と来年の利下げへの期待が強まり独、英等の長期債利回りが低下した。米長期債利回りも米国の来年3回利下げへの期待感から低下したが、独英の10年債利回り低下に注目が集まったことでユーロドルとポンドドルが下落した。ユーロ円やポンド円の下落による円高感と、米長期債利回り低下による円高感も重なったため、ドル円は日銀会合後の円安一巡として失速した印象だが、ユーロとポンドの下落によるドル高感がドル円の下値を支えた側面もある。
米国に続き欧州もインフレ鎮静化の兆候が顕著になっており、来年は欧米揃っての利下げ期待が強まるところだが、ECB理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁やオランダ中銀のクノット総裁らは、市場の早期利下げ期待をけん制する発言を繰り返した。

【米経済指標は堅調】

12月20日夜に発表された米経済指標は総じて強めで昨夜のドル高に寄与した。
米商務省による2023年7-9月期経常赤字は2003億400万ドルで赤字額は前期比7.6%縮小し、GDP比では2.9%となり前期の3.2%から縮小した。
米不動産業者協会(NAR)による11月の中古住宅販売件数(年換算)は前月比0.8%増の382万戸となり市場予想の377万戸を上回って6か月振りのプラスとなった。前年同月比は7.3%減、販売価格中央値は前月比1.0%低下、前年同月比は4.0%値上がりだった。
米調査会社コンファレンス・ボードによる12月消費者信頼感指数は110.7となり11月の101.0から上昇して市場予想の104.0を大幅に上回った。向こう半年間の景気見通しでは「改善する」が11月の17.2%から18.7%へ上昇、「悪化する」は11月の20.1%から16.0%へ大幅に低下した。

【米10年債利回りは一段と低下、ダウは連騰後の修正で大幅安】

12月20日の米長期債利回りは総じて低下した。米経済指標が強めだったことで一時的に上昇する場面も見られたが、英独のインフレ率鈍化により英独の長期債利回りが低下したことに同調し、来年3月の利下げ期待が高まっていることで10月以降の最低を更新している。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の3.85%となり、12月14日以降の下げ渋り持ち合いから下放れして10月23日に付けた5.02%以降の最低を更新、今年7月以来の低水準となった。
30年債利回りは前日比0.05%低下の3.99%となり10月23日に付けた5.18%以降の最低を更新、7月末以来の低水準となった。
2年債利回りは0.11%低下の4.34%となり、10月19日に付けた5.26%以降の最低である12月14日の4.28%に迫ったが、日足の終値ベースでは14日の4.39%を割り込んでこの間の最低となった。

一方でNYダウは前日比475.92ドル安と大幅下落した。12月7日から9連騰とし、12月13日から5営業日連続で史上最高値を更新してきたことで高値警戒感と利益確定売りが優勢となって下げたようだ。クリスマス休暇前の利食いという側面もありそうだ。ナスダック総合指数も前日まで9連騰してきたが20日は225.28ポイント安と下落した。米長期債利回り低下と米国株安がドル円の上値を抑えた印象もある。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は日銀会合後の円安が一巡し、12月19日夜高値144.95円を目先のピークとして下落期に入っているようだ。12月21日の日中までで下げが落ち着いて144.50円を超えてくる場合は12月19日高値試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとして22日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定するが、144円以下での推移が続く場合は143円割れへ一段安となり戻せない場合は22日の日中から26日午前にかけての間まで安値試しが続きやすくなると考える。

60分足の一目均衡表では12月19日夜高値からの下落が続いて遅行スパンが悪化し、21日午前序盤には先行スパンから転落しつつあるため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、144.50円を超えるところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は12月20日未明に50ポイントを割り込んだ後は40ポイント台序盤から60ポイント手前までのレンジで推移している。40ポイント割れからは下げ足が速まる可能性ありとみて20ポイント台への低下を想定する。60ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみて70ポイントを目指す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.00円を下値支持線、144.50円を上値抵抗線とする。
(2)144円以下での推移中は下向きとし、143円割れからは142円台中盤(142.65円から142.35円)への下落を想定する。142.50円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、144円以下での推移が続く場合や直前安値から1円を大幅に超える反騰がみられないうちは22日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.10円超えからは上向きとし、144.50円超えからは上昇再開とみて12月19日夜高値144.95円及び145円到達を目指す上昇を想定する。145円前後は売られやすいとみるが、144.50円を超えた後も144円台を維持して推移するか、直前高値から1円を大幅に超える反落が発生しないうちは22日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

12/21(木)
22:30 (米) 7-9月期 GDP・確定値 前期比年率 (改定値 5.2%、予想 5.2%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費・確定値 前期比年率 (改定値 3.6%、予想 3.6%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE・確定値 前期比年率 (改定値 2.3%、予想 2.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 187.6万人、予想 188.8万人)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 -5.9、予想 -3.0)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード景気先行指数 前月比 (10月 -0.8%、予想 -0.4%)
25:00 (欧) レーンECB理事、講演[ダブリン]
27:00 (米) 5年インフレ連動債入札

12/22(金)
英国 株式市場短縮取引、米国 債券市場短縮取引
08:30 (日) 11月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 3.3%、予想 2.5%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 2.9%、予想 2.5%)
08:30 (日) 11月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 4.0%、予想 3.8%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨・10月30-31日分
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.3%、予想 0.5%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 -2.7%、予想 -1.3%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 -0.1%、予想 0.4%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 -2.4%、予想 -1.4%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
16:00 (英) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -253億ポンド、予想 -131億ポンド)

22:30 (米) 11月 耐久財受注 前月比 (10月 -5.4%、予想 2.2%)
22:30 (米) 11月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (10月 0.1%)
22:30 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 11月 PCE(個人消費支出) 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 3.0%、予想 2.8%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (10月 3.5%、予想 3.4%)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数・年率換算 (10月 67.9万件、予想 68.8万件)
24:00 (米) 11月 新築住宅販売件数 前月比 (10月 -5.6%、予想 1.3%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 69.4、予想 69.5)

注:ポイント要約は編集部

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