地政学的リスクの高まりと中銀への追加利上げ催促でドル高リラ安継続
〇トルコ円、ドル円に合わせて軟調推移、週間足は9月第2週から7週連続陰線、10/28早朝終値は5.31
〇対ドル、日足終値ベースでは10/23から5営業日連続で最安値更新
〇トルコ、反イスラエル姿勢を強め、地政学リスクが経済にマイナスとなる懸念も
〇今週はドル円次第で上下に振れる可能性有り、ドル円修正安入りとリラ安重なり下げが厳しくなることも
〇5.33下回るうちは一段安余地あり、連続的な下げで5.28割り込む場合は5.26、5.24を順次試す下落想定
〇5.33超えからはいったん戻りを試す流れとみて5.34、5.35を順次試す上昇を想定
【概況】
トルコリラ円の10月27日は概ね5.34円から5.26円の取引レンジ、28日早朝の終値は5.31円で前日終値の5.33円から0.02円の円高リラ安だった。
ドルトルコリラにおける一時的なリラ安を反映して10月24日午前に5.25円まで下落したが、一時的な安値を除けば24日午前から26日午後高値5.36円までややジリ高で推移していた。しかしドル円が10月26日午後に150.77円へ急伸してから149.89円まで反落する波乱となり、28日未明にかけて下落基調となったため、トルコリラ円はドル円に合わせて軟調推移となり、27日午後の一時的安値5.26円を除いて28日未明にかけて続落して取引終了前には5.29円まで下げ、やや戻して週を終えた。
週間では10月20日の5.35円から0.04円の円高リラ安だが、週間足は9月第2週から7週連続の陰線で下落している。
【今週は日銀金融政策決定会合、FOMCを通過しながらドル円の波乱に注意】
10月30-31日に日銀金融政策決定会合があり、31日昼前後に金融政策を発表、午後に植田総裁会見がある。
ドル円は日銀が金融緩和を継続する中で日米長期金利差を反映して1月16日安値127.22円を底として上昇基調を続け、直近では7月14日安値137.24円を起点として10月26日高値150.77円まで上昇してきたが、日銀の政策修正や市場介入の可能性を警戒してその後は下落している。
日銀は金融緩和政策により硬直化して機能不全がみられた国債市場への対策として長期金利変動許容基準を事実上1%へ引き上げ、総裁インタビュー記事や日銀元審議委員発言によるマイナス金利の解除への言及により市場に対して軌道修正の可能性を意識させてきたが、市場は日本の低成長と日米の金融政策姿勢の差に基づく円安として徐々に高値を切り上げて昨年10月21日高値151.94円へ迫ってきた。10月3日夜に売り注文の連鎖で150.15円から147.41円まで短時間で急落する波乱が発生し、その後も小波乱を繰り返してきたが、突っ込んだ安値は買い拾われてきた。
日銀が金融緩和政策の出口へ向けた姿勢を強めるなら7月14日以降の上昇に対する大きな修正安が入る可能性があるが、金融緩和継続姿勢を改めて強調し、米FOMCが引き締め姿勢を継続するなら昨年10月高値を超える円安へと加速する可能性もある。週末には米雇用統計もあり、トルコリラ円にとってはドル円次第で上下に大きく振れる可能性のある週として臨機応変に対処したいが、ドル円の修正安入りとリラ安が重なる場合には下げが厳しくなることもあり得ると注意したい。
【対ドルでは史上最安値更新続く】
ドル/トルコリラの10月27日は概ね28.31リラから27.82リラの取引レンジ、28日早朝の終値は28.16リラで前日終値の28.13リラから0.03リラのドル高リラ安だった。週間では10月20日終値27.95リラから0.21リラのドル高リラ安となった。
8月24日のトルコ中銀による7.5%上げをきっかけとした一時的なリラ買いで当日に27.27リラから25.02リラへドル安リラ高となったもののリラの先安感は継続として8月25日からドル高リラ安が再開、9月22日に史上最安値更新に入ってからも連日のように最安値更新を続けてきた。
10月26日にトルコ中銀は5.0%の追加利上げで政策金利を35.0%としたが市場予想通りでリラ買いを呼び込まずにリラ安は続き、27日も取引時間中の史上最安値を3営業日連続で更新、日足の終値ベースでは10月23日から5営業日連続で最安値を更新した。週間足では8月最終週から9週連続のドル高リラ安となった。
トルコのインフレ率は9月時点のCPI前年比が61.53%であり、実質的な大幅マイナス金利状態の解消には程遠く、市場は追加利上げ催促でのリラ売り継続姿勢を示している。今週は11月2日に中銀の四半期インフレ予測報告書、3日に10月のCPI発表がある。
【イスラエルとの関係悪化、地政学的リスクの増大】
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃がエスカレートする中、10月28日には世界中で大規模な反イスラエル・デモが開かれたが、トルコではエルドアン大統領もデモに参加して「イスラエルは戦争犯罪国家だ」と非難した。大統領は「ガザで起きているのは大虐殺、イスラエルを止められない西側諸国にも責任がある」とする一方、ガザ地区を実効支配するハマスについて、「テロ組織ではない」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は10月28日にハマスに対する戦闘は「第2段階」に入ったとして地上戦の拡大を宣言したが、イランのライシ大統領が29日に「イスラエルはレッドラインを越えた」とXに投稿するなど周辺イスラム諸国の反イスラエル行動が激化することも懸念される。
イスラエルとトルコは国交正常化を目指していたが、今回の戦争状態化により関係が悪化、敵対関係となりつつある。トルコが直接的に軍事介入することはないと思われるが、反イスラエル姿勢は米国との関係悪化にもつながりかねず、地政学的リスクと戦禍拡大への懸念が中東経済への悪影響を招きトルコ経済にとってもマイナスとなることが懸念される。
ドル高リラ安が進行する中、リラ離れも進んでおり、仮想通貨のビットコインではアルゼンチン、ナイジェリアとともにトルコ通貨建てで史上最高値を大幅に更新している。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月24日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして24日夜から26日夜にかけての間への上昇を想定してきたが、26日午後へ上昇してから軟調推移となったために27日午前時点では26日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、ボトム形成期を27日午前から31日午前にかけての間と想定した。
10月28日未明へ続落し、30日午前序盤も安値を切り下げているので引き続きボトム形成中とするが、前回ボトムから4日目に入っているので5.33円超えからは強気サイクル入りとして31日午後から11月2日午後にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では28日未明への連続的な下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。ただし、一時的な高値を除いて連続的な上昇で先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開の可能性ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は10月26日早朝に70ポイント到達へ急伸してから反落し、その後も軟調推移で30日午前に30ポイントへ迫っているので20ポイント前後への下落余地ありとみる。相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰注意とし、連続的な上昇で55ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持し始める場合は上昇継続とみて60ポイント台への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.28円を下値支持線、5.33円を上値抵抗線とする。
(2)5.33円を下回るうちは一段安余地ありとし、連続的な下げで5.28円を割り込むところからは5.26円、5.24円を順次試
す下落を想定する。5.26円以下は反騰注意とするが、5.31円以下での推移なら31日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.33円超えからはいったん戻りを試す流れとみて5.34円、5.35円を順次試す上昇を想定する。5.35円以上は反落警戒とするが、5.33円を超えた後も5.32円を上回っての推移なら31日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10月30日
16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 95.4)
10月31日
16:00 9月 貿易収支 (8月 -86.6億ドル)
16:00 7-9月期 観光収入 (4-6月 129.8億ドル)
17:00 9月 海外観光客数 前年同月比 (8月 5.65%)
11月1日
16:00 10月 イスタンブール製造業PMI (9月 49.6)
11月2日
16:30 トルコ中銀 四半期インフレ予測報告書
20:30 週次 外貨準備高 10月27日時点 グロス (10月20日時点 825.7億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 10月27日時点 ネット (10月20日時点 225.5億ドル)
11月3日
16:00 10月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (9月 4.75%)
16:00 10月 CPI消費者物価指数 前年同月比 (9月 61.53%)
16:00 10月 コアCPI 前月比 (9月 5.3%)
16:00 10月 コアCPI指数 前年同月比 (9月 68.9%)
16:00 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 3.4%)
16:00 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 47.44%)
注:ポイント要約は編集部
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
オーストラリアドル(AUD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
豪ドルWeekly 100円を挟んだもみ合い、CPIで早期の利下げ観測が強まる可能性も(24/11/22)
今週の豪ドルは、豪準備銀行(RBA)が公表した理事会要旨でタカ派姿勢が確認されたものの、買いは続かず、100円水準を挟んだ小動きの相場展開が続いた。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:山中 康司
2023.10.31
トルコリラ円ショートコメント(23/10/31)
実際のレンジは安値が5.19レベル、高値が5.32レベルですが、先週も下ヒゲでの安値ということもあり、実際の安値は5.26レベルではないかと思います。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2023.10.28
トルコリラ週報:『上値の重い展開が継続。対ドル相場は史上最安値を更新』(10/28朝)
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は上値の重い展開が続いています。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。