日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か(23/12/22)

今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは、ランチタイムの11時50分頃だった。

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日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か(23/12/22)

日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か

【今回のポイント】

〇 金融政策の現状維持を全員一致で決定
〇 植田日銀総裁は記者会見を無難にこなす
〇 発表後、円安推移するも短期間で「往って来い」に

【日銀会合の結果】

今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは、ランチタイムの11時50分頃だった。

大規模な金融緩和策の維持を全員一致で決めたほか、金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も変更せず、先行きの政策修正は示唆されなかった。マイナス金利政策の解除は見送り、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール(YCC))や、上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も現状のままとし、物価、賃上げの動向をさらに見極める必要があると判断した。


15時30分からの植田和男日銀総裁の記者会見での主なコメントは下記の通りである。

「景気は緩やかに回復。先行きは海外経済の下押し受けるも、緩やかな回復続ける」
「先行きの金融政策 不確実性が極めて高い中、機動的に対応しつつ、粘り強く緩和を続けることで賃金上昇を伴う形での物価目標実現を目指す」
「必要があれば躊躇なく追加緩和を行う」
「12月短観、各種統計から賃金を巡る環境、労働需給の引き締まり、企業収益の改善などが見られる」
「労働組合からは今年を上回る賃上げ求める」
「現時点で来年の賃上げ決め切れていないところ多い」
「基調的な物価上昇率、2025年度にかけて物価安定に向けて目標達成の確度は高まっていくが、好循環続くかを見極めていく」
「今後の賃金動向、賃金と物価状況への波及については、データだけでなくヒアリングも重視」
「チャレンジング発言、今後の仕事の取り組み姿勢一般についての質問を受けての回答」
「マイナス金利は金融機関の収益や金融仲介に対してマイナスの影響もある」
「出口戦略について、先行きの不確実性がまだ極めて高いことから、目標達成は必ずしも見渡せない、出口の対応確度の高い姿を示すこと困難」

【市場の反応】

結果内容は、事前報道通りの内容だったものの、海外投資家を中心に来年2024年の早い時期のマイナス金利解除に向けて、「躊躇なく」の表現を削除するなど何かしら「地ならし」を行うのではないか?との期待感があったことから、ランチタイムの発表後、円は主要通貨に対して売られる地合いとなった。

その後の植田日銀総裁の記者会見を受けて、円は一段安の展開となり、ドルは144円台、ユーロは158円台と、ランチタイムの発表前と比べるとドルは2円、ユーロは3円それぞれ円安が加速した。

【今後、円はどう動く?】

今回の記者会見では、植田総裁のコミュニケーションはうまくいったと考える。植田総裁は、よもや「チャレンジング」という発言を市場が「金融政策の正常化への挑戦」と捉えるとは思わなかっただろう。慎重に言葉を選ぶ姿が印象的だった。

今後は「金融政策の正常化」に舵を切るタイミングがいつなのかがポイントとなろう。市場では、1月、3月、4月のいずれかの会合で実施されるとの考えが多い。鍵は、2024年の「春闘の賃上げ」だ。植田総裁は、現在のインフレは円安や原料高という「第1の力」によるもので、賃上げという「第2の力」による持続的かつ安定的な物価目標の達成を目標に掲げている。

労働組合中央組織の連合は、2024年の賃上げ目標を今年の3.6%を上回る5%に掲げている。その春闘のデータが集まってくるのは3月のため、そのデータを確認して3月18−19日の会合で「金融政策の正常化」に動くというのが一つの見方だ。

連合が春闘の回答速報を行うのは、通常5月中旬だが、さすがにそこまで日銀は待たないだろう。3月データを分析して、4月25−26日の会合で判断する可能性のほか、植田総裁は「ヒアリングも重視」と発言していることから、事前のヒアリングなどで賃金動向を把握して、1月22−23日会合で判断する可能性もある。今の為替水準であれば、3月もしくは4月に判断という可能性のほうが高いと考えるが、仮に1月にかけて、円が主要通貨に対して売られる展開となり、ドルが150円台を付けていれば、1月会合で判断するという選択肢もあるだろう。「金融政策の正常化」が近づいていることから、日米金利差拡大を期待した円キャリートレードを積み上げることは考えにくいが、為替次第で、「金融政策の正常化」の実施時期が変わる可能性があることは意識しておきたい。

19日の海外時間では、ドルが145円台手前まで円安ドル高が加速したものの、21日には、142円台まで戻しており、「往って来い」の形状だ。ただ、今年最後の中銀イベントが終わったことから、市場はクリスマス・年末休暇に入ることから、こう着感が徐々に強まる公算が大きい。

ドルは11月13日の年初来高値151円95銭を起点とした上値抵抗線に頭を押さえられているが、年末年始にかけては目立ったイベントが無いほか、参加者も減少することから、12月14日の140円96銭を下回るような地合いは回避されると考える。ドルは年明けに発表される12月の米雇用統計を確認するまで、142円−143円台のもみ合いが続くだろう。

【2023年の日銀会合終了時間一覧】

以下は、2023年の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。

日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か

12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か 2枚目の画像

12月18日(月)−19日(火)・・・現状の金融緩和方針を継続、植田日銀総裁の無難な記者会見でドルは買戻し

日銀会合(12月18-19日開催)結果のポイント:早ければ金融政策の正常化は来年1月頃か 3枚目の画像

12月12日(火)−13日(水)・・・金利据え置き、2024年末にかけて3回の利下げを織り込むとハト派な内容となったことでドル急落(一時140円97銭)

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