ドル円見通し 4日続伸、FRB議長の追加利上げへの発言で米10年債利回り上昇でドル高(23/11/10)

ドル円はNY時間に151.38円を付けて11月3日夜安値149.20円以降の高値を更新、日足ベースでは11月6日から4連騰となった。

ドル円見通し 4日続伸、FRB議長の追加利上げへの発言で米10年債利回り上昇でドル高(23/11/10)

ドル円見通し 4日続伸、FRB議長の追加利上げへの発言で米10年債利回り上昇でドル高

〇ドル円、NY時間に151.38を付けて11/3夜安値149.20以降の高値更新、日足ベースでは11/6から4連騰
〇日銀総裁の金融緩和継続発言、米FRB議長らが追加利上げの可能性を示唆、押し上げ要因に
〇日銀総裁、英FT紙インタビューで金融緩和継続姿勢を改めて示す、国会答弁に沿った内容で円安を助長
〇FRB議長、追加利上げ余地を残す発言
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは前日から続落、ナスダックは下落し9連騰が途切れる
〇151円以上での推移中は一段高余地あり、151.50超えからは11/1未明の年初来高値151.71試しとする
〇150.83割れからはいったん仕切り直しの下落とみて、150.50、150.25を順次試す下落を想定する

【概況】

ドル円はNY時間に151.38円を付けて11月3日夜安値149.20円以降の高値を更新、日足ベースでは11月6日から4連騰となった。先週は日銀の金融政策決定会合を巡って10月30日深夜安値148.80円から11月1日未明高値151.71円へ急伸し、神田財務官の市場介入姿勢を強調した円安けん制発言から下落に転じてややハト派的だったFOMCや、低調だった10月米雇用統計を通過しながら149.20円まで反落する乱高下となったが、ドル売りイベントを通過したことで買い戻し優勢となり、11月8日は植田総裁の国会答弁での金融緩和継続姿勢で150円台後半へ上昇、9日は早朝に151円台に到達した後もしっかりし、日銀総裁の英FT紙インタビューでの金融緩和継続発言や、夜の米FRB議長らによる追加利上げの可能性を示唆する発言が相次いだことが押し上げ要因となり4連騰とした。米長期債利回りは11月9日に上昇したもののすでにピークを付けた可能性も見られるところだが、日本の10年債利回りも1%超へ急伸してゆくような動きを見せていないため、日米長期金利差を確保しようとした円売りドル買いの流れも見られるようだ。

米労働省が発表した新規失業保険申請件数は11月4日までの週間で前週比3000件減の21.7万件となり、3週ぶりに改善して市場予想の21.8万件を下回ったが市場の反応は鈍かった。
11月10日は米国のベテランズ・デー振替休日となるが休場はなく市場は通常通り。

【日銀総裁、英FT紙インタビューで金融緩和継続姿勢を改めて示す】

11月9日に英FT紙による日銀植田総裁へのオンライン・インタビューがあったが、総裁は「2%物価目標の実現に向けて前進しているがまだ幾分か距離がある」とし、マイナス金利政策とYCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作)による金融緩和策を物価目標実現まで維持する方針だと述べた。
総裁は物価目標実現までの距離について「極めて不透明、かなり短いかもしれないし、とても長いかもしれない」とし、「金融政策の正常化へ向けて何をすべきかを決めるにはあまりにも早過ぎる」として当面は金融緩和政策が継続してゆくとの姿勢を示した。またマイナス金利解除については「金融機関や負債を抱える家計と企業への影響を見極める」、「人々は長く低金利環境に慣れているので慎重に進める必要がある」と慎重姿勢も示した。
植田総裁は11月8日の衆議院財務金融委員会においても、「物価と賃金の好循環が少しずつ起こってきている」としたものの物価目標を達成できる見通しが立つまでは今の大規模な金融緩和策を維持すると述べており、FT紙インタビューも国会答弁に沿ったものだったが、早期の金融緩和終了への警戒感は後退して円安を助長している。

【FRBは追加利上げ余地を残す】

米FRBのパウエル議長は11月9日のIMF(国際通貨基金)イベントにおいて、「米国のインフレ率は目標の2%を依然として十分に上回っている」とし、追加利上げについては「適切ならためらわない」と強く述べた。ただ、政策判断については「慎重に動く」とし、「引き締め過ぎは望んでいないが、インフレが制御不能となるのは最大の間違いだ」と述べた。市場では米国の利上げサイクルがピークを付けて来年前半にも利下げ議論が始まるのではないかとの見方が広がっているが、そうした楽観に対して若干釘を刺した。

リッチモンド連銀のバーキン総裁も9日の講演において「米国のインフレ率は依然として高過ぎる」、FRBの仕事は「終わっていない」と述べたが、「金融引き締めが不十分なら1970年代のようにインフレが再燃する」との警戒心を示した。
セントルイス連銀のパエゼ総裁代理も9日の講演「金融政策は緩やかに景気抑制的だが、過度に引き締め的ではない」とし、「2%の物価目標達成に必要なら追加利上げのドアは開いている」と述べた。
IMFのゴピナート筆頭副専務理事も主要中銀は時期尚早な金融緩和を回避すべきとし、「各中銀の仕事は終わっていない」と述べた。また長期金利上昇が利上げの必要性を低下させるとの見方については「金利上昇の背景が財政赤字拡大なら金融引き締めは必要だ」とした。
総じて利上げ余地に含みを持たせ、早期利下げ期待をいさめる姿勢が目立った印象だった。

【米長期債利回りは反発、ダウは続落、ナスダックは10日ぶり反落】

11月9日の米長期債利回りは総じて上昇した。パウエルFRB議長らのややタカ派よりの発言や米国債の入札が低調だったことによる債券売り・利回り上昇がみられ、ドル円には押し上げ材料となった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.14%上昇の4.63%で終了、4.48%まで低下してからの反騰で直前2営業日分の続落幅を解消した。
30年債利回りはこの日行われた240億ドルの30年債入札が低調だったことで前日比0.15%上昇の4.77%となり、11月8日に4.61%まで低下したところから切り返したが、4.82%まで上昇した後はやや下げた。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.10%上昇の5.03%となったが、10月19日の5.26%から11月3日の4.81%まで大幅低下した後の下げ渋り状態から抜け出して反騰入りしている印象を強める勢いだった。

一方で米長期債利回りに上昇を嫌ってNYダウは前日比220.33ドル安となり、8日の40.33ドル安から続落した。10月30日から11月7日まで7連騰した上昇に一巡感がみられる。ナスダック総合指数も前日比128.96ポイント安となり、10月27日から11月8日までの9連騰が途切れた。しかし株高基調が崩れるほどの下げではなく、株高基調によるリスク選考感がドル円への押し上げ要因となっている流れはまだ継続していると思われる。

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

【60分足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は11月3日夜安値149.20円を目先の底として上昇期に入ったが、11月10日早朝へ続伸しており上昇基調は継続している。11月9日夜に小反落してから一段高へと勢いを増したため、現状は11月9日深夜安値を起点として新たな上昇期に入っている印象であり、11月16日にかけての高値追及の流れが続きやすくなったのではないかとみる。
ただし、11月9日深夜安値150.83円割れからは連騰一巡での修正安入りとみて16日深夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月7日早朝への上昇で遅行スパンが好転し、7日午前には先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、26本基準線割れを弱気転換注意とし、11月9日深夜安値割れからはいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月9日夜に50ポイントを割り込んでから60ポイント台後半へ上昇しており、11月9日深夜安値を起点とした上昇期入りを支持する動きと思われる。70ポイントを超えれば11月7日以降の指数のピークが右肩下がりで推移してきた流れから脱却して上昇が勢いを増す可能性もあるとみる。ただし次に50ポイントを割り込む場合は下落期入りとして40ポイント以下への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月9日深夜安値150.83円を下値支持線、151.50円を上値抵抗線とする。
(2)151円以上での推移中は一段高余地ありとし、151.50円超えからは年初来高値の11月1日未明高値151.71円試しとし、高値更新からは152円前後を試す上昇を想定する。151.71円から152.00円にかけての水準は反落警戒圏とするが、11月9日深夜安値割れを回避するか、一段高した後に0.50円を超える反落が発生しないうちは週明けも高値試しへ進みやすいとみる。
(3)150.83円割れからはいったん仕切り直しの下落とみて150.50円、150.25円を順次試す下落を想定する。150.50円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、150.83円以下での推移が続くうちは週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】

11/10(金)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月 0.2%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 7-9月期 GDP・速報値 前年同期比 (4-6月 0.6%、予想 0.5%)
16:00 (英) 9月 月次GDP 前月比 (8月 0.2%、予想 0.0%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.7%、予想 0.1%)
16:00 (英) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 1.3%、予想 1.1%)
16:00 (英) 9月 貿易収支・物品 (8月 -159.50億ポンド、予想 153.00億ポンド)
16:00 (英) 9月 貿易収支 (8月 -34.15億ポンド、予想 25.00億ポンド)
21:30 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (10月 63.8、予想 63.7)
24:20 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -1710億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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