ドル円 米雇用統計後に一段安、米国格下げ、国内長期金利上昇、株安による円高感強まる(週報8月第一週)

ドル円は8月4日の米雇用統計発表直後に142.90円へ上昇してから売りに転じて4日深夜には141.55円へ下落、その後は141円台後半での停滞推移に留まった。

ドル円 米雇用統計後に一段安、米国格下げ、国内長期金利上昇、株安による円高感強まる(週報8月第一週)

ドル円 雇用統計後に一段安、米国格下げ、国内長期金利上昇、株安による円高感強まる

〇ドル円、週末8/4雇用統計発表直後142.90に上昇、その後一時141.55へ下落
〇4日は米長期債利回りが低下に転じてドル円への支えが外れた印象
〇本邦新発10年債利回り、YCC修正で一時0.655%へ上昇、0.60%以上の水準を維持
〇米雇用統計、強弱まちまちの内容だったが低調な就業者増加でドル安に
〇142円以下での推移のうちは下向き、141.55割れからは7/28からの上昇の半値押し140.97試し
〇142.35超えで上昇再開の可能性、8/4高値142.90超で8/3高値143.88を目指す上昇

【概況】

ドル円は8月4日の米雇用統計発表直後に142.90円へ上昇してから売りに転じて4日深夜には141.55円へ下落、その後は安値更新を回避したものの141円台後半での停滞推移に留まった。
7月28日の日銀金融政策決定会合でマイナス金利等が維持されたもののYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)における長期金利変動許容上限が0.5%から1.0%へと事実上引き上げられたことを巡り139円台序盤から141.03円へ急伸、直後に138.06円まで急落して凡そ3円幅の乱高下となったが、YCC修正を消化して円安再開に入り、8月2日未明には143.54円へ上昇した。
8月2日早朝に大手格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債を格下げしたことと日経平均の大幅下落、およびYCC修正の影響で新発10年債利回りが0.60%超えへ上昇したことにより8月2日夕刻に142.21円まで下げたものの、ADP民間雇用が予想を大幅に超える増加となったことや米国格下げによる米国債売り・利回り上昇の影響もあって8月3日には143.88円まで切り返した。

しかし日経平均株価の大幅続落と新発10年債利回りの続伸、新規失業保険申請件数の4週ぶり悪化やISM製造業景況指数の低下による円高が優勢となり3日深夜には142.06円へ一段安、8月4日の日中を142.50円を挟んだ揉み合いで推移してから米雇用統計後のドル安で141.55円へ一段安した。米長期債利回りは8月3日まで連騰で上昇したことでドル円を支えていたが、4日は米長期債利回りが低下に転じてドル円への支えが外れた印象だ。
本邦の新発10年債利回りは7月28日の日銀金融政策決定会合前は0.50%以下の水準だったが、YCC修正を受けて8月3日は0.650%へ上昇、一時0.655%を付けて2014年1月以来9年7か月振りの高水準となり、4日は0.01%低下の0.640%でやや落ち着いたものの0.60%を上回った水準を維持した。

【米雇用統計、強弱まちまちの内容だったが低調な就業者増加でドル安に】

8月4日に発表された7月米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比18.7万人増となり、6月の18.5万人増をわずかに上回ったものの市場予想の20.0万人増を下回った。6月分は速報の20.9万人増から下方修正され、5月分も速報の30.6万人増から28.1万人増へと下方修正されたが、6月と7月の増加水準はこの2年半において最低となった。
一方、失業率は市場予想および6月の3.6%から3.5%へ改善した。インフレ指標の平均時給伸び率は前月比で0.4%で6月と変わらず市場予想の0.3%を上回り、前年同月比も4.4%で6月と変わらず、市場予想の4.2%を上回った。雇用の伸びが鈍化傾向に入っているようだが、平均賃金の上昇が続いていることで賃金インフレの継続感が再認識された印象だ。

米FRBは7月25-26日開催のFOMCで0.25%%利上げを決定した上で9月以降は指標次第で追加利上げも利上げ見送りもあり得るとしたが、7月雇用統計の内容を見て米金利先物市場の9月利上げ確率は8月3日の18%から13.5%へ低下しており、9月の利上げ見送り感が優勢となっている。
8月10日に7月米CPI(消費者物価指数)の発表があるが、上昇率が6月を上回る場合には追加利上げ感が強まりドル高反応を招き、6月を下回るようだと追加利上げ感がさらに後退してドル安反応を招きやすいと思われる。

【米10年債利回りは急落、ダウは3営業日続落】

8月4日の米長期債利回りは総じて大幅低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.14%低下の4.04%で週を終えた。8月3日には高値で4.199%を付けて4連騰とし、4日も一時は4.206%を付けて4月に付けた3.25%以降の最高水準を更新したが、米雇用統計通過後の急落により上昇一服感が出ている。
30年債利回りは0.10%低下の4.20%で週を終えた。8月3日には0.21%の大幅上昇で4.30%をつけて4連騰とし、4日も一時は4.35%まで昨年11月以来の最高水準を更新してから急落した。
利上げに敏感な2年債利回りは0.12%低下の4.77%で週を終えた。7月27日に4.95%まで上昇した後は高止まりの様相で4.90%を挟んだ持ち合いだったが、4日の急落で持ち合いから下放れている。
米国債格下げによる債券売り・利回り上昇の流れを雇用統計での就業者増加数が冴えなかったことでの追加利上げ観測後退がブレーキを掛けたという印象だ。

一方で8月4日のNYダウは前日比150.27ドル安と下落、8月2日の348.16ドル安、3日の66.63ドル安から3営業日続落となった。8月1日に35679.13ドルを付けて昨年10月以降の最高値としたが、米国格下げと高値警戒感から頭打ちとなり、4日はアップルの四半期決算不調による下落が足を引っ張った。ナスダック総合指数も50.48ポイント安で8月1日からは4営業日続落に終わった。

【7月14日以降の底上げ基調を維持できるか試される】

【7月14日以降の底上げ基調を維持できるか試される】

ドル円は6月30日高値145.06円から7月14日安値137.24円まで7.82円の下落幅となったところから切り返しに入っている。7月21日高値141.94円から7月28日安値138.06円まで3.88円の下げ幅となったものの7月14日安値から底上げして8月3日高値143.88円へ一段高してきた。ここまでは昨年8月2日安値から10月21日高値へと大上昇した時の序盤の動きに近い。
しかし、8月3日から4日まで2営業日連続の日足陰線で下げたことで7月28日にかけての下落時と同規模の反落調整に向かう可能性もあるところと注意する。材料的には米国債格下げの余波、本邦新発10年債利回りの上昇、株安によるリスク回避感等がドル円にとってはマイナス要因であり目先は安値試しを続けやすい。
7月28日安値から底上げした水準で押し目形成とすれば7月14日安値を起点とした上昇基調の継続として6月30日高値を再び目指す可能性があると思われる。そのためには日銀による長期金利抑制姿勢が強気に示されること、米長期債利回りが米CPI等を見て8月3日の反落を解消する上昇へ進むこと、米国格下げによる圧迫感を解消して米国株高が再開することが必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、140.97円を下値支持線、142.35円を上値抵抗線とする。
(2)142円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは下向きとし、8月4日深夜安値割れからは7月28日からの上昇幅に対する半値押しラインの140.97円を試すとみる。その前後から1円を超える反騰に入れば上昇再開とみるが、1円を超える反発へ向かえないうちはさらに安値試しを続けやすいとみて、7月28日からの上昇幅に対する3分の2押しラインとなる140.00円を試しに向かうとみる。米CPI発表から円高が勢い付く場合には139円台への下落もあり得ると注意する。
(3)142.35円超えからは8月3日午後高値からの調整を消化して上昇再開に向かう可能性ありとし、8月4日夜高値142.90円超えからは8月3日高値143.88円超えを目指す上昇を想定する。

【当面の主な予定】

8/7(月)
休場 カナダ
08:50 (日) 金融政策決定会合における主な意見(7月27-28日分)
08:50 (日) 7月 外貨準備高 (6月 1兆2472億ドル)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・速報値 (5月 109.2、予想 108.9)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・速報値 (5月 114.3、予想 115.1)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 0.7%、予想 -0.2%)
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
21:30 (米) ボウマンFRB理事、パネルディスカッション参加
25:00 (英) ピル英中銀理事、講演
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 72.4億ドル、予想 130.0億ドル)

8/8(火)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 706.2億ドル、予想 680.0億ドル)
未 定 (中) 7月 貿易収支・人民元建て (6月 4912.5億元)
08:30 (日) 6月 全世帯消費支出 前年同月比 (5月 -4.0%、予想 -3.8%)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調前 (5月 1兆8624億円、予想 1兆4525億円)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調済 (5月 1兆7027億円、予想 2兆2399億円)
08:50 (日) 6月 貿易収支・国際収支ベース (5月 -1兆1867億円、予想 1927億円)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 81.3)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 9)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状判断 (6月 53.6、予想 53.9)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行判断 (6月 52.8、予想 52.7)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 7月 CPI(消費者物価指数)・改定値 前年同月比 (速報 6.2%、予想 6.2%)

21:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -690億ドル、予想 -650億ドル)
21:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.1%)
26:00 (米) 財務省3年物四半期入札(420億ドル)

8/9(水)
休場、シンガポール、南ア
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 2.6%)
10:30 (中) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 0.0%、予想 -0.5%)
10:30 (中) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 -5.4%、予想 -4.0%)
23:30 (米) エネルギー省EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年物四半期入札(380億ドル)

8/10(木)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.2%)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前年同月比 (6月 4.1%、予想 3.5%)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 3.0%、予想 3.3%)
21:30 (米) 7月 コアCPI 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 4.8%、予想 4.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.7万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 170.0万人)
26:00 (米) 財務省30年物四半期入札(230億ドル)
27:00 (米) 7月 財政収支 (6月 -2280億ドル、予想 -950億ドル)
28:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウェビナー参加

8/11(金)
休場 日本
15:00 (英) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 0.1%、予想 0.0%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 月次GDP 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 -0.6%、予想 0.2&)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.3%、予想 -1.1%)
15:00 (英) 6月 貿易収支・物品 (5月 -187.23億ポンド、予想 -163.00億ポンド)
15:00 (英) 6月 貿易収支 (5月 -65.78億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (6月 0.1%、予想 0.7%)
21:30 (米) 7月 コアPPI 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 コアPPI 前年同月比 (6月 2.4%、予想 2.3%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (7月 71.6、予想 71.5)

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