ドル円の147円割れで5日深夜高値以降の安値を更新
〇トルコ円、ドル円の騰落に合わせ9/7午前高値5.53から9/8未明安値5.47へ下落
〇9/8午前、ドル円が147円を割り込んだために円高に押され、5.46へ安値を切り下げ
〇対ドル、9/8午前27.02へ安値切り下げ、8/24大幅利上げきっかけとした急騰幅は解消されつつある
〇エルドアン大統領、金融引き締めでのインフレ抑制を支持「利下げでインフレを抑制」からの転換示す
〇5.48を下回るうちは一段安余地ありとし、5.44割れからは5.42前後への下落を想定する
〇5.48手前は戻り売りにつかまりやすい。5.48を超える場合は5.50試しとするがその後の反落を警戒
【概況】
トルコリラ円の9月7日は概ね5.53円から5.47円の取引レンジ、8日早朝の終値は5.48円で前日終値の5.49円からは0.01円の円高リラ安だった。
8月24日のトルコ中銀による市場予想の3倍となる7.5%利上げをきっかけとしてトルコリラ円は8月24日午前安値5.29円から24日夜高値5.77円へ急騰したが、リラ安再開によりその後は戻り高値を切り下げつつ徐々に安値も切り下げる右肩下がりの展開を続けている。
9月1日夜の米雇用統計をきっかけとしたドル円の急落とその後の急伸により、トルコリラ円は5.41円へ下落してから4日早朝に一時5.59円へ上昇したが、4日夕刻へ下げてからの戻りも5日深夜高値5.56円にとどまり、7日はドル円が午前に147.87円へ高値を切り上げてから147円を試すところまで失速したため、午前高値5.53円から8日未明安値5.47円へ下落した。
9月8日午前にはドル円が147円を割り込んだために円高に押されて5.46円へ安値を切り下げている。
【対ドルでは8月24日急騰後の安値を更新】
ドル/トルコリラの9月7日は概ね27.01リラから26.57リラの取引レンジ、8日早朝の終値は26.78リラで前日終値の26.79リラからは0.01リラのドル安だった。
トルコ中銀による超大幅利上げをきっかけとして8月24日は利上げ前の27リラ近辺から25.02リラへ急伸したものの、リラ買いが一巡してからは高金利と高インフレおよび7月からの増税ラッシュによる景気悪化への懸念が残るとして揺れ返しのリラ売りへと風向きが変わり、徐々に安値を切り下げる展開が続いている。
9月7日は終値ベースでは若干のドル安リラ高だったものの取引時間中の安値で27.01リラを付けて8月24日以来の27リラ台となった。9月8日午前は27.02リラへ安値を切り下げており、8月24日の急騰幅は解消されつつある。
【エルドアン大統領、金融引き締めによるインフレ抑制を支持】
9月6日にトルコ政府は中期計画を発表した。インフレ率予想については2023年を65%として従来の24.9%から大幅に上方修正し、2024年を33%として従来の13.8%から大幅に上方修正した。経済成長率については2023年を4.4%として従来の5.0%から下方修正、2024年を4.0%として従来の5.5%から下方修正した。また経常赤字については2023年を425億ドル、2024年を347億ドルとした。
政府は高インフレの進行を実態に合わせて認め、金融引き締めによりインフレ抑制を行い、引き締めによる景気への影響により成長率も下がると素直に認めたということだろう。
エルドアン大統領は中期計画発表に際し、「金融引き締め政策によりインフレ率を再び1桁に引き下げ、経常収支を改善する」、「計画期間中の経済成長で決して妥協しない」と述べており、大統領再選前まで繰り返してきた「高金利は悪」、「利下げでインフレを抑制する」との姿勢からの転換を示した。
トルコの金融政策が異端的なものから正統派的なものに転換していることは歓迎されることであり、大統領再選後に新任されたエルカン・トルコ中銀総裁による大胆な大幅利上げや為替市場介入を止めて外貨準備高を増加させていることや、財政収支改善のためにシムシェキ財務相が増税に踏み切っていることは評価されるが、本音の部分では高金利政策を嫌うエルドアン大統領が現状の政策にいつまで寛大でいられるのかという点について市場は疑問視しているところもある。
【外貨準備高は増加】
9月7日夜に発表された週次の外貨準備高は、9月1日時点のグロスで787.7億ドルとなり8月25日時点の759.6億ドルから増加し、ネットでは161.5億ドルとなり8月25日時点の143.4億ドルから増加した。
エルドアン大統領再選前のカブジュオール中銀総裁時代に外貨準備を取り崩してリラ買いの市場介入を非公式に繰り返してきたことにより、6月初旬にはネットの外貨準備高がマイナス57億ドルとなり2002年以来のマイナス勘定となったが、エルカン総裁就任からの改革で増加に転じている。ただし、通貨スワップ市場には513.8億ドルの残があり、それを加味すればまだ外貨準備高はマイナス勘定という見方にもなる。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、9月1日夜の米雇用統計発表後に一段安してから急伸したために9月4日午前時点では1日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしていたが、9月6日午後に反落してから持ち直したために7日午前時点では6日午後安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとし、6日午後安値5.48円を割り込む場合は底割れによる新たな弱気サイクル入りとした。
9月8日午前に6日午後安値を割り込んだため、7日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして11日午後から13日午後にかけての間への下落を想定する。強気転換には7日午前高値に迫る上昇が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では9月8日午前への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンが戻り抵抗になりやすいと思われるので、先行スパンから転落しているうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とする。
60分足の相対力指数は9月7日夜に30ポイント台へ低下してからもどしたものの50ポイントに届かず再び失速しているので一段安警戒として20ポイント台への低下を想定する。強気転換には55ポイントを超えてからも50ポイント台を維持する上昇が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.44円を下値支持線、5.48円を上値抵抗線とする。
(2)5.48円を下回るうちは一段安余地ありとし、5.44円割れからは5.42円前後への下落を想定する。5.42円以下は反騰注意とするが、5.46円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)5.48円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。5.48円を超える場合は5.50円試しとするがその後の反落を警戒する。
【当面の主な予定】
9月11日
16:00 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 1.6%)
16:00 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 0.6%)
16:00 7月 失業率 (6月 9.6%)
16:00 7月 経常収支 (6月 6.74億ドル)
9月12日
16:00 7月 小売売上高 前月比 (6月 -0.1%)
16:00 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 28.5%)
注:ポイント要約は編集部
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