トルコリラ円見通し ドル円の急伸で戻すがドル高リラ安基調は変わらず (23/7/24)

トルコリラ円の7月21日は概ね5.27円から5.19円の取引レンジ、22日早朝の終値は5.26円で前日終値の5.23円からは0.03円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円の急伸で戻すがドル高リラ安基調は変わらず (23/7/24)

ドル円の急伸で戻すがドル高リラ安基調は変わらず

〇トルコ円、7/18に5.08まで史上最安値を切り下げるも、円安を受け7/21に5.27まで高値を切り上げる
〇7/20トルコ政策金利発表、20%台への利上げに時間をかけたことによりリラの先安感はぬぐえず
〇対ドル、7/21終値ベースで最安値更新して26.97に、しばらくは利上げ催促的なリラ売り攻勢継続か
〇エルドアン大統領の基本認識は変わらず、追加利上げペースけん制的な発言によるリラ売りに注意
〇今週は重要イベント続き、対ドルにおけるリラ安の勢いを見ながらドル円の騰落を追いかけやすい展開か
〇5.28超えからは5.30前後への上昇を想定
〇5.22割れからは下向きとし、5.19割れからは5.17前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の7月21日は概ね5.27円から5.19円の取引レンジ、22日早朝の終値は5.26円で前日終値の5.23円からは0.03円の円安リラ高だった。週間では7月14日終値の5.29円から0.03円の円高リラ安だった。
エルドアン大統領再選をきっかけとしてトルコリラが暴落商状に陥る中で2021年12月20日に付けたそれまでの史上最安値6.17円を割り込み、6月20日のトルコ中銀による8.5%から15.0%への利上げを不服として6月27日には5.47円まで最安値を切り下げた、その後は5.50円台中盤で持ち合いとなっていたが、リラの先安観が収まらない中でドル円が7月14日にかけて大幅下落したために7月14日には5.26円へ一段安となり、ドル円の下落が収まったもののドル高リラ安が再び勢い付いたことで7月18日には5.08円まで史上最安値を大幅に切り下げた。

対ドルでのリラ安がやや勢いを鈍らせたこととドル円の反騰継続によりトルコリラ円は7月18日安値から切り返しに入り、次回の日銀金融政策決定会合では現状維持との見方が報じられたことでドル円が142円に迫る急伸となったため、円安による押し上げで5.27円まで高値を切り上げて7月18日の急落分をほぼ解消した。
トルコリラ円はドル/トルコリラでのリラ安が暴落レベルで進行すればドル円の騰落にかかわらずに大幅下落に見舞われるが、ドル/トルコリラにおけるリラ安の加速度が鈍ればドル円の騰落を優先して追いかける展開となる。
7月25-26日に米FOMC(7月27日未明に政策金利発表と議長会見)、7月27日夜にECBによる利上げとラガルド総裁会見、7月27-28日に日銀金融政策決定会合(28日昼頃に政策発表、午後に植田総裁会見)と重要イベントが続くため、ドル円の急伸も急落もあり得るところであり、トルコリラ円の当面はドル/トルコリラにおけるリラ安の勢いを見ながらドル円の騰落を追いかけやすい展開と思われる。

【終値ベースで史上最安値更新、リラの先安感継続】

ドル/トルコリラの7月21日は概ね27.03リラから26.57リラの取引レンジ、22日早朝の終値は26.97リラで前日終値の26.73リラから0.24リラのドル高リラ安だった。
7月20日のトルコ中銀MPC(金融政策委員会)へ向けた大幅利上げ催促により7月19日に27.16リラへ史上最安値を更新したが、トルコ中銀が市場予想の20%への利上げへは踏み込めずに現行の15.0%から17.5%への利上げにとどめたものの追加利上げを強調したことにより新たな安値更新へは進まなかった。しかし市場の期待を裏切り20%台への利上げに時間をかけたことによりリラの先安感はぬぐえず、21日は取引時間中の史上最安値更新には至らなかったものの終値ベースでは7月18日終値26.92リラを超える26.97リラとして最安値を更新した。
週間では7月14日終値26.10リラからは0.87リラのドル高リラ安だった。

【追加利上げ催促のリラ安継続か】

米大手金融機関JPモルガンは、トルコ中銀による利上げ決定を受けてトルコの2023年通年のGDP成長率予想を4.0%として従来予想の3.2%から上方修正し、2023年末時点のインフレ予想については従来の50%から57%へ上方修正し、2024年5月には64%まで上昇するとした。同社は通貨リラ安、増税、賃上げによりインフレ圧力が強まっているとし、2023年末の政策金利見通しについては従来見通しの30%で据え置き、現状から年末までの5会合で2.5%ずつの追加利上げが続くと予想した。
JPモルガンによるGDPの上方修正についてはインフレ効果やエルドアン再選後の新内閣による経済政策の軌道修正を反映しているのだろうと思われるが、トルコの通貨インフレは依然として深刻であり、政策金利を30%まで引き上げてインフレが収まるには時間がかかり、利上げのピーク水準が予想を下回るならハイパーインフレによる経済混乱も招きかねない状況にあるとも読み取れる。今年二度の最低賃金等の引き上げや大統領再選以降の増税ラッシュもインフレを一段と推し進めやすい状況と思われる。

トルコ中銀は7月20日に2会合連続の利上げで政策金利を17.5%へ引き上げたが、6月22日に8.5%から15.0%へ6.5%の大幅利上げを決定したところからは利上げペースを落とした。市場としては追加利上げがどこまで継続できるのかを思惑しながらの展開となるが、エルドアン大統領は「高金利は悪」との基本認識を変えておらず、現状のリラ安とインフレに対する時限的な対処としてエルカン新総裁やシムシェキ新財務相の政策を容認しているに過ぎないとすれば、20%を超えてさらに利上げしてゆくことを容認してゆけるのかどうか疑問符のつくところだ。
ドル/トルコリラは7月19日に史上最安値を更新してから利上げ決定のあった7月20日は下落一服感を若干示したが、7月21日に終値での最安値を更新したところを見ると、まだしばらくは利上げ催促的なリラ売り攻勢を続けるのではないかと思われる。エルドアン大統領はスウェーデンのNATO加盟を承認して米国からのF16戦闘機供与を得るなど西側との関係を強めているものの、金融政策についての目立った言及は見られない。追加利上げペースに対するけん制的な発言を行うようだとリラ売りも勢い付きかねないと注意したい。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】 

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】 

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月18日夕刻へ急落してからの反騰により、19日午前時点では18日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして19日夜から24日午後にかけての間への上昇を想定した。
7月21日午前に小反落してから21日夕刻に一段高しているため、21日午前安値をボトムとして新たな強気サイクル入りしている可能性もあると注意し、ドル円の上昇が継続する場合には25日以降へ高値形成期が延びる可能性もあるとみる。
ただし、21日午前安値5.19円を割り込むところからは弱気サイクル入りとする。その場合は当初のボトム形成期を24日午後から25日夕にかけての間と想定するが、21日午前安値を起点として26日以降へ延びる可能性もあると注意する。

60分足の一目均衡表では7月20日深夜への上昇で遅行スパンは好転を維持し、先行スパンを上抜き返し、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は上昇余地ありとするが、遅行スパンが悪化するところからは下落期入りとみて安値試し優先として先行スパンの上下限を試す流れと考える。

60分足の相対力指数は7月19日深夜高値から21日夕高値への高値切り上げに際して指数のピークがほぼフラットで弱気逆行の気配となっている。50ポイント以上を維持するうちは一段高余地ありとするが、50ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後を試しに向かう流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.22円を下値支持線、5.28円を上値抵抗線とする。
(2)5.28円超えからは5.30円前後への上昇を想定する。5.30円以上は反落警戒とするが、5.22円以上での推移なら25日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.22円割れからは下向きとし、5.19円割れからは5.17円前後への下落を想定する。5.17円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、5.19円以下での推移なら25日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7月25日
 16:00 7月 製造業信頼感指数 (6月 108.2)
 16:00 7月 設備稼働率 (6月 76.8%)
7月27日
 20:00 トルコ中銀 金融政策委員会議事要旨
 20:00 トルコ中銀 四半期ベースの年末インフレ率予想調査
7月28日
 16:00 6月 貿易収支 (5月 -125.3億ドル)
 16:00 7月 経済信頼感指数 (6月 101.1)
7月31日
 16:00 4-6月 四半期観光収入 (1-3月 86.9億ドル)
 17:00 6月 海外観光客数 前年同月比 (5月 16.2%)
8月1日
 16:00 7月 イスタンブール製造業PMI (6月 51.5)

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