トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの史上最安値更新続く(23/6/13)

トルコリラ円の6月12日は概ね5.95円から5.83円の取引レンジ、13日早朝の終値は5.91円で先週末終値5.95円から0.04円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの史上最安値更新続く(23/6/13)

トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの史上最安値更新続く

〇トルコリラ円、6/12は概ね5.95から5.83の取引レンジ、取引時間中及び終値ベースで史上最安値を更新
〇トルコリラ円にとって、ドル円の騰落以上に対ドルでの暴落商状が落ち着くかどうかが最重要
〇対ドル、6/12も23.73へ史上最安値を更新、1ドル24リラ台も目前となる
〇昨日発表のトルコ経常収支・貿易収支、いずれも赤字が拡大、ファンダメンタルズの弱さ目立つ
〇新中銀総裁や新内閣の顔ぶれなどから、大胆な利上げに踏み切るのではないかとの観測も浮上
〇5.92から5.95にかけての水準は、戻り売りにつかまりやすいとみる
〇5.83割れからは、5.80前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月12日は概ね5.95円から5.83円の取引レンジ、13日早朝の終値は5.91円で先週末終値5.95円から0.04円の円高リラ安だった。
ドル円は6月に入ってから139円台を中心として139円前後から138円台後半で買われつつ140円台で売られる持ち合いで推移しており方向感に欠けるが、トルコリラ円はトルコ大統領選挙によるエルドアン大統領の続投決定を挟んでドル/トルコリラでのリラ暴落商状により2021年12月20日安値6.17円を割り込んで史上最安値更新に入っており、先週末の10日に終値ベースで6円を割り込み、12日も取引時間中及び終値ベースで史上最安値を更新した。

今夜は米CPI、明日夜には米PPI、15日未明にはFOMC政策金利発表とパウエルFRB議長会見があり、インフレの高止まりとFRBのタカ派姿勢が顕著になればドル高円安が勢い付く可能性もあるが、インフレが予想以上に鈍化してFOMCメンバーによる予想金利ピーク水準が現状維持ないし切り下がる場合には円高へ傾斜しやすくなると思われる。市場が織り込んでいる6月FOMCでの利上げ見送りと7月ないし9月に0.25%の追加利上げがあったとしても利上げサイクルの終了へ向かうとの見方が崩れなければ市場の反応も限定的なものに留まるかもしれないが、まずは今夜のCPI反応がどうなるか見定めたいところだ。ドル円の騰落以上にトルコリラ円にとってはリラ暴落が落ち着くのかどうかが最重要だ。

【対ドルでは最安値更新が続き1ドル24リラ台目前に】

ドル/トルコリラの6月12日は概ね23.73リラから23.35リラの取引レンジ、13日早朝の終値は23.62リラで先週末終値の23.37リラからは025リラのドル高リラ安だった。
エルドアン大統領の再選によるリラの先安感から連日の史上最安値更新となり、6月7日に8%近い暴落商状で23.31リラへ取引時間中の史上最安値を更新し、8日に23.41リラへ、9日に23.54リラへと最安値更新が続いたが、週明けの12日も23.73リラへ安値を更新した。ベンダーによってレートの開きがあるが、13日早朝には23.92リラの安値提示も見られ、1ドル24リラ台も目前となっている。

【4月のトルコ経常収支は悪化】

トルコ統計局が6月12日に発表した4月の失業率は10.2%で3月の10.1%から悪化した。今年1月に9.8%へ改善した後は徐々に悪化傾向を示している。
トルコ中銀が発表した4月のトルコ経常収支は54.04億ドルの赤字となり、赤字額は3月の49.03億ドルから拡大した。トルコ経常収支は慢性的な赤字構造にあるが、貿易収支の悪化により今年1月に103.48億ドルの経常赤字となり過去最大を更新したが、5月の貿易収支速報も貿易赤字が126.6億ドルとなり4月の88.5億ドルから拡大して今年1月の144億ドルに迫る悪化となっているため、5月の経常収支も赤字の拡大が予想される。リラ安と世界的なインフレの高止まりによる輸入額の急増が貿易赤字拡大を招き、経常収支の赤字を拡大させる傾向にある。

トルコリラ円見通し 対円、対ドルでの史上最安値更新続く

高インフレの継続、貿易赤字、経常赤字、財政赤字、中央政府債務拡大、純外貨準備高のマイナス勘定への転落、鉱工業生産やGDP等の低迷など、ファンダメンタルズの弱さが目立っている。

【トルコ政策転換への期待と催促】

エルドアン大統領は再選後の人事でトルコ中銀総裁に米ファースト・リパブリック・バンクで共同最高経営責任者(CEO)を務めたハフィゼ・ガイ・エルカン氏を任命した。同氏の経営手腕は高評価されているようだが公職経験はなく国家規模の金融政策の手腕は未知数だ。しかし新内閣の顔ぶれなどからエルドアン大統領が従来までの非伝統的な政策姿勢を転換し、トルコ中銀が高インフレとリラ暴落を抑制するために大胆な利上げに踏み切るのではないかとの観測も浮上している。
金融大手のJPモルガンはエルカン氏の総裁就任を踏まえて6月のトルコ中銀MPC(金融政策員会)で政策金利を現行の8.5%から25%へ引き上げるとの予想を示した。またゴールドマンサックスは政策金利を40%まで引き上げる必要があるとの見方を示した。
現在進行中のリラ暴落に歯止めをかけるには大幅な利上げが不可避であり、市中金利と政策金利の乖離を踏まえれば利上げも不思議ではなく、為替市場におけるリラ売りも利上げを催促するものだが、大統領選挙期間中にエルドアン大統領は再選後の利下げ方針を示していたこともあり、簡単には利上げへ踏み切れないのではないかとの見方も根強い。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月9日夜に一時的に6円を超えてから失速したため、12日午前時点では既に新たな弱気サイクル入りしているとみて14日午前から16日午前にかけての間への下落を想定した。
6月13日早朝に安値を更新しているので弱気サイクルの継続中とし、強気転換には5.95円以上へ反騰する必要があるとみる。

60分足の一目均衡表では遅行スパンが6月12日午前序盤の下落で悪化し、6月9日夜の反発時は先行スパンの下限に上値を抑えられて失速した。6月13日早朝へ安値を切り下げているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返す場合はいったん戻りを試す流れとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、その後に先行スパンから転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は6月7日から底上げ基調にあるものの50ポイント到達で売られて上値が重い状況のため、40ポイント以下での推移中は下向きとし、安値更新からは20ポイント前後への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.83円を下値支持線、5.95円を上値抵抗線とする。
(2)5.92円から5.95円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。5.95円超えからは6.00円手前を試すとみるがその後の反落警戒とする。
(3)5.83円割れからは5.80円前後への下落を想定する。5.80円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は5.78円から5.75円にかけての水準を試す可能性もあるのとみる。また5.90円以下での推移な14日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月13日
 16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 7.3%)
 16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 28.6%)
6月15日
 17:00 5月 財政収支 (4月 -1324.7億リラ)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 グロス (6/2時点 582.4億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 6/9時点 ネット (6/2時点 -57.0億ドル)
6月19日
 16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 91.1)
  
6月22日 トルコ中銀金融政策決定会合


注:ポイント要約は編集部

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