ドル円見通し 日銀マイナス金利解除の可能性で急落後も乱高下(23/9/12)

ドル円は、11日欧州市場前半にいったん146.98円まで戻したもののNY市場入りには146.19円へ反落、12日早朝にかけては146.50円を挟んだ揉み合いで推移している。

ドル円見通し 日銀マイナス金利解除の可能性で急落後も乱高下(23/9/12)

日銀マイナス金利解除の可能性で急落後も乱高下

〇ドル円、9/11早朝から急落、乱高下を経て9/12早朝は146.50を挟んだ揉み合い
〇日銀が早ければ来年1月にマイナス金利解除もあり得ると市場が受け止めたことが背景
〇9/21-22の日銀金融政策決定会合に要注目
〇マイナス金利解除を思惑、国内新発10年債利回り0.7%を超える
〇米10年債利回りは小幅続伸、追加利上げの可能性後退によりダウ、ナスダックは連騰
〇146.19以上での推移中は戻りを試す可能性ありとし、146.98超えからは147円台序盤を試すとみる
〇146.19割れからは下げ再開とし、11日夕安値145.89割れからは145円台前半への下落を想定

【概況】

ドル円は一部新聞による日銀総裁インタビュー記事で「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すればやる」などの発言を受けて11日朝から急落した。先週は9月5日深夜に147.50円を超えて6日午前に147.81円へ上昇し、7日午前に147.87円まで年初来高値を切り上げ、9月8日午前に鈴木財務相による円安けん制発言をきっかけに146.59円まで下げたところも買い拾われて9日早朝には147.86円を付けて高値更新を伺う位置に付けていた。
しかし、日銀総裁インタビュー記事から早期のマイナス金利解除もあり得ると市場は受け止めて11日早朝からドル円は急落に転じ、夕刻安値で145.89円を付けて9日早朝高値からの下げ幅は2円近くとなった。11日欧州市場前半にいったん146.98円まで戻したもののNY市場入りには146.19円へ反落、12日早朝にかけては146.50円を挟んだ揉み合いで推移している。

【マイナス金利解除を思惑して新発10年債利回りは0.7%を超える】

日銀によるマイナス金利解除の可能性を意識して11日の国内債券市場では、長期金利指標の新発10年債流通利回りが0.705%を付けて2014年1月以来、およそ9年8か月ぶりの高水準へ上昇した。日銀が7月28日の金融政策決定会合でYCC(イールドカーブコントロール)における長期金利変動許容上限を1%へ事実上引き上げてから10年債流通利回りは0.6%を超える上昇を見せたが、0.7%を超えたことで0.8%台へ上昇するのではないかとの声も出ている。

植田総裁インタビュー内容により、日銀は賃上げの動向も含めて2%の物価上昇目標達成の是非を年内にも判断し、早ければ来年1月にはマイナス金利解除を決定するのではないかとの見方が強まった。日銀の田村審議委員も8月30日に「来年1〜3月に物価目標の実現が見通せられればマイナス金利解除も選択肢の一つ」と述べているため、早ければ9月21/22日の次回日銀金融政策決定会合においてマイナス金利解除へ向けた姿勢が示される可能性が取り沙汰される。ただし、日銀は9月11日午後には9月14日に臨時の資金供給オペレーション(公開市場操作)を実施すると市場に通告しており、金利上昇を抑制する姿勢を見せており、金融政策の軌道修正が思惑されて長期金利の上昇が勢い付くのは避けたいようだ。
9月6日の神田財務官による円安けん制発言、9月8日の鈴木財務相による円安けん制発言、そして植田総裁インタビューでのマイナス金利解除へ向けた姿勢と続いたことで、ドル円の大上昇にもブレーキがかかっているところだが、日米金利差が大きく開いている状況にあっては年末にかけて円安基調が継続しても不思議ないところと思われる。

【米10年債利回りは小幅続伸、ダウは連騰】

9月11日の米長期債利回りは概ね上昇した。長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.02%上昇の4.29%となった。9月1日から6日まで休場を挟んで3連騰し、7日に一時4.31%を付けて9月1日につけた4.06%以降の高値を更新し、7日に反落して8日は一時4.21%まで続落したところから持ち直しており、11日も高値では一時4.31%を付けて8月22日のピークである4.37%へ徐々に迫っている。
30年債利回りは先週末比0.03%高の4.37%、利上げに敏感な2年債利回りは先週末と変わらずの4.99%だったが一時は5.01%を付けている。
一方でNYダウは追加利上げの可能性が後退しているとして先週末比87.13ドル高と上昇して9月7日から3連騰となり、ナスダック総合指数も156.36ポイント高で9月8日から2連騰した。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は9月8日午前に146.59円へ反落したところから9日早朝高値147.86円へ反騰したものの11日の急落により8日午前安値を割り込んだため、現状は9月9日早朝高値を起点とした下落期に入っていると思われる。乱調な展開のためまだ波乱が続くとみるが、11日夕安値145.89円を割り込む場合は15日午前にかけての下落を想定し、147円超えからは強気転換注意として9日早朝高値147.86円を試すとみるが、147.50円以上は反落警戒とする。

60分足の一目均衡表では9月11日朝からの急落で遅行スパンが悪化して先行スパンから転落した。11日夕安値の後は下げ渋りのため遅行スパンは好転しやすいものの、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、先行スパンを上抜き返す場合は上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は9月11日夕刻に20ポイント台へ低下してから戻したものの50ポイント以下にとどまっている。50ポイントを一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、40ポイント割れからは20ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。55ポイント超えからは反騰入りの可能性ありとみて60ポイント台への上昇を想定するが、60ポイント台前半では戻り売りも出やすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月11日NY市場安値146.19円を下値支持線、11日欧州市場の高値146.98円を上値抵抗線とする。
(2)146.19円以上での推移中は戻りを試す可能性ありとし、146.98円超えからは147円台序盤(147.10円から147.25円)を試すとみるが、147円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみてその後に146.70円を割り込むところからは下げ再開と考える。
(3)146.19円割れからは下げ再開とし、11日夕安値145.89円割れからは145円台前半(145.50円から145.20円)への下落を想定する。145.30円以下は反騰注意とするが、146.19円以下での推移なら13日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の予定】
9/12(火)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 10)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 4.2%、予想 4.3%)
18:00 (独) 9月 ZEW景況感 (8月 -12.3、予想 -15.0)
18:00 (欧) 9月 ZEW景況感 (8月 -5.5)
26:00 (米) 財務省10年物国債入札

9/13(水)
08:50 (日) 7-9月期 大企業[全産業]業況判断指数・BSI (4-6月 2.7)
08:50 (日) 7-9月期 大企業[製造業]業況判断指数・BSI (4-6月 -0.4)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 0.1%、予想 0.2%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 3.6%、予想 3.3%)

15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 0.5%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 1.8%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 0.7%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -154.55億ポンド、予想 -159.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支 (6月 -47.87億ポンド、予想 -45.00億ポンド)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.5%、予想 -0.9%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (7月 0.2%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (7月 3.2%、予想 3.6%)
21:30 (米) 8月 コアCPI 前月比 (7月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 コアCPI 前年同月比 (7月 4.7%、予想 4.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省30年物国債入札
27:00 (米) 8月 財政収支 (7月 -2208億ドル、予想 -2582億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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