『夏季休暇シーズン突入でボラティリティは低下の見込み』
〇今週のドル円、週明け140.69まで下落後、日銀の指値オペ実施に等に143.90に上昇
〇買い一巡後は、7月雇用統計はじめ米指標の不冴え等に週末141円台後半に反落
〇今週は格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債の格付けを引き下げるサプライズが発生
〇ユーロドル、週後半に一時1.0912まで下落後、米長期金利急低下に1.1010前後に持ち直す動き
〇ドル円、ダウンサイドに複数のサポート並び、買いシグナルも維持、地合い崩れず
〇ファンダメンタルズも米年内追加利上げ観測の残存や円キャリートレード活発化期待がサポート
〇来週発表の米7月消費者物価指数に注目、夏季休暇シーズン入りでボラティリティは幾分低下も
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー143.50、(EURUSD):1.0850−1.1150
今週のレビュー(7/31−8/4)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初141.00で寄り付いた後、(1)前週末金曜日に発表された日銀による金融緩和のサプライズ修正(これまで0.5%程度としてきた長期金利の変動幅上限を市場動向に応じて1.0%程度まで超えることを容認)や、(2)上記1を背景とした円金利の急上昇が重石となり、週明け早々に、週間安値140.69まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)日銀による連日の指値オペ実施(円金利の上昇を抑え込む姿勢を明確化→事実上の上限である1%に到達するまで予想以上に時間がかかるとの思惑浮上)や、(4)日経平均株価の急上昇(リスク選好の円売り圧力)、(5)米7月ADP雇用統計(結果+32.4万人、予想+19.0万人)の力強い結果、(6)上記5を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは昨年11/8以来、約9カ月ぶり高水準となる4.22%まで急上昇)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値143.90(7/7以来の高値圏)まで急伸しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(7)政府・当局による介入警戒感(松野官房長官は「為替動向や日本経済・物価への影響、日銀とも緊密に連携しつつしっかり注視している」と発言)や、(8)米新規失業保険申請件数(結果22.7万件、予想22.5万件)の冴えない結果、(9)米4ー6月期単位労働コスト速報値(結果+1.6%、予想+2.5%)の市場予想を下回る結果、(10)米7月ISM非製造業景況指数(結果52.7、予想53.1)の市場予想を下回る結果、(11)米7月非農業部門雇用者数(結果18.7万人、予想19.9万人)の市場予想を下回る結果、(12)シカゴ連銀グールズビー総裁による「いつまで金利を維持するかについて検討を始めるべき」とのハト派的な発言、(13)アトランタ連銀ボスティック総裁による「米雇用の伸びは秩序だった形で減速している。インフレ抑制に向けた一段の利上げは必要ない」とのハト派的な発言、(14)上記11、12、13を背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは4.22%から4.03%へ急低下)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間8/5午前6時00分現在)では、141.75前後まで反落する動きとなっております。
尚、今週は格付け会社フィッチ・レーティングスが米国債の格付けを最上位の「AAA」から「AA+」に1段階引き下げるというサプライズが発生しました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1023で寄り付いた後、(1)ユーロ圏4ー6月期GDP速報値(結果+0.6%、予想+0.5%、※前年比)の市場予想を上回る結果や、(2)ユーロ圏7月コアCPI速報値(結果+5.5%、予想+5.4%)の市場予想を上回る結果、(3)米7月シカゴ購買部協会景気指数(結果42.8、予想43.5)の市場予想を下回る結果、(4)欧州株の堅調推移が支援材料となり、週明け早々に、週間高値1.1047まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(5)米金利上昇に伴うドル買い圧力や、(6)ECBによる金融引き締め休止観測(7/27に開催されたECB理事会でラガルド総裁は「9月以降の決定はオープン」「短期的な景気見通しは悪化」「サービス業の勢いは減速し製造業も弱い外需によって抑制されている」とハト派的な発言に終始)、(7)米7月ADP雇用統計の力強い結果、(8)ユーロ圏7月総合PMI(結果48.6、予想48.9)および、ユーロ圏7月非製造業PMI(結果50.9、予想51.1)の市場予想を下回る結果が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0912(7/7以来の安値圏)まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(10)米経済指標の冴えない結果や、(11)米当局者によるハト派的な発言、(12)米長期金利の急低下が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間8/5午前6時00分現在)では、1.1010前後まで持ち直す動きとなっております。
来週の見通し(8/7−8/11)
<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した直近安値137.24をボトムに反発に転じると、週後半にかけて一時143.90まで急伸しました。週末にかけて、141円台後半へと反落したものの、ダウンサイドに複数のサポートポイント(一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線)が並んでいることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていない(週末にかけての下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目。下値余地は限定的であり、一巡後の反発リスクに要警戒)と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内追加利上げ観測の残存(非農業部門雇用者数は市場予想を下回ったものの、前回分が上方修正されている他、失業率や平均時給も強い内容であったため、週末の米金利急低下・米ドル売りの動きはファンダメンタルズに即した動きというよりも、週末前のポジション調整の側面が大きいと判断→週明け以降、再び米金利上昇・ドル買いの流れが再開する公算大)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(日銀は指値オペを通じて円金利の上昇を抑え込む姿勢を明確化→金融緩和の長期化観測再燃→対主要通貨での円売り継続)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレードの活発化期待など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は上記1を確認する目的で、8/10に予定されている米7月消費者物価指数に注目が集まります。パウエルFRB議長は先週開催されたFOMC後の記者会見で、今後の利上げ有無はデータ次第とのスタンスを強調したため、仮に米CPIが市場予想(前月比+0.3%、前年比+3.3%)を上回る結果となれば、年内利上げ観測再浮上→米長期金利上昇→米ドル買いの経路でドル円に強い上昇圧力を加えるものと推察されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇を来週のメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米CPI以外にも、8/11に予定されている米7月生産者物価指数や、米8月ミシガン大消費者信頼感指数などに注目が集まりますが、既に夏季休暇シーズンに突入しているため、市場のボラティリティは幾分低下すると考えられます。
来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー143.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/18に記録した約1年5カ月ぶり高値1.1277(昨年2/24以来の高値圏)をトップに反落に転じると、週後半にかけて、一時1.0912まで急落しました。週末にかけて反発に転じるも、アップサイドに複数のレジスタンスポイント(一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線)が並んでいること等を踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しいと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)ECBによる金融引き締め休止観測(先週開催されたECB理事会で追加利上げの可能性は示唆されず。ECBメンバーからもハト派的な発言が増加)や、(2)米FRBによる年内追加利上げ観測の残存、(3)上記1、2を背景とした欧米金利差拡大とそれに伴うユーロ売り・ドル買い圧力など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。ユーロロングはまだまだ切れていない市場参加者が多いと見られることから(ロスカット発生時のインパクトが大きいと見られることから)、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(7/6に記録した安値1.0833を下抜けできれば、ユーロロング勢の大規模な投げを巻き込む形で1.06台まで一気に急落する恐れあり)。尚、来週は夏季休暇シーズンで欧州経済イベントに乏しいことから、米国のインフレ指標(CPIやPPI)を睨みながらの展開となりそうです(ユーロに主体性はなく、米ドルに振らされる1週間を想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1150
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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