トルコリラ円見通し ドル円の波乱に巻き込まれて乱調、ドル高リラ安基調も継続(23/9/12)

トルコリラ円の9月11日は概ね5.54円から5.43円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.44円で先週末終値の5.50円からは0.06円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し ドル円の波乱に巻き込まれて乱調、ドル高リラ安基調も継続(23/9/12)

ドル円の波乱に巻き込まれて乱調、ドル高リラ安基調も継続

〇トルコ円、9/11朝に5.54へ上昇後、ドル円乱高下を追いかけ乱調な展開、9/12早朝終値は5.44
〇対ドル、9/12午前は27.00から26.76のレンジで推移、8/24急騰後の最安値に迫る
〇対ドルでのリラ安継続を意識しつつ、トルコ円は短期的にドル円の動向に大きく振り回される可能性
〇フィッチ、トルコ新体制の大幅な政策転換によりトルコ見通しをネガティブから安定的へ上方修正
〇構造的な貿易赤字の拡大基調継続、トルコ7月経常経常収支赤字は再び拡大
〇5.43を上回るうちは戻りを試す可能性があるとみるが、5.48近辺では戻り売りにつかまりやすい
〇5.43割れからは5.40前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の9月11日は概ね5.54円から5.43円の取引レンジ、12日早朝の終値は5.44円で先週末終値の5.50円からは0.06円の円高リラ安となった。
9月11日早朝にドル/トルコリラで一時的なリラ買いが入ったことでトルコリラ円は11日朝に5.54円へ上昇したが、ドル円が植田日銀総裁インタビュー記事におけるマイナス金利解除へ向けた姿勢により早朝から夕刻にかけて急落したため、トルコリラ円はドル円を追いかけて5.43円へ下落、その後はドル円の乱高下を見ながら5.47円へ反騰してから5.44円へ反落する乱調な展開となった。

ドル円は9月7日に147.87円を付けて年初来高値とし、8日午前の鈴木財務相による円安けん制発言から一時146.59円まで反落したところも買われて9日早朝には147.86円まで戻して高値更新を伺う位置にあったが、休日中のメディア報道をきっかけとして11日早朝には147円を割り込み、夕刻には145.89円まで一段安した。その後は146.50円を挟んで乱高下しているが、12日午前序盤は146.80円台へ戻している。

日銀は物価目標が達成される見通しが濃厚となればこれまでに実施してきた長期金利変動許容上限の引き上げに加えてマイナス金利解除へ向かうというのが金融緩和政策終了へ向けた出口戦略となるが、低成長の日本経済にとっては金融緩和の終了は大きな打撃となり与党の反対も踏まえれば、簡単には進めてゆけないのではないかと思われる。またマイナス金利を解除したところで米国との長期金利差が大きく縮小するわけでもない。しかし、徐々に地ならしが進んで行くと市場が受け止めればドル円の歴史的な大上昇にとってはブレーキとなるのだろうと思われる。
トルコリラ円としてはドル/トルコリラにおけるリラ安の継続を意識しつつ、短期的にはドル円の動向に大きく振り回される可能性のある局面と注意したい。

【対ドルで一時反発するも長続きせず、リラ安基調は継続】

ドル/トルコリラの9月11日は概ね26.89リラから26.52リラの取引レンジ、12日早朝の終値は26.80リラで先週末終値26.82リラからは0.02リラのドル安リラ高だった。
9月8日に大手格付け会社フィッチ・レーティングスがトルコ格付けをBに据え置いた上で見通しを従来のネガティブから安定的へと引き上げたことがリラ高に貢献したが、リラ安の基調は変わらないとみてリラ売り再開となり、12日午前は27.00リラから26.76リラのレンジで推移しており、9月8日に付けた8月24日の急騰後の最安値27.03リラへ迫っている。
8月24日にトルコ中銀が市場予想の3倍となる7.5%の追加利上げを決定したことで当日安値27.27リラから25.02リラへドル安リラ高となったが、8月25日からリラ安が再開しており、今のところは8月24日のレンジ内に留まっているものの8月24日の急騰幅の大半を解消している。

【フィッチ、トルコ見通しをネガティブから安定的へ上方修正】

格付け大手会社のフィッチ・レーティングスは9月8日にトルコ長期外貨建て(LTFC)発行体デフォルト格付け(IDR)の見通しをネガティブから安定的に上方修正したが、格付けについては「B」で据え置いた。
フィッチは見通しを安定的とした理由として、トルコの新体制が大幅な政策転換を行っており、短期的なマクロ金融安定リスクを軽減して国際収支の悪化圧力を緩和しているためとしたが、インフレ抑制に向けた政策調整(利上げ規模)規模や持続性とその成功については依然として不確実性が残るとしている。
格付けが改善してゆくためには「政策の一貫性」、「金融政策の正常化」、「外貨準備高の改善継続」、「高インフレと成長鈍化からの脱却」、「海外からの資金調達と経常収支の改善」、「政治的不確実性と地政学的緊張の緩和」等が必要と指摘されているが、今のところ金融政策の正常化とインフレ抑制への利上げ努力や財政収支改善のための増税などで努力がみられているが、それがしっかり継続できるかどうか、今後試されることとなる。

【経常収支の赤字は再び拡大】

9月11日に発表されたトルコの7月経常収支は54.66億ドルの赤字となった。6月は6.51億ドルの黒字を計上したが、貿易赤字が減少したことと観光収入の改善が寄与していたものの、構造的な貿易赤字の拡大基調は継続しており、経常収支の抜本的な改善には結びついておらず、市場予想の45億ドルの赤字を超えた。
7月の鉱工業生産は前年同月比で7.4%増となり6月の0.2%増から改善したが、前月比は0.4%減で6月に1.2%増から悪化しており低調なままといえる。
7月の失業率は9.4%となり6月の9.6%からは改善したが、依然として9%台にとどまっている。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、9月8日午前安値へ下落したところから5.50円超えへ上昇したため、9月11日朝時点では9月8日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またサイクルトップ形成期を8日夜から12日夜にかけての間としてすでに反落注意期とし、8日午前安値割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
9月11日夕刻への急落により8日午前安値を割り込んだため、11日朝高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして13日午前から15日午前にかけての間への下落を想定する。強気転換には5.50円を超える規模の反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では9月11日夕刻への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。11日夕以降の下げ渋りにより遅行スパンは好転しやすい推移だが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。強気転換は先行スパンを上抜く必要があるとみる。

60分足の相対力指数は9月11日の下落時に30ポイントまで低下してから戻しているが50ポイントに届かずにいる。50ポイントを超えないか一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。50ポイントから60ポイントにかけての水準では戻り売り有利とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.43円を下値支持線、5.48円を上値抵抗線とする。
(2)5.43円を上回るうちは戻りを試す可能性があるとみるが、5.48円近辺では戻り売りにつかまりやすいとみる。5.48円を超える場合は5.50円試しとその後の反落を想定する。
(3)5.43円割れからは5.40円前後への下落を想定する。5.40円以下は反騰注意とするが、5.43円以下での推移なら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9月12日
16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 -0.1%)
16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 28.5%)

9月14日
20:00 週次 外貨準備高 9月8日時点 グロス (9月1日時点 787.7億ドル)
20:00 週次 外貨準備高 9月8日時点 ネット (9月1日時点 161.5億ドル)

9月15日
16:00 トルコ中銀企業調査 年末の為替・CPI・政策金利予想値

9月20日
23:30 8月 トルコ中央政府債務 (7月 5兆8230億リラ)

9月21日 
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 25.00%)


注:ポイント要約は編集部

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