トルコリラ円見通し 対ドルでの最安値トライが続き円安の支え外れ始める(23/8/7)

トルコリラ円の8月4日は概ね5.29円から5.19円の取引レンジ、5日早朝の終値は5.25円で前日終値の5.28円からは0.03円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 対ドルでの最安値トライが続き円安の支え外れ始める(23/8/7)

対ドルでの最安値トライが続き円安の支え外れ始める

〇トルコ円、8/4夜米雇用統計後のドル円一段安を受け5.24へ下落、8/7午前序盤は概ね5.25近辺で推移
〇対ドル、8/4は概ね27.34から26.72の取引レンジ、取引時間中の最安値更新
〇トルコ財務相・中銀総裁ら、海外投資家向けに利上げ継続と金融政策正常化をアピール
〇市場は、8/24トルコ中銀金融政策委員会での追加利上げとより健全なメッセージを望む
〇目先はドル円を追いかける展開、円安再開ヘ向かえるのか注目
〇5.29超えからは5.32前後への上昇を想定するが、その後の反落注意
〇5.23以下は下向きとし、5.19割れからは5.15前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の8月4日は概ね5.29円から5.19円の取引レンジ、5日早朝の終値は5.25円で前日終値の5.28円からは0.03円の円高リラ安だった。週間では7月28日終値5.25円と変わらずだった。
8月4日午前から午後序盤にかけて、ドル/トルコリラで1ドル27リラ台の安値が繰り返し示現したことを反映して一時的だが繰り返し5.19円から5.20円の安値を付けたが、その後は落ち着いて4日夜の米雇用統計前には5.29円まで戻した。米雇用統計を通過してドル円が一段安したため、トルコリラ円は円高に押されて5.24円へ下落した。
週明けの8月7日午前序盤は一時的な安値で5.20円を付けたが概ね5.25円近辺で推移している。

【対ドルでは取引時間中の中心値は横ばい程度だが再々最安値を更新】

ドル/トルコリラの8月4日は概ね27.34リラから26.72リラの取引レンジ、5日早朝の終値は26.94リラで前日終値の26.97リラからは0.03リラのドル安リラ高だった。週間では7月28日終値26.90リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
7月末にかけては26.94リラを取引時間中の中心値として中心値および終値ベースは横ばいで推移し、8月に入ってからは中心値が26.96リラへ若干切り下がった状況で推移しているが、連続性には欠けて一時的な安値にとどまっているものの27リラ台の安値を繰り返し示現しており、取引時間中の最安値は7月19日の27.16リラを8月1日に27.19リラへ更新、2日に27.24リラ、4日に27.34リラと更新を続けている。ベンダーによっては8月3日に27.49リラ、4日には27.43リラ等の安値を繰り返し提示している。終値ベースでは7月21日の26.97リラが史上最安値となり、その後は安値更新を回避しているものの最安値近辺を維持している。

【海外投資家向けに利上げ継続と金融政策正常化をアピール】

トルコ財務相と中銀総裁らが参加して数十人規模の海外投資家を招いた会合が開かれたと報じられている。会合ではインフレの再加速を防ぐため、経済成長が鈍化しても利上げを継続する姿勢が示されたようだ。
会合ではメフメト・シムセク財務相とハフィゼ・ゲイ・エルカン中銀総裁が金融・財政政策と経済見通しについて述べたという。エルドアン政権が再選前まで継続してきた非伝統的な経済政策を市場に対する透明性の高いものに転換する姿勢が示され、シムセク財務相は「インフレ抑制が優先事項」と強調し、「政策は正常な設定に戻りつつある」と述べ、エルドアン大統領も金融引き締め政策を全面的に支持しているとした。また「緩やかな利上げが続き、信用の圧迫で経済成長がやや鈍化するものの、政策転換が突然ストップすることはない」と強調した。

この会合のほかに、大手銀行のJPモルガン主催の投資家会議が予定されており、トルコ大統領府投資局長ダリオオール氏がプレゼンを行い、ユルマズ副大統領、トルコ銀行協会会長のカカール氏、トルコ財務省債務局高官等の講演も予定されているという。財政収支の悪化とリラ安が進行する中で外資導入が必須ということを反映した動きと思われる。
トルコのインフレ率は7月のCPI前月比が6月の3.92%から9.49%へ、前年比が38.21%から47.83%へ上昇しており、トルコ中銀による17.5%への利上げでも実質的に大幅なマイナス金利状態が続いている。7月の貿易収支速報では貿易赤字が6月の51.6億ドルから123.9億ドルへ倍増しており、今後の経常収支や財政収支の悪化および中央政府債務の記録的な拡大等も含めてリラの先行き不安は根強い。トルコの新財務相と新中銀総裁による金融・経済政策の改革がどこまで進展できるのか、エルドアン大統領の忍耐次第という側面もある。
今週は6月失業率、6月鉱工業生産、6月経常収支の発表がある。

5月末からのリラ暴落は減速しているものの史上最安値更新の流れはまだ落ち着いていない。金融当局からのより健全なメッセージと、8月24日の次回トルコ中銀金融政策委員会でのしっかりした追加利上げを市場は望んでいる。

【目先はドル円を追いかける展開、円安再開ヘ向かえるのか注目】

ドル/トルコリラでのリラ安基調は続いているものの、5月後半からの暴落時と比較すれば変動率が落ち着いているため、トルコリラ円の目先はドル円を追いかける展開と思われる。
ドル円は7月28日の日銀金融政策におけるマイナス金利維持とYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)における長期金利変動許容上限の引き上げにより乱高下した時の安値138.06円から8月3日高値143.88円まで5.82円の上昇となったが、その後の反落で8月4日深夜には141.55円まで下落して3分の1押しラインの141.94円を割り込んだ。半値押しラインの140.97円前後までで落ち着いて143円台回復へ向かえば7月28日安値に続く押し目形成として7月14日以降の上昇基調継続と考えられるが、半値押しを割り込んで3分の2押しラインの140.00円を試すようだと、円安基調崩れていったん円高を試す流れへと進みかねないところだ。

トルコリラ円としてはドル円が上昇再開に入れば7月18日の史上最安値5.08円と7月28日安値5.12円をダブル底として戻りを試す流れを継続して5.50円へ向かう可能性が高まると思われるが、高値切り上げヘ進めずに円高の継続で押し込まれる場合は戻り一巡による下落期入りとして7月28日安値、7月18日安値を順次試して行く流れとなりかねない。しばらくはドル円の動向をしっかり見定めて追従してゆきたいところだ。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、8月3日午後に高値を更新してから8月2日夕安値を連続的に割り込んだため、4日午前時点では3日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして7日夕から9日夕にかけての間への下落を想定した。
一時的な下落時を除いても8月7日午前へ連続的な下落基調にあるためまだ安値試しを続けやすいところとみる。7日の上値抵抗線は5.29円までとするが、5.29円超えからは強気サイクル入りとして8日午後から10日午後にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8月7日午前への下落基調により遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落している。一時的な下落からの反発を除いて両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、連続的な上昇で先行スパンを上抜くところからは強気転換注意として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月4日の一時的な安値発生時に20ポイントまで低下してから戻したが、50ポイント台序盤で売られているため次に40ポイントを割り込むところからは下落継続として30ポイント以下を目指すとみる。次の55ポイント超えからは反騰入りの可能性ありとみて60ポイント前後への上昇を想定するが、60ポイント前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.19円を下値支持線、5.29円を上値抵抗線とする。
(2)5.27円から5.29円にかけての水準は戻り売り有利とする。5.29円超えからは5.32円前後への上昇を想定するが、その後の反落注意とする。
(3)5.23円以下は下向きとし、5.19円割れからは5.15前後への下落を想定する。5.15円以下は反発注意とするが、5.25円以下での推移なら8日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月7日
 23:30 7月 財務省現金残高増減 (6月 -2063.3億リラ)
8月10日
 16:00 6月 失業率 (5月 9.5%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 1.1%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -0.2%)
 20:00 週次 外貨準備高 8月4日時点 グロス (7月28日時点 723.5億ドル)
 20:00 週次 外貨準備高 8月4日時点 ネット (7月28日時点 108.9億ドル)
8月11日
 16:00 6月 経常収支 (5月 -79.33億ドル)
 16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 2.1%)
 16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 28.4%)
8月15日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -2196億リラ)

注:ポイント要約は編集部

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