『対円相場は約3カ月ぶり安値圏へと下落。対ドル相場は史上最安値を更新』
〇今週のトルコ円、5.23まで下落後週央にかけ5.32まで反発
〇円安進行、トルコ株の堅調推移が背景、対ドルでは史上最安値更新、軟調推移
〇テクニカルの地合い弱く、ファンダメンタルズも中東情勢をめぐる欧米との関係悪化等が重石に
〇トルコリラ円相場の続落を来週のメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):5.10ー5.40
今週のレビュー(11/6−11/10)
今週のトルコリラ円相場(TRYJPY)は、週初5.26円で寄り付いた後、(1)パレスチナ・イスラエル問題を巡るトルコと欧米諸国との関係性悪化懸念(エルドアン大統領は「米国によるイスラエルへの無制限支援」を批判→ブリンケン米国務長官がトルコの首都アンカラを訪問するもフィダン外相との会談に留まりエルドアン大統領との会談には繋がらず)を背景に、翌11/7にかけて、週間安値5.23円(8/8以来、約3カ月ぶり安値圏)まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(2)植田日銀総裁による「金融緩和を粘り強く続ける」とのハト派的な発言や、(3)上記2を背景とした円キャリートレードの継続期待(ドル円・クロス円上昇→トルコリラ円連れ高)、(4)トルコ株の堅調推移が支援材料となり、週央にかけて、週間高値5.32円まで反発しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/11午前4時40分現在)では、5.30円前後で推移しております。尚、対ドル相場は史上最安値を更新するなど週を通して軟調推移が継続しました。
来週の見通し(11/13−11/17)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は安値圏での冴えない動きが続いています。日足ローソク足が全てのテクニカルポイントの下側で推移していること(アップサイドに複数のレジスタンスポイントが並んでいること)や、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」が点灯していること、対ドル相場が史上最安値を更新し続けていること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「弱い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)パレスチナ・イスラエル問題に端を発したトルコ・欧米諸国間の関係性悪化(ハマス・パレスチナを支持するエルドアン大統領vsイスラエルを支持する欧米諸国の構図)や、(2)トルコ経済の先行き不透明感(先週発表されたトルコ10月製造業PMIは一段と悪化。好不況の分かれ目となる50を4カ月連続で下回る状態。治安悪化に伴う観光収入の低下も懸念要因)、(3)海外マネーの逆流懸念(政府・中銀による正常化路線への転換を好感して海外マネーの流入が続いてきたが、上記1、2を背景に海外マネーの逆流懸念が浮上)、(4)トルコリラの実質金利のマイナス状態長期化懸念(トルコ国内のインフレ加速にトルコ中銀の利上げが追い付かず→実質金利のマイナス状態継続)、
(5)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(パウエルFRB議長によるタカ派的な発言を受けて、来年5月に織り込まれていた利下げ開始時期が、来年6月に後ずれ→米長期金利の反転上昇→トルコからの米国への資金流出圧力再開)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ(テクニカル面・ファンダメンタルズ面の弱さを踏まえ)、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はトルコ9月経常収支以外に目立った経済イベントが予定されていないため、米長期金利やドル円相場に振らされる主体性に欠ける1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(TRYJPY):5.10ー5.40
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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