来週の為替相場見通し:『日米金利差に着目したドル買い・円売り vs 政府・日銀の介入警戒感』(11/11朝)

ドル円は前週末金曜日に記録した安値149.20をボトムに切り返すと、今週末にかけて、一時151.62まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『日米金利差に着目したドル買い・円売り vs 政府・日銀の介入警戒感』(11/11朝)

『日米金利差に着目したドル買い・円売り vs 政府・日銀の介入警戒感』

〇今週のドル円、週末にかけて、週間高値151.62まで急伸
〇植田日銀総裁のハト派発言、パウエルFRB議長のタカ派発言、米期待インフレ率の上昇等が背景
〇ユーロドル、1.0680まで下落。米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石に
〇ドル円テクニカルの地合い強く、ファンダメンタルズもドル円上昇の材料揃う
〇来週は11月CPI、小売り売上高等の米指標に注目
〇ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想するが当局介入は要警戒
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー153.00、(EURUSD):1.0500−1.0800

今週のレビュー(11/6−11/10)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.38で寄り付いた後、早々に週間安値149.24まで軟化しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)植田日銀総裁による「イールドカーブコントロールの枠組みのもとで粘り強く金融緩和を継続し、経済活動を支え賃金が上昇しやすい環境整えることが政策運営の基本」「現時点では物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には尚至っていない」「2%の目標達成までにはもう一つ距離がある。それが見通せるまで金融緩和を継続する」とのハト派的な発言や、(2)株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、(3)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「利上げ終了を確信できない」「金融引き締めが不十分になるよりも過剰になるくらいの方がよい」「「必要ならFRBは追加利上げをするだろう」とのタカ派的な発言、

4)シカゴ連銀グールズビー総裁による「インフレ率を下げることが最優先課題」とのタカ派的な発言、(5)ボウマンFRB理事による「依然として追加利上げが必要になる可能性がある」とのタカ派的な発言、(6)ダラス連銀ローガン総裁による「インフレは依然として高すぎる」「インフレ率は2%ではなく3%に向かう傾向にある」とのタカ派的な発言、(7)リッチモンド連銀バーキン総裁による「米国のインフレは依然として高過ぎる」とのタカ派的な発言、(8)セントルイス連銀パエゼ暫定総裁による「高金利がしばらく続くと予想する」「インフレ鈍化の進展が鈍った場合に備えて金利をさらに引き上げる用意をしておくべき」とのタカ派的な発言、(9)パウエルFRB議長による「さらなる引き締めが適切になれば躊躇しない」「米経済は構造的に利上げに対して強靱かもしれない」とのタカ派的な発言、

(10)米30年入札の低調な結果、(11)米11月ミシガン大学1年期待インフレ率速報値(結果4.4%、予想4.0%、前回4.2%)および、米11月ミシガン大学5ー10年期待インフレ率速報値(結果3.2%、予想3.0%、前回3.0%)の市場予想を上回る結果、(12)米FRBによる利下げ開始時期の後ずれ観測(米当局者による相次ぐタカ派発言→米長期金利の反転上昇)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値151.62まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/11午前5時00分現在)では、151.57前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0729で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル売りの流れの継続(米雇用統計の冴えない結果→米長期金利急低下→米ドル売り)や、(2)ドイツ9月製造業受注(結果+0.2%、予想▲1.5%)の市場予想を上回る結果、(3)ドイツ10月非製造業PMI確報値(結果48.2、予想48.0)の市場予想を上回る結果、(4)ユーロ圏11月投資家信頼感指数(結果▲18.6、予想▲22.2)の市場予想を上回る結果、(5)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.0757まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(6)ドイツ9月鉱工業生産(結果▲3.7%、予想▲2.7%)の市場予想を下回る結果や、

(7)ドイツ10月建設業PMI(結果38.3、前回39.3)の不冴な結果、(8)デギンドスECB副総裁による「第4四半期のユーロ圏経済はやや縮小するか良くてもほぼ横ばい」とのネガティブ発言、(9)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(10)コスタ首相の辞意表明に端を発したポルトガルを巡る政局不透明感、(11)ユーロ圏9月小売売上高(結果▲0.3%、予想▲0.2%)の市場予想を下回る結果、(12)ベルギー中銀ウンシュ総裁による「インフレ率は急速に低下している」とのハト派的な発言、(13)ラトビア中銀カザークス総裁による「必要以上に金利を引き上げることはない」とのハト派的な発言、(14)米当局者(ボウマンFRB理事、リッチモンド連銀バーキン総裁、セントルイス連銀パエゼ暫定総裁、パウエルFRB議長)による相次ぐタカ派発言、(15)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0656まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/11午前5時00分現在)では、1.0680前後で推移しております。

来週の見通し(11/13−11/17)

<ドル円相場>
ドル円は前週末金曜日に記録した安値149.20をボトムに切り返すと、今週末にかけて、一時151.62まで急伸しました。10/31に記録した年初来高値151.74や、昨年高値151.95を射程圏内に捉えるなど、力強い動きが続いています。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイントの上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、日足のみならず下位足や上位足でも強い買いシグナルが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め長期化観測(今週はパウエルFRB議長をはじめ米当局者によるタカ派的な発言が複数あり→FF金利先物市場で来年の利下げ開始時期の織り込みが後ずれ→米長期金利が反転上昇→米ドル買い再開)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田日銀総裁は連日で金融緩和を粘り強く続ける姿勢を強調→円金利急低下→円売り安心感)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米金利差拡大に着目した円キャリートレードの継続期待)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週は上記1を確認する目的で、11/14に予定されている米11月消費者物価指数や、11/15に発表される米11月小売売上高に注目が集まります。米消費者物価指数、米小売売上高がいずれも市場予想を上回る場合には、米FRBによる金融引き締め長期化観測→米長期金利急上昇→米ドル急伸の経路でドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオ(年初来高値や昨年高値を突破するシナリオ)が想定されるため、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

但し、政府・日銀による為替介入には細心の注意が必要でしょう。神田財務官は11/1に、為替介入の準備について「スタンバイだ」と述べています。年初来高値151.74や、昨年高値151.95を上抜ける局面では、レートチェックや実弾介入が出てくるシナリオも想起されるため、ドル円相場が思惑主導で乱高下するリスクに警戒が必要と考えられます。尚、来週は米11月消費者物価指数や、米11月小売売上高以外に、米当局者発言(クックFRB理事、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、ジェファーソンFRB副議長、バーFRB副議長、クリーブランド連銀メスター総裁、シカゴ連銀グールズビー総裁、ボウマンFRB理事、ウォラーFRB理事、ボストン連銀コリンズ総裁など)も複数予定されているため、週を通してボラティリティの高まり易い1週間となりそうです(※為替介入の可能性もあるため、いつもより広めに予想レンジを設定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー153.00

注:ポイント要約は編集部

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は今週初に記録した約2ヵ月ぶり高値1.0757(9/13以来の高値圏)をトップに反落に転じると、週末にかけて一時1.0656まで反落しました。アップサイドから一目均衡表の雲上限が垂れ下がってきていることや、強い売りシグナルを示唆する「弱気のパーフェクトオーダー」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(上値余地は乏しい)と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)ECBによる金融引き締め休止観測(今週はECB当局者によるハト派的な発言が相次ぐなど、ECBによる利上げサイクル終了の可能性を改めて強調)、(3)米FRBよる金融引き締め長期化観測(パウエルFRB議長をはじめ米当局者によるタカ派的な発言が急増)、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されているドイツ11月ZEW景況感指数が市場予想を下回る場合や、欧州当局者(デギンドスECB副総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ラガルドECB総裁、オランダ中銀クノット総裁、スペイン中銀デコス総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、クロアチア中銀ブイチッチ総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ベルギー中銀ウンシュ総裁)よりハト派的な発言が見られる場合には、上記1と上記2の材料の組み合わせで、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0800

『日米金利差に着目したドル買い・円売り vs 政府・日銀の介入警戒感』

ドル円日足

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