日銀会合(12月18-19日開催)のポイント:植田総裁の「地ならし発言」の有無に注目(23/12/15)

2023年の各国中央銀行による最後の会合は、18日−19日に開催される日本銀行金融政策決定会合だ。

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日銀会合(12月18-19日開催)のポイント:植田総裁の「地ならし発言」の有無に注目(23/12/15)

日銀会合(12月18-19日開催)のポイント:植田総裁の「地ならし発言」の有無に注目

【今回のポイント】

〇 現状の金融政策は据え置き
〇「金融政策の正常化」に向けた検討や時期は明言せず
〇 植田日銀総裁の記者会見で「地ならし発言」が出た場合は円高進行に

【市場コンセンサスは何?】

2023年の各国中央銀行による最後の会合は、18日−19日に開催される日本銀行金融政策決定会合だ。

12月15日8時時点の日銀会合コンセンサスは下記の通りである。

・現状の金融政策は据え置き
・「金融政策の正常化」に向けた検討や時期は明言せず

6日と7日の日銀の植田和男総裁と氷見野良三副総裁の発言を受けて、早くても来年春頃と見られていた早期の金融正常化観測が再燃、為替市場では、ドルが147円台から一気に141円71銭までドル安が加速する事態となった。

6日の氷見野副総裁の講演を受けて、金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は、7日、12月の金融政策決定会合でのマイナス金利解除(0.1%の利上げ)の確率を一時40%程度まで織り込んだ。

そして、7日、植田総裁は国会答弁において「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言。植田日銀総裁は、単なる一般的な見解に過ぎず、「チャレンジング」に深い意味はないとの考えと思われるが、前日の氷見野副総裁の発言で、市場が12月会合に対する期待感(警戒感?)を高めた矢先だったことから、円が主要通貨に対して全面高の展開となった。

今週11日頃には、賃金の堅調な伸びがデータで確認されるまで、金融政策の正常化は見送られる可能性が高いと報道。確かに植田日銀総裁が以前より連呼している「賃金と物価の好循環の実現」はまだ見極め段階である。来年3月の春闘の結果が「賃金の堅調な伸び」を判断する材料になると考える。

ただ、「チャレンジング」が意図的な「地ならし」という植田日銀総裁の市場との対話と捉える市場関係者も多い。そのため、15時30分から開始される植田日銀総裁の記者会見で「地ならし」的な発言が出る可能性は十分にある。

【何がサプライズになる?】

サプライズはこの「地ならし発言」となる。「イールドカーブコントロール(YCC)(長短金利操作)」を微妙に修正するとの見方もあるが、10月会合で「1.0%メド」としてからの10年国債利回りは11月1日に0.950%をつけた後は右肩下がりで、足元0.65%台である。この利回り水準では、「1.0%メド」を修正する必要はないと考える。よって、今回のサプライズは、「地ならし発言」のみと考える。

【では、円はどう動く?】

コンセンサス通りだった場合とサプライズだった場合の2通りのシナリオを考えておきたい。

〇コンセンサス通りだった場合
足元のドル・円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で3回連続の金利据え置きのほか、2024年に3回の利下げ(0.75%)見込み、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のハト派発言などが影響して、ドル売り優勢となっている。14日には、7月31日以来となる140円台もつけており、足元「ドル売り・円買い」の流れが強まっている。

この流れの背景には、日銀が今回の会合で「金融政策の正常化」に関する何か政策を発表するのではないか?との疑念もある。コンセンサス通りの「現状維持」だった場合、円買いの解消が進み、ドル・円は買い戻されると想定する。200日移動平均線が位置する142円台を回復し、143円台水準までは戻す余地はあるだろう。もっとも、米10年債利回りが4.0%水準で推移していれば、日米金利差は3.3%程度のため、積極的なドル買いが入る余地は限定的と考える。

〇サプライズだった場合
足元のドル・円は、日銀が何かしらの政策修正を発表するのではないか?との疑念は織り込まれているが、具体的な政策修正案は語られておらず、織り込みは不十分と考える。そのため、植田日銀総裁による記者会見で「地ならし発言」がでた際、為替市場では、円が主要通貨に対して強含む地合いになる展開を想定する。ちなみに、「チャレンジング」のように植田日銀総裁が意図しない「地ならし発言」が出た場合も、為替の反応は同じである。

為替市場では、14日につけた安値140円97銭割れを試す展開となるだろう。この水準を下抜けると7月28日以来の140円台割れが見えてくる。日米金利差が縮小していることを考慮すると、130円台に入れば、「円キャリートレードの終焉」が強く意識されて、2022年2月の116円台辺りからスタートした1年10カ月に及ぶ円安トレンドは終了するだろう。

【最近の日銀会合関係者の発言は?】

ここ最近の政府・日銀関係者の発言を拾った。

鈴木財務相(12月8日)
「為替相場の状況や対応についてコメント控える

植田日銀総裁(12月7日)
「出口のシミュレーションを示すのは時期尚早」
「利上げの場合、具体的な新たな金利水準は念頭に置いていない」
「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」
「インフレおよび円安に対して、国民からの批判的な意見増えている」
「賃金上昇を伴う2%の物価目標の実現見通しに向けて、粘り強く金融緩和を続ける」

氷見野日銀副総裁(12月6日)
「出口、物価目標実現見通せればとの見方に変化はない」
「出口について、状況を虚心坦懐に判断」
「先行きデフレ的な世界に戻るのを避ける」
「物価目標の実現を見通せるまで、粘り強く金融緩和を続ける」

安達日銀審議委員(11月29日)
「粘り強く金融緩和を継続する必要、出口政策の議論を行う段階にはない」

植田日銀総裁(11月27日)
「2%の物価目標の実現。現時点で十分な角度ではなお見通せず」
「賃金・物価の好循環へ良い芽がでているが、不確実性は高い」

【2023年の日銀会合終了時間一覧】

日銀会合はFOMCやECB理事会と違って、会合の終了時間が決まっていない。決まっているのは、日銀総裁の記者会見(15時30分)だけで、日銀会合の結果内容はおおよそ11時30分頃から13時頃に流れる。市場関係者はその間、ランチを取れないので、市場関係者泣かせの中央銀行といえる。

そして、結果発表が遅くなると「議論が紛糾している。何かサプライズがあるのでは?」と市場は勝手に解釈して、為替、株式、債券市場では思惑的な売買が活発となる傾向もあるので注意したい。

以下は、2023年の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから5−7分ほど経過してからだ。

1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%を1.0%メドに変更)
12月19日(火)・・・?

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
9月21日(木)−22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持したことで、市場はやや円安
10月30日(月)−31日(火)・・・想定通りのYCC再修正に留まったことで、市場は円安の反応
12月18日(月)−19日(火)・・・現状の金融緩和方針の維持を予想するが、記者会見での植田日銀総裁の発言に注目

米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月19日(火)−20日(水)・・・利上げ見送り、ややタカ派な姿勢が確認できたことで、市場はドル買いで反応
10月31日(火)−11月1日(水)・・・利上げ見送り、パウエル発言をややネガティブ視しドルはやや軟調
12月12日(火)−13日(水)・・・金利据え置き、2024年末にかけて3回の利下げを織り込むとハト派な内容となったことでドル急落

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・想定通りの現状維持でユーロは凪相場
12月14日(木)・・・金利を据え置き、引き下げは示唆しなかったことで、ユーロは主要通貨に対してやや買われた

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