ドル円見通し 5連騰、日銀ハト派的でFRBはタカ派的、円安継続感強まる(週報11月第二週)

この1週間は米FRB高官らの発言も相次いだが、FOMCをハト派寄りと受け止めた市場心理を引き締めるように追加利上げの可能性が継続していることが改めて強調された。

ドル円見通し 5連騰、日銀ハト派的でFRBはタカ派的、円安継続感強まる(週報11月第二週)

5連騰、日銀ハト派的でFRBはタカ派的、円安継続感強まる

〇先週のドル円、5日連続で陽線を記録、週末は151.60まで上昇するも先週高値151.71には届かず
〇FOMCハト派寄りとの見方を引き締めるように、FRB関係者から追加利上げの可能性強調発言目立つ
〇インフレと金利上昇、高水準の財政赤字が続く可能性からムーディーズは米国の格付見通し引き下げ
〇ミシガン大消費者信頼感、予想以上の低下を見せるも、1年、5年先の期待インフレは上昇
〇米10年債利回りは9日に4.47%まで下落後、4.65%まで戻して越週、株式市場は底打ち感出る
〇151円以上で推移中は一段高余地あり、151.71、151.94をクリアした場合には一段高か
〇151円割れからは反騰一巡による下落期入り、150.50,150円を試す
〇市場介入ある場合には、5円規模の下落もありうる

【概況】

ドル円は11月10日のNY市場に151.60円へ上昇、10月31日高値151.71円に迫った。日足は11月6日から5日連続陽線での上昇となった。10月31日の日銀金融政策決定会合でYCCの修正があったもののマイナス金利等の金融緩和継続姿勢が示されたことで10月30日安値148.80円から10月31日高値151.71円へ急伸し、11月1日朝の神田財務官による市場介入については「スタンバイ」とのけん制発言から下げ、11月2日未明のFOMCが予想よりハト派姿勢で11月3日の米雇用統計が低調だったことを受けて149.20円まで2.51円の下げ幅となる反落だったが、11月6日からの5連騰で下げ幅をほぼ解消した。

この1週間は米FRB高官や地区連銀総裁らの発言も相次いだが、FOMCをハト派寄りと受け止めた市場心理を引き締めるように追加利上げの可能性が継続していることが改めて強調された。その一方で日銀植田総裁は国会答弁や英FT紙インタビューで金融緩和終了への道のりはまだ遠い印象を与えたため、市場は日米金融政策の差を意識して円売りドル買い優勢の流れを取り戻している。
11月1日朝に神田財務官が市場介入に言及したこともあり、11月1日未明高値151.71円及び昨年10月21日高値151.94円等のある152円手前の水準では市場も慎重になると思われるが、米長期金利が高止まりないし上昇再開感を強める場合や、円の弱さによる円売り感が強まれば、昨年10月21日高値を超えて152円台へ進む可能性もあるのではないかと思われる。

【ムーディーズ、米国格付けを「ネガティブ」に】

米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは11月10日に米国の格付け見通しを「ネガティブ」へ引き下げた。根強いインフレと金利上昇及び高水準の財政赤字が続く可能性があるためとした。格付けそのものは最上級の「Aaa」に据え置いたが、米国債の大量発行が続いており、11月17日には現在の暫定予算が期限切れとなる。フィッチ・レーティングスは今年8月に米連邦政府の借入限度額問題での米議会内対立を根拠に格付けを「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1段階引き下げている。
米FRBの利上げサイクルはピークを超えたとの見方があるものの、米長期債利回りは国債大量発行による需給のゆるみを反映して高止まりしており、中長期的な上昇基調の範囲にある。米国債格下げならドル売り円買いの材料にもなりうるが、債券売り・利回り上昇で米10年債利回り等が上昇すればドル円への押し上げ要因となる。

【ミシガン大期待インフレ率上昇】

11月10日に発表されたミシガン大消費者信頼感指数は11月速報値が60.4となり、10月の63.8から低下して市場予想の63.7を下回った。4か月連続の低下であり、金利上昇による消費者心理の悪化感がみられる。現況指数は10月の70.6から65.7へ低下、期待指数も59.3から56.9へ低下している。
期待インフレ率は1年先で4.4%、10月の4.2%から上昇して2022年11月以来の高水準となり、5年先は3.2%で10月の3.0%から上昇して2011年以来の高水準となっており、インフレが続くことへの懸念が消費者心理に影響していることを示している。

【FRBは市場の利下げ期待感に釘を刺す】

サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は11月10日に「FRBによる利上げが終わったか、まだ明言する準備はできていない」とし、「インフレを巡るニュースもかなり良好だ」とした上で「勝利を宣言するのはまだかなり尚早だ」と述べた。
11月9日にはFRBのパウエル議長が追加利上げについて「適切ならためらわない」と強く述べ、リッチモンド連銀のバーキン総裁も「FRBの仕事は「終わっていない」とし、セントルイス連銀のパエゼ総裁代理も「2%の物価目標達成に必要なら追加利上げのドアは開いている」と述べており、いずれも先般のFOMCをハト派的と受け止めた市場の楽観を冷まそうとしている印象だ。
米金利先物市場においては12月の利上げ見送りはほぼ確実視され、来年1月についても利上げ見送りが続くとみられているが、来年6月に利下げされる確率は11月9日に61%、10日はやや冷やされたものの58%と5割を超えている。

【米長期債利回りは上昇、ダウは反発】

長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%上昇の4.65%で週を終えた。10月23日に5.02%をつけたところから低下に転じたが、11月9日は4.47%まで低下してからの反騰で前日比0.14%上昇となり、10日も一時4.57%まで低下してから反騰した。ただ4.67%近辺では抵抗感が出ている。
30年債利回りは前日と変わらずの4.77%で終了した。10月23日に5.18%をつけてから低下に転じたが、11月8日に4.61%まで下げてから反騰に転じて9日は前日比0.15%上昇となり、10日も4.71%へ小反落してから戻している。

利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.03%上昇の5.06%で終了した。10月19日の5.26%をピークとして11月3日の4.81%まで大幅低下したが、その後は反騰入りしており11月8日から3連騰で5%台を回復している。10年債や30年債はFRB高官らの発言等への反応がやや鈍いが、2年債利回りは敏感であり、FOMC後の低下幅をほぼ解消している。

一方、NYダウは前日比391.16ドル高と上昇した。8月1日の年初来高値35679.13ドルから10月27日安値32327.20ドルまで下落したが、売り一巡後の反騰で34000ドル台をいったん回復し、8日と9日は反落したものの当面の底を打って上昇期に入ったとの楽観が優勢のようだ。ナスダック総合指数は10月27日から11月8日まで9連騰し、9日は128.96ポイント安と反落を入れたものの10日は276.66ポイント高と上昇しており、10月26日安値を起点とした上昇継続感を示している。株高によるリスクオン優勢感はドル円への押し上げ要因となる。

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

【日足、サイクル・一目均衡表分析】

ドル円は11月1日から3日までの3日連続陰線による下落をその後の5日連続陽線による反騰でほぼ解消しつつある。概ね3か月から4か月前後の底打ち周期で推移しているが、10月31日高値への上昇起点となった7月14日安値から4か月目に入っており、11月3日安値を起点として新たな上昇期に入った可能性もある。
10月3日夜に乱高下した際の安値147.41円から10月30日安値148.80円、11月3日夜安値149.20円と底上げをしており、乱高下による急落も買い拾われつつ中長期的な上昇基調はまだ続くのではないかと思われる。

日足の一目均衡表では遅行スパンが実線を上回る好転を維持し、先行スパンを上抜いた状況も続いている。26日基準線前後まで下げたところはいずれも買い拾われているため、遅行スパンの好転が続くうちは高値試し優先と考える。ただし、26日基準線を割り込んで続落する場合は弱気転換注意とし、遅行スパン悪化からはいったん大きめの下げに入るとみて先行スパンの上下限を試す下落を想定する。

日足の相対力指数は8月以降の高値更新に対して指数のピークが切り上がらなかったが、10月30日と11月3日の急落時に50ポイントに到達したところは買われて切り返しているため、50ポイント前後へ下げても翌日に切り返すうちは日足レベルの上昇基調が続くと考え、50ポイント割れから続落する場合はいったん大きめの下げに入ると考えて40ポイント割れを試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、151.00円を下値支持線、152.00円を上値抵抗線とする。
(2)151円以上での推移中は一段高余地ありとみる。10月31日高値151.71円や昨年10月21日高値151.94円が順次上値抵抗線となり、市場介入も警戒されるが、それら高値を順次クリアする場合は152円台へ進み、実弾介入がなければ152円台後半、153円等を目指してゆくのではないかとみる。直前高値から2.0円ないし2.5円期規模の反落は常に入りやすいが、売り注文の連鎖によるものなら早々に買い戻されると考える。
(3)151円前後は買われやすいとみるが、151円割れ(←修正 ×150円割れ)から続落する場合は11月3日夜からの反騰一巡による下落期とみて150.50円、150.00円を順次試して行く下落を想定する。
仮に市場介入が発生する場合は昨年の9月22日(高値145.89円から安値140.36円まで5.53円の下落)や10月21日(高値151.94円から安値146.18円まで5.76円の下落)と同規模の下げとなる可能性があると思われるが、一度の介入では決着しないとみて突っ込んだところは買い拾われやすいとみる。

【当面の予定】

11/13(月)
休場 シンガポール、マレーシア、カナダ
OPEC月報
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前月比 (9月 -0.3%)
08:50 (日) 10月 国内企業物価指数 前年同月比 (9月 2.0%)
17:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
20:55 (英) ブリーデン英中銀副総裁、講演
28:00 (米) 10月 月次財政収支 (9月 -1710億ドル、予想 -520億ドル)

11/14(火)
スイス国立銀行・FRB・国際決済銀行会合(11/15まで)
08:30 (豪) 11月 ウエストパック消費者信頼感指数 (10月 82.0)
09:30 (豪) 10月 NAB企業景況感指数 (9月 11)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 4.2%)
17:00 (欧) レーンECB理事、講演
19:00 (独) 11月 ZEW景況感 (10月 -1.1)
19:00 (欧) 11月 ZEW景況感 (10月 2.3)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・改定値 前期比 (速報 -0.1%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.1%)
22:30 (米) 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 0.4%)
22:30 (米) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 3.7%)
22:30 (米) 10月 コアCPI 前月比 (9月 0.3%)
22:30 (米) 10月 コアCPI 前年同月比 (9月 4.1%)
22:45 (英) ピル英中銀理事、講演
25:00 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁、イベント挨拶
26:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会参加

11/15(水)
休場 ブラジル
08:50 (日) 7-9月期 GDP・速報値 前期比 (4-6月  1.2%、予想 -0.1%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP・速報値 年率換算 (4-6月 4.8%、予想 -0.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前期比 (4-6月 0.8%)
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 5.5%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 4.5%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 0.2%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -4.6%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 0.5%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 0.5%)
16:00 (英) 10月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (9月 6.7%)
16:00 (英) 10月 コアCPI 前年同月比 (9月 6.1%)
16:00 (英) 10月 RPI(小売物価指数) 前月比 (9月 0.5%)
16:00 (英) 10月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (9月 8.9%)

19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.6%)
19:00 (欧) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -5.1%)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 119億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 67億ユーロ)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.7%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.6%)
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 0.5%)
22:30 (米) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 2.2%)
22:30 (米) 10月 コアPPI 前月比 (9月 0.3%)
22:30 (米) 10月 コアPPI 前年同月比 (9月 2.7%)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 -4.6)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.4%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計

11/16(木)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 -0.5%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 -7.7%)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調前 (9月 624億円)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調済 (9月 -4341億円)
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 0.67万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 3.6%)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -0.1%)

20:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 183.4万人)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.1%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.7%)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 -9.0)
22:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、会議挨拶
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.3%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 79.7%)
23:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
23:25 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 40)
24:35 (米) バーFRB副議長、講演
24:45 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
25:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演

11/17(金)
米国つなぎ予算期限
06:45 (NZ) 7-9月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (4-6月 0.2%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.9%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -1.0%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -1.0%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -1.2%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 277億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 HICP(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (9月 2.9%)
19:00 (欧) 10月 コアHICP・改定値 前年同月比 (9月 4.2%)

22:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:10 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算 (9月 135.8万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 7.0%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算 (9月 147.3万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -4.4%)
22:45 (米) コリンズ・ボストン連銀総裁、会議挨拶
23:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、発言テキスト公表
24:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

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