ドル円見通し 米ISM製造業景況指数の悪化で一時144円を割るも持ち直す
〇ドル円、7/3午前144.20を付けるも新たな安値更新回避、夜にかけて買い戻し優勢で144.91まで戻す
〇6月ISM製造業景況指数の悪化から深夜143.98まで反落するも切り返し、7/4早朝144.75まで戻す
〇米ISM製造業景況指数、8か月連続の50割れとなりリーマンショック以来の低水準継続
〇米長期債利回りは総じて上昇、NYダウは3連騰、ナスダックも2連騰
〇昨夜安値143.98割れからは143円台中盤を試し、7/5午前にかけても安値試しを続けやすいとみる
〇144.91超えからは、145円台序盤を試す上昇を想定する
【概況】
ドル円は先週末の6月30日午前高値で145.06円を付けて昨年11月以来の145円台到達となったが、昨年9月22日に145円台で市場介入されたことや6月26日以降の財務相等による円安けん制発言が繰り返されてきたこともあり高値警戒感から30日深夜に144.20円へ下落した。7月3日の午前も144.20円を付けたものの新たな安値更新を回避し、夜にかけては買い戻し優勢で144.91円まで戻していた。
23時発表の米6月ISM製造業景況指数が予想を下回る悪化となり、発表直後のドル安反応により143.98円まで反落したが、7月4日の米独立記念日休場を控えてドル売りに対する慎重姿勢がみられ、米長期債利回りの反応も鈍く一時低下してから上昇したために早々にドル買い円売りへと切り返し、4日早朝には144.75円まで戻した。
米国休場明けの7月5日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月12-14日開催分)の公表、6日に6月ISMサービス業景況指数とADP全米雇用報告、7日には米6月雇用統計と続くため、ドル円としてはそれらを見定めながら145円台後半から146円台へと進むのか、いったん仕切り直しの下落期に入るのか明暗も分かれてくるところだ。
7月4日午前に神田財務官は「同盟国米を含め各国当局とは為替、金融に限らず意思疎通を図っている」と述べて円安けん制を行っている。7月4日の日中から夜にかけては144円割れを買われながら145円超えから続伸へ向かうには慎重さが求められる状況と思われる。
【米ISM製造業景況指数、8か月連続の50割れはリーマンショック以来】
米サプライ管理協会(ISM)による6月米製造業景況指数は46.0となり5月の46.9から悪化して市場予想の47.0を下回った。2020年5月以来の低水準であり、好不況の分岐点である50を割り込むのは8か月連続となり、2008年リーマンショック時以来の低水準継続となった。
内訳では新規受注が5月の42.6から45.6へ改善したが、生産は5月の51.1から46.7へ悪化、雇用も5月の51.4から48.1へ悪化した。また製造業価格指数は5月の44.2から41.8へ低下した。
発表直後にはドル安反応がみられたが米雇用統計へ向けて重要指標発表も相次ぐため反応は長続きしなかった。
この日は主要国のPMI発表も相次いだが中国の6月財新製造業PMIは5月の50.9から50.5へ低下、ドイツ6月製造業PMI改定値は速報の41.0から40.6へ下方修正、ユーロ圏製造業PMI改定値は速報の43.6から43.4へ下方修正され、S&Pグローバルによる米6月製造業PMIは速報値と変わらずの46.3だったが5月の48.4から悪化しており、全般に景気減速感をにじませるものだった。
【米長期債利回りは上昇】
7月3日の米長期債利回りは総じて上昇した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.02%上昇の3.86%で、ISM統計発表後に一時3.78%まで低下したものの持ち直した。30年債利回りは前日比0.01%上昇の3.87%、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%上昇の4.94%となり高値では4.96%を付けて3月24日の3.56%以降の最高値とした。景気減速感を持ちながらもFRBの年内あと2回の利上げは変わらないとの見方が優勢と思われる。
一方でNYダウは前日比10.87ドル高と小幅上昇で6月29日から3連騰、ナスダック総合指数は28.85ポイント高で30日から2連騰となった。米国休場前でやや慎重な動きにとどまったようだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は7月3日の上昇では6月30日高値145.06円に届かず、3日深夜の下落で143.98円を付けて30日深夜安値144.20円を割り込んだ。6月30日まで続いてきた底上げをして高値を切り上げてきた流れが続かずに戻り高値を切り下げて安値も切り下げている。
7月3日深夜安値割れを回避するうちは3日夜高値144.91円超えから上昇期入りとして5日の日中から7日にかけての間への上昇を想定するが、3日深夜安値を割り込む場合は3日夜高値を起点とした下落期入りとして5日夜から7日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では145円台で売られて144円割れを買い戻されて持ち合いの様相のため、遅行スパンおよび先行スパンは実線と交錯しており方向感に欠ける。7月3日夜高値超えからは上昇期入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とし、3日深夜安値割れからは下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んでもみ合いの様相。60ポイント前後で売られて40ポイント台序盤では買われやすいところとみる。65ポイント超えからは勢いある上昇期に入り、40ポイント割れからは下げが厳しくなると思われるが、4日の日中から明朝にかけては動意の薄い展開と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、143.98円を下値支持線、144.91円を上値抵抗線とする。
(2)144.91円を超えないうちは一段安余地ありとするが、144円前後では買われやすいとみる。ただし昨夜安値143.98円割れからは143円台中盤(143.70円から143.30円)を試し、5日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)144.91円超えからは145円台序盤を試す上昇を想定する。145円前後はまだ売られやすいところと注意するが、勢い付く場合は145.20円台から145.50円手前にかけての水準を試すとみる。144.91円を超える場合は5日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/4(火)
休場 米国
上海協力機構首脳会議
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 4.10%、予想 4.10% 〜 4.35%)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 184億ユーロ、予想 173億ユーロ)
7/5(水)
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 57.1、予想 56.2)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 54.1、予想 54.1)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 52.4、予想 52.4)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 53.7、予想 53.7)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (4月 -3.2%、予想 -1.7%)
18:00 (欧) 5月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (4月 1.0%、予想 -1.4%)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 0.4%、予想 0.8%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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