ドル円の4連騰で5.32円まで高値を伸ばすも10日午前はドル高リラ安見て失速
〇トルコリラ円、11/9早朝に5.31を付けた後いったん5.27まで下げるも、11/10早朝には5.32へ一段高
〇対ドル、11/9は概ね28.53から28.26の取引レンジ、最安値更新には至らなかったが最安値近辺で推移
〇11/10午前には28.72を付けて、取引時間中の最安値を更新
〇外貨準備高、グロスは増加、ネットは微減となったものの増加基調を維持
〇5.30超えからは上昇再開とみて、5.32、5.33を順次試す上昇を想定する
〇5.26割れからは下落期入りとして、5.24、5.21を順次試す下落を想定する
【概況】
トルコリラ円の11月9日は概ね5.32円から5.26円の取引レンジ、10日早朝の終値は5.30円で前日終値と変わらなかった。
ドル高リラ安基調は続いているものの11月9日は対ドルでの史上最安値更新はなく最安値近辺でやや膠着した状況が2日間続いているため、トルコリラ円はドル円の騰落を見ながらの展開となり、ドル円が4連騰で151.30円台へ続伸したのを見て5.32円まで戻り高値を切り上げた。
ドル円は10月31日の日銀金融政策決定会合、11月2日未明の米FOMCと3日夜の米10月雇用統計等の重要イベントを通過しながら、10月30日深夜安値148.80円から11月1日未明高値151.71円へ急伸して年初来高値を更新し、11月3日夜には149.20円まで急落して急伸幅の大半を解消したが、10月30日深夜安値割れを回避してから買い戻し優勢となっている。11月9日は日銀の植田総裁が英FT紙インタビューで金融緩和継続姿勢を改めて強調、早期の政策転換への慎重姿勢を示す一方、パウエルFRB議長がIMFイベントにおいて「追加利上げをためらわない」と発言したことで米長期債利回りが上昇してドル高反応となったため、11月10日早朝には151.38円まで高値を伸ばしている。
トルコリラ円は11月6日午前安値で5.21円を付けて31日午前安値5.23円を割り込んだが、その後はドル円の上昇を見ながらジリ高で推移し、9日早朝に5.31円を付けてからいったん5.27円まで下げたものの、10日早朝には5.32円へ一段高した。引き続きドル/トルコリラの動きを注視しながらドル円の騰落を追いかけているところだが、ドル円の連騰が途切れていったん仕切り直しの下落期に入る場合や、ドル高リラ安がさらに勢い付いて1ドル29リラへ迫るような展開になると、トルコリラ円も大きく足を引っ張られることになりかねないと注意したい。11月10日午前には対ドルでの史上最安値更新を反映して5.27円まで失速している。
【対ドルでは11月10日午前に史上最安値更新】
ドル/トルコリラの11月9日は概ね28.53リラから28.26リラの取引レンジ、10日早朝の終値は28.41リラで前日終値28.43リラからは0.2リラのドル安リラ高だった。
高インフレが進行する中でトルコ中銀による連続利上げではまだ不足としてドル高リラ安基調が続いており、9月22日以降は連日のように史上最安値更新を繰り返してきた。
11月7日に28.64リラへ取引時間中の最安値を更新し、8日と9日は最安値更新には至らなかったものの最安値近辺に居座り、11月10日午前には28.72リラを付けて最安値を更新している。終値ベースでは10月23日から11月3日まで10営業日連続で史上最安値を更新し、11月7日は28.45リラへ最安値を更新し、9日も最安値近辺にとどまった。
11月9日はパウエルFRB議長らFRB高官による追加利上げの可能性を改めて示唆する発言が相次いだことでドル高優勢の流れとなり、リラ売り圧力も続いている。
【外貨準備高、ネットは微減、グロスは増加】
11月9日夜にトルコ中銀が発表した週次の外貨準備高は11月3日時点のグロスで839.4億ドルとなり10月27日時点の824.1億ドルから増加したが、ネットは247.4億ドルにとどまり10月27日時点の251.5億ドルから微減となった。
エルドアン大統領が5月28日の選挙で再選した後に就任したウォール街の元銀行家であるエルカン総裁体制となってからは外貨準備高を取り崩して為替市場でリラ買い介入を繰り返すことを止め、外貨準備高増加を主要政策として為替レートは市場原理に任せるとした。このためネットの外貨準備高は6月序盤にマイナス57億ドルまで悪化したところから回復基調にあり、10月27日時点でこの間の最高となり、直近では微減となったものの増加基調を維持している。
グロスの外貨準備高は6月序盤に565.2億ドルまで減少したところから回復基調を続け、9月末には838.1億ドルまで拡大してからやや足踏みしていたが、直近ではこの間の最高となった。
外貨準備高の増加はトルコ経済の信用度を高めるものであり、大手格付け会社は見通しをネガティブから安定的へと上方修正しつつ、エルドアン大統領再選前の正常的だったとは言えない政策姿勢が大きく構造変化していると評価している。しかし高インフレを後追いする利上げではマイナス金利状態の解消には遠く、利上げ継続を催促するリラ安基調は続いており、ロシア・ウクライナ戦争に加えてパレスチナ・イスラエル戦争も勃発したことによるトルコへの地政学的リスクの高まりもリラへの圧迫要因となっている。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月6日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、トップ形成期を7日早朝から8日未明にかけての間と想定したが、11月9日早朝に5.31円まで高値を切り上げてから失速気味となったために9日午前時点では9日早朝高値を直近のサイクルトップとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとした。
11月10日早朝へ一段高して新たな強気サイクル入りしたものの11日午前に5.27円まで反落しているため、すでにサイクルトップを付けて新たな弱気サイクル入りしている可能性があると注意し、5.30円超えからは上昇再開として14日午前から16日午前にかけての間への上昇を想定するが、5.26円割れからは新たな弱気サイクル入りとして14日午後から16日午後にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では11月7日早朝への上昇で遅行スパンが好転して7日午後には先行スパンを上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持してきたが、11月10日午前の反落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているため、遅行スパン悪化中は下落期入りとみて安値試し優先とする。ただし、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月10日午前に60ポイント台後半へ上昇したものの10日午前の下落で40ポイント割れへ失速したため下落再開と考えて20ポイント台への低下を伴う下落を想定し、強気転換は50ポイント超えからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.26円を下値支持線、5.30円を上値抵抗線とする。
(2)5.30円超えからは上昇再開とみて5.32円、5.33円を順次試す上昇を想定する。5.33円以上は反落警戒とするが、5.30円を超えたあ馳尾も5.29円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.26円割れからは下落期入りとして5.24円、5.21円を順次試す下落を想定する。5.22円以下は反騰注意とするが、5.26円を割り込んだ後も5.27円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月10日
16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.8%)
16:00 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 3.1%)
16:00 9月 失業率 (8月 9.2%)
11月13日
16:00 9月 経常収支 (8月 -6.19億ドル)
16:00 9月 小売売上高 前月比 (8月 -4.7%)
16:00 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 17.2%)
注:ポイント要約は編集部
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