トルコリラ円見通し 暴落商状一服でややジリ高の推移続く(23/7/4)

トルコリラ円の7月3日は概ね5.59円から5.49円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.57円で先週末終値の5.54円からは0.03円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 暴落商状一服でややジリ高の推移続く(23/7/4)

トルコリラ円見通し 暴落商状一服でややジリ高の推移続く

〇トルコ円、7/1早朝から7/3午前序盤にかけて一部ベンダーでは5.72への上昇も見られるも、往って来い
〇一時的な騰落を除けば、概ね暴落商状一服による小動き
〇対ドル、7/3は概ね26.13から25.55の取引レンジ、新たな最安値更新は回避している
〇7/3リラ買い戻しがやや優勢となったが、最安値近辺にとどまった状況に変わりない印象
〇昨日発表の製造業PMIは横ばい、貿易速報では50億ドルを超える赤字
〇昨日公開のトルコ中銀MPC議事録では利上げ継続姿勢示す、外貨準備高は大幅増加
〇5.70手前は売られやすいとみるが、5.70超えからは5.75前後への上昇を想定する
〇5.50割れからは、5.47、5.45を順次試す下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の7月3日は概ね5.59円から5.49円の取引レンジ、4日早朝の終値は5.57円で先週末終値の5.54円からは0.03円の円安リラ高だった。
5月28日の大統領選挙におけるエルドアン大統領再選をきっかけとしたリラ暴落に続き、6月22日のトルコ中銀による利上げ幅を不足として暴落的な下落再開となり、6月27日午前安値で5.47円まで史上最安値を切り下げてきた。ベンダーによっては5.44円や5.38円を最安値としているところも見られたが、その後は当面するリラ売り材料を消化したことと、6月28日から30日までトルコ市場が祝日休場となったことで手掛かりにかけたため、暴落商状一服によりやや買い戻される展開で推移している。
7月1日早朝から3日午前序盤にかけて一部ベンダーでは5.72円への上昇も見られたもののほぼ「往って来い」となり、3日夕刻にも5.46円へ一時的な急落も早々に元の水準に戻っている。トルコリラのレート提示にはばらつきがみられるものの、一時的な騰落を除けば概ね暴落商状一服による小動きで、暴落再開へ向かうのか、いったん戻しに入るのか、推移を見定める局面と思われる。

【対ドルでの暴落商状は一服中】

ドル/トルコリラの7月3日は概ね26.13リラから25.55リラの取引レンジ、4日早朝の終値は25.91リラで先週末終値の26.05リラからは0.14リラのドル安リラ高だった。
エルドアン大統領再選をきっかけとした先行き不安によりリラは暴落商状に陥り、5月29日に終値で1ドル20リラ台へ乗せ、連日の暴落で6月13日には23.77リラへ史上最安値を大幅に更新した。6月22日のトルコ中銀による利上げ観測から暴落商状が一服していたが、6月22日にトルコ中銀が政策金利を従来の8.5%から15.0%へ大幅に引き上げたものの市場の期待していた21%への利上げには遠く及ばなかったことでトルコ中銀による利上げにも限界があるとの悲観が優勢となり暴落商状が再開し、6月22日に24.90リラへ急落してから連日の大幅下落で6月28日には26.19リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、終値ベースでは6月28日と30日に26.05リラの最安値を付けた。

トルコ市場の連休もあり、中銀利上げに関するリラ売りが一服したことでその後は新たな最安値更新を回避しており、7月3日はリラ買い戻しがやや優勢となって終値で26リラを下回ったが、7月4日午前は25.9リラから25.69リラのレンジで推移しており、最安値近辺にとどまった状況に変わりはない印象だ。

【トルコの製造業PMIは横ばい、貿易速報では50億ドルを超える赤字に】

7月3日に発表されたトルコの6月イスタンブール製造業PMIは51.5となり前月と変わらなかった。リラ暴落の影響が懸念されたものの製造業の心理は比較的冷静だったようだ。内訳では生産が4か月連続で上昇して2021年7月以来の高水準となっており、2月6日のトルコ・シリア大地震からの復興需要が下支えしている模様だ。しかしリラ安による新規受注の伸びが抑制され、生産コストの上昇が大幅に加速しておりインフレによる購買力低下による先行きの不安も露呈しているようだ。
トルコ貿易省が発表した6月の通関ベース貿易統計速報では、輸出が209億ドルで5月の217億ドルから減少、輸入が263億ドルで5がつの343億ドルから減少、貿易赤字は54億ドルで5月の126.6億ドルから減少した。リラ暴落による購買力低下が輸入減少を招いたことで貿易赤字が減少したといえるが、それでも50億ドルを超える赤字であり、経常収支の改善は程遠い印象だ。

【トルコ中銀MPC議事録 利上げ継続姿勢を示す、外貨準備高が大幅増加】

7月3日に公表されたトルコ中銀MPC(金融政策員会)議事要旨では「物価情勢に著しい改善が見えるまで中銀は金融引き締めを続ける」とし、6月22日の利上げは「2年続いた金融緩和からの政策転換はインフレ抑制に向けた第一歩」とした。しばらくは追加利上げが見込まれるが、かつてリラ暴落阻止のために19%まで政策金利を引き上げた中銀総裁が解任されてその後に利下げへ向かった経緯もあるため、新総裁がどこまで利上げを継続できるのか、エルドアン大統領の忍耐が続くのかは疑問符が付く。
トルコ中銀は外貨準備高を取り崩して市場介入を行ってきたことをやめると宣言していたが、7月3日に発表された週次の外貨準備高が前週から大幅に増加している。
6月23日時点でのグロスでは662.5億ドルとなり6月16日時点の607.8億ドルから急増し、ネット(純外貨準備高)は6月16日時点の4.7億ドルから91.9億ドルへ急増した。ネットは一時57億ドルのマイナス勘定まで悪化して統計のある2002年以降の最低を更新したが、新総裁就任後は市場介入を行っておらず、介入のためのポジション整理により急増したと思われる。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、7月3日夕刻の一時的下落から戻しているところのため5日午前から7日午前にかけての間への上昇余地ありとみるが、5.50円割れからは弱気サイクル入りと仮定して6日午後から10日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では暴落一服によるジリ高の推移で遅行スパンが好転、先行スパンからの一時的な転落も解消して上回る状況を概ね維持しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンからの転落と遅行スパンの悪化が揃うところからは下落期に入るとみて安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数はジリ高の推移が続いているために50ポイントを割り込むところは買われてしっかりしている。65ポイント以上では売られやすいと注意するが、50ポイントを上回るか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続とし、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント割れへ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.50円を下値支持線、5.70円を上値抵抗線とする。
(2)5.70円手前は売られやすいとみるが、5.70円超えからは5.75円前後への上昇を想定する。5.75円以上は反落注意とするが、5.52円以上での推移なら5日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.52円割れを弱気転換注意とし、5.50円割れからは5.47円、5.45円を順次試す下落を想定する。5.45円以下は反騰注意とするが、5.50円以下での推移なら5日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7月5日
 16:00 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.04%、予想 4.84%)
 16:00 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 39.59%、予想 39.47%)
 16:00 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 4.2%)
 16:00 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 46.6%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.65%)
 16:00 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 40.76%)
7月06日
 NATO加盟巡るスウェーデンとトルコのハイレベル会合(ブリュッセル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/30時点 グロス (6/23時点 662.5億ドル) 
 20:30 週次 外貨準備高 6/30時点 ネット (6/23時点 91.9億ドル) 
7月07日
 23:00 6月 財務省現金残 (5月 1698.2億リラ)
7月10日
 16:00 5月 失業率 (4月 10.2%)
7月11日
 16:00 5月 経常収支 (4月 -54.04億ドル)



注:ポイント要約は編集部

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