トルコ円見通し 中東情勢深刻化でドル高リラ安、円安では支えられず18日朝一時急落(23/10/18)

トルコリラ円の10月17日は概ね5.37円から5.34円の取引レンジ、18日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.36円からは0.01円の円高リラ安だった。

トルコ円見通し 中東情勢深刻化でドル高リラ安、円安では支えられず18日朝一時急落(23/10/18)

中東情勢深刻化でドル高リラ安、円安では支えられず18日朝に一時急落

〇トルコ円、10/17夜ドル円の一時急落で5.34へ下落、ドル円が早々に買い戻されたことで5.37まで戻す
〇10/16午前高値5.41で戻り一巡、ドル円が150円手前で足踏みする中、ドル高リラ安進行に圧迫される
〇対ドル、10/17午前28.04リラつけ1ドル28リラ台に、10/18午前序盤28.19リラへ史上最安値更新
〇地政学的リスク回避のリラ安継続か、年末にかけ1ドル=29リラ、30リラ目指す懸念も
〇5.37を下回るうちは一段安余地あり、連続的に5.34を割り込む場合は5.32、5.30を順次試していく
〇5.37から5.39にかけての水準は戻り売りに掴まり易いとみるが5.39超えからは5.41試しとする

【概況】

トルコリラ円の10月17日は概ね5.37円から5.34円の取引レンジ、18日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.36円からは0.01円の円高リラ安だった。
ドル円は10月17日の日中から夕刻にかけては149.50円を挟んだ揉み合いで小動きだったが、19時台に日銀による物価見通し上方修正の可能性が一部メディアで報じられたことをきっかけに直前の149.69円から148.81円へ急落する場面がみられた。追従する報道がなくやや慌てた売りの連鎖が落ち着くと早々に149円台を回復し、米小売売上高や鉱工業生産が市場予想を上回る堅調さを示して米長期債利回りが上昇したために18日未明には149.85円を付けて13日未明高値149.82円を超えた。しかし150円手前では上値抵抗感もあり、10月3日夜に150.15円を付けた直後に147.41円まで急落した経緯もあって18日午前序盤は高値切り上げヘ進めずにいる。

トルコリラ円はドル円が17日夜に一時急落した場面で5.34円へ下落したが、ドル円が早々に買い戻されたことで5.37円まで戻した。しかし18日早朝にはドル/トルコリラにおけるリラ安を反映して一時的な安値で5.30円を付けて10月9日午後に付けた飛び値の安値と同値とした。
10月9日午後安値の後は徐々に底上げをして戻りを試していたが、10月16日午前高値5.41円で戻り一巡となり、ドル円が150円手前で足踏みする中でドル高リラ安の進行に圧迫されている。

【対ドルで史上最安値を連日更新中】

ドル/トルコリラの10月17日は概ね28.04リラから27.61リラの取引レンジ、18日早朝の終値は27.92リラで前日終値の27.86リラから0.06リラのドル高リラ安だった。
8月24日のトルコ中銀による7.5%の超大幅利上げをきっかけとしたリラ買いで27.27リラから25.02リラへ急伸したものの、リラ買いは続かずに8月25日から下落再開に入り、9月22日に史上最安値を更新してからもリラ安が続いてきた。
トルコの高インフレに対して中銀の大幅利上げも後手に回っていることでリラの先安観が解消しないことに加え、10月7日に勃発したパレスチナ・ハマスとイスラエルの戦争状態が日々悪化する中で中東全域の地政学的リスク増大がリラ安にも波及している。
10月17日午前に28.04リラを付けて初めて1ドル28リラ台に乗せたが、18日午前序盤には28.19リラ(ベンダーによっては28.25リラ)へ史上最安値を更新している。

【地政学的リスクによるリラ安】

ドル/トルコリラは1ドル28リラ台に突入している。
10月7日にパレスチナのガザ地区を実効支配しているハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛け、イスラエルは報復として大規模な空爆を行い戦争状態を宣言した。その後も両軍の戦闘は続いてパレスチナ・イスラエル戦争の様相となっている。
イスラエルが大規模な地上戦を準備する中、10月17日にはイスラエルによるガザ地区病院への空爆で500人以上の死者が出ており、アラブ諸国からのイスラエル批判が沸騰し、西側からも人道的批判が噴出しているが、戦争状態の激化は続きそうだ。
すでにレバノンを拠点とする武装勢力ヒズボラはイスラエルと交戦状態に入っており、ヒズボラを支援しているイランはハマス支持を表明している。ヨルダンでもイスラエルとの銃撃戦があるなど周辺への戦禍拡大も危惧されている。

パレスチナの難民が激増することは周辺国の治安悪化や国内反政府勢力との緊張を高めることにもなるが、なによりもかつてのガザ紛争においてアラブ側が「ガザの大虐殺」と呼んだ状況を超えるような悲劇的戦禍となれば、アラブ諸国による反イスラエル姿勢が険悪化して、先行きの不透明感によるリスク回避と物流支障、原油価格高騰によるインフレや自国通貨安等へと影響が拡大する。トルコにおいても反イスラエルのデモが発生しており、エルドアン政権に対してイスラエルへの強硬姿勢を求める声が強まっている。
当面は事態の終結シナリオが見えないうちはリスク回避的なリラ安は継続し、年末にかけて1ドル=29リラ、30リラを目指して行くのではないかと懸念される。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、10月11日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして11日夜から13日夜にかけての間への上昇を想定していたが、16日午前時点では5.36円割れからは弱気サイクル入りとし、16日夜に5.36円割れへ反落したため、17日午前時点では16日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。ボトム形成期は17日午前から18日午前にかけての間と想定したが、14日未明安値を基準として19日未明から21日未明にかけての間へ伸びる可能性もあるとした。
10月18日午前へ続落しているのでまだ下落余地ありとし、強気転換には5.39円を超える反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では10月16日夜への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落したが、その後も概ね両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンの上下限は上値抵抗帯になりやすいとこととし、強気転換は先行スパンを上抜き返す反騰が必要と思われる。

60分足の相対力指数は10月16日午後以降を30ポイント台から50ポイントまでのレンジで推移している。50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは下向きとし、下げ足が速まる場合は20ポイント台への低下を想定する。強気転換には55ポイントを超えて60ポイントに迫る上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.30円を下値支持線、5.38円を上値抵抗線とする。
(2)5.37円を下回るうちは一段安余地ありとし、連続的に5.34円を割り込む場合は5.32円、5.30円を順次試す下落を想定する。5.30円以下は反騰注意とするが、5.36円以下での推移なら19日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.37円から5.39円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし、5.39円超えからは5.41円試しとし、5.38円以上での推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

10月19日
 20:30 週次 外貨準備高 10月13日時点 グロス (10月6日時点 831.5億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10月13日時点 ネット (10月6日時点 207.4億ドル)
10月20日
 23:30 9月 中央政府債務残高 (8月 5兆8800億リラ)
10月23日
 16:00 10月 消費者信頼感指数 (9月 71.50)
10月25日
 16:00 10月 製造業信頼感指数 (9月 104.4)
10月26日 トルコ中銀 政策金利 (現行 30.0%)



注:ポイント要約は編集部

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